Last UpDate (11/3/18)
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「面白い。我がデスるか、ウヌがデスるか……どちらの魂がよりデスるに相応しいか、見極めるとしよう」
木々の隙間からさす月明かりが、小さな彼女の微笑みを照らした。
夜の密林の中をここまで逃れてきた迷彩服の男は、目の前の、この場には不相応な少女を睨みつけ、手に持った鉄の塊を向ける。
構えたことで灯りに晒されたそれは拳銃であり、向けた銃口は確実に的を捕らえていることがわかる。
引き金を引けば容易く少女の着ているコートと同じ色の花が咲くであろう。
しかし、少女は動じない。
薄ら笑いを浮かべ、その両手の二丁拳銃の撃鉄を緩慢な動作で上げる。
パシュッパシュッ
短い間隔で繰り出される、空気を斬り裂く小さな音。
消音装置(サイレンサー)の付いた拳銃によるものだ。
撃ったのは迷彩服の男、しかし少女は背丈ほどもある黒髪を少し揺らしただけにしか見えないほど、小さな動きでそれを避ける。
「残念。我の勝ちよな」
舞うような、流れるような動きで二丁の銃口を男の腹部に突きつけた。
ガァァァァァァンン
周囲数キロは響くほどの銃声と共に爆発が起き、その爆風で吹き飛ばされ、木に叩きつけられる男。
それでも息があったのは、迷彩服の下に着込んだ防護服の御陰と言えよう。
「生き残ったか。しかし、多くの者の命を奪ってきたヌシの魂は、ここで我に狩りとられるが定めよ」
二丁の銃を腰のベルトにさし、虚空へと手をかざすと現れたのは禍々しいオーラを放つ、巨大な死神の鎌。
「なに、怯えることはない」
ゆっくりと、身動きが出来なくなった男へと歩を進める。 眠たげな目のまま、笑みを浮かべて近付く少女に対し、男は恐怖に顔をしかめ、声にならない悲鳴を上げた。
少女は紅いオーラを纏い、死神の鎌を振り上げ、下ろした鎌は、音もなく男の魂を狩りとった。
「デスとデスの行く末は末広がりよ ……めでたきな」
男に背を向け、暗闇の密林の中を躊躇することなく帰途についた。
彼女は試練により、人の世界で生きる死神、シュプレッセ・デスクリムゾン・シュラーダー。
人としての名は越前世界(えちぜんせかい)。
裏世界では「コンバット越前」と呼ばれる凄腕の傭兵である。 自らに科せられた試練を達成するために、世界を渡り行く……。
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