僕を造り上げている『細胞』の半分があの人の遺伝子だなんて信じられない。だってあの人は僕を愛さないしこれからもずっと僕を愛せないだろうから。僕がこの世界に生まれてきたことをあの人は死ぬほど憎んでいる。僕本人にもその感情がひしひしと伝わるほどに。そしてそれを隠そうともしないのだからそれこそがあの人の本心なんだろう。それなのに僕を殺そうとしないのは僕があの人の愛していた女の忘れ形見だから。僕をその腕に抱くこともなく苦しんで苦しんで痛みだけを感じながら果てていった女の子供だから。きっと彼女が生きていて「あの子を殺して」と言ったならばきっとためらうことなく僕を殺すことだろう。それくらいに、きっとあの人はその女に心酔していた。
それくらい人を愛せるのはすごいことだ。だけど僕はただの『玩具』じゃない。
こんなに苦しい思いをするくらいならいっそのこと殺されたほうがどんなにか楽だろう。
あの人の狂気に気づかないフリをするのはもう疲れたんだ。
何かあればいい。あの人の望みをかなえられる「一言」が見つかれば。
そうすれば僕はようやく楽になれるんだ…………。
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