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「うおお……」
鮮やかな緑の振り袖姿のまま地面に膝を突くスネークことティアマット。
羽根突きを始める前に道行く青年から渡された、兎の耳のヘッドバンドも彼女の心を表す様に地に向いている。
顔はすでに墨で落書きされまくっていた。
勝負は5分とかからなかった。
「うりゃー」とか「そりゃー」、「うおおぉぉぉー」と声ばかりは威勢が良かったが、一打一打、打っては返され、返そうとしては空振りの連続。
一声一声上げるたびに追加されて行く落書き。
それでもへこたれず、ベアに自家製神まんじゅうを食べさせようと頑張ったのだが……。
「よゆー」
息一つ切らさずに、振り袖の着付けも乱す事も無く、100勝目を上げるベア。
彼女のヘッドバンドの耳は、ティアマットにとは対照的に元気な兎耳として空を向いている。
脛の復讐を果たしたからか、それとも動いているうちに堂でも良くなったのか、無表情ながらもどこか嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。
さすがに100連敗が効いたのか、いつまでも「うおお……」突っ伏すティアマットを振り返り、ふぅ、と軽くため息をつき、
「ほら、いつまでもそうしてないで、行くよ」
手をさしのべた。
「うう……また負けてしまったのじゃぁ」
涙しながらも、ベアの手を取り立ち上がるティアマット。
「じゃが、今年こそお主にまんじゅうを食べて貰うのじゃ!」
顔を上げ、懲りずに宣言する。
「ふう。……がんばれ」
目もあわせず、げんなりした口調でベア。
力強く頷き、
「うむ、今年も宜しく頼むのじゃ!」
ぎゅっと、握る手に力を込めたティアマットの目には、すでに涙はなく、満面の笑顔だった。
ベアは無言のまま、袖からハンカチを出し、ティアマットの顔を「ぐわしぐわし」と力任せに拭く。
墨は取れたものの、真っ赤になった顔で目をガッテンにして「うぉぉ」とうめくティアマットに背を向けた彼女は、
「……よろしく」
とティアマットには聞こえないようにぽつりと呟いた。
仲が悪い様で、仲が良いような(ベアは完全否定)2人は、今年もきっと、ドタバタしながら歩んで行く。
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