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2011/1「これからも宜しく」

「これからも宜しく」

 

<<ここまでのお話

 

「うおお……」

 

鮮やかな緑の振り袖姿のまま地面に膝を突くスネークことティアマット。

羽根突きを始める前に道行く青年から渡された、兎の耳のヘッドバンドも彼女の心を表す様に地に向いている。

顔はすでに墨で落書きされまくっていた。

 

勝負は5分とかからなかった。

 

「うりゃー」とか「そりゃー」、「うおおぉぉぉー」と声ばかりは威勢が良かったが、一打一打、打っては返され、返そうとしては空振りの連続。

一声一声上げるたびに追加されて行く落書き。

それでもへこたれず、ベアに自家製神まんじゅうを食べさせようと頑張ったのだが……。

 

「よゆー」

 

息一つ切らさずに、振り袖の着付けも乱す事も無く、100勝目を上げるベア。

彼女のヘッドバンドの耳は、ティアマットにとは対照的に元気な兎耳として空を向いている。

脛の復讐を果たしたからか、それとも動いているうちに堂でも良くなったのか、無表情ながらもどこか嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。

 

さすがに100連敗が効いたのか、いつまでも「うおお……」突っ伏すティアマットを振り返り、ふぅ、と軽くため息をつき、

 

「ほら、いつまでもそうしてないで、行くよ」

 

手をさしのべた。

 

「うう……また負けてしまったのじゃぁ」

 

涙しながらも、ベアの手を取り立ち上がるティアマット。

 

「じゃが、今年こそお主にまんじゅうを食べて貰うのじゃ!」

 

顔を上げ、懲りずに宣言する。

 

「ふう。……がんばれ」

 

目もあわせず、げんなりした口調でベア。

力強く頷き、

 

「うむ、今年も宜しく頼むのじゃ!」

 

ぎゅっと、握る手に力を込めたティアマットの目には、すでに涙はなく、満面の笑顔だった。

ベアは無言のまま、袖からハンカチを出し、ティアマットの顔を「ぐわしぐわし」と力任せに拭く。

墨は取れたものの、真っ赤になった顔で目をガッテンにして「うぉぉ」とうめくティアマットに背を向けた彼女は、

 

「……よろしく」

 

とティアマットには聞こえないようにぽつりと呟いた。

仲が悪い様で、仲が良いような(ベアは完全否定)2人は、今年もきっと、ドタバタしながら歩んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者屋キャラ辞典:スネーク(ティアマット)ベア
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