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2010/02「届け、この想い!」

「届け、この想い!」

朝起きたらまず鞄のチョコをチェック!

 

――良し。徹夜になりかけて造ったチョコは、ちゃんとリボンも結んで良い感じにラッピング。

 

 

学校に着いたら手紙を彼の下駄箱へ。内容はシンプル。

「放課後、○×に来て下さい」

ここで成就した恋は……っていう、人気のスポット。

でも名前は書かない。いつも通りに一日すごすの。大切な想いは直接会って伝えたいから。

 

――焦っちゃダメ。焦っちゃダメだよ。

隣とか上の下駄箱に間違えるなんて、あとで笑いものにされちゃうわ。

なんて言ったって、彼の下駄箱の上下左右はあの女達(ヒトタチ)のなんだから。

風邪をひいてたけど、欠席なんて有り得ない。彼は昔からずっと皆勤賞だもの。

 

 

一日バレないように過ごす。放課後までガマン!

 

――ホントは目が会う度に、すれ違う度にドッキドキ。心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかなってくらい。

でもつい背中を追っちゃう。気づいてないの? 今日は特別な日だよ? って。

意識してそわそわしてる男子はたくさん居るのに!

 

 

放課後になったら心を決めて。いざ、決戦の地へ!

 

―― 一日、長く感じたけど、いざ時間が近付くとキンチョーしてきた!

ああっ、恋の神様勇気を下さい!

 

 

いつもは沢山、人が居る学舎も、今日は、この瞬間は誰もいないと思っちゃうくらい静か。

ううん。

キンチョーしすぎて、ここの音しか聞こえない。

入ってきた時、顔を合わせたらいっぱいいっぱいなっちゃうから、私は扉に背を向けて。

そして、扉を開けて、彼が入ってきた。

 

今、ここは2人だけの空間。

彼の足音。彼の吐息。みょーに意識しちゃう。

 

「シルクだったのか、この手紙。どうしたんだ? こんな所に呼び出して……」

 

いつもより低い、かすれた声で。

ああっ。ホントにイベントに疎い! 今日は女の子にとって大切な日なんだから!

ちょっとくじけそうになる。

それでも、勇気を振り絞って、私は目を瞑って、彼へと振り返り全身全霊を込めて告白した!

 

「好きですっお兄ちゃん!! お兄ちゃんのコイビトにしてください!」

 

ずっとずっと、ちっちゃい頃から想い続けた言葉。

 

――この勇気、どうか届いて下さい!!

 

願いと共に両手にのせてチョコを差し出す。

 

「嬉しいよ、シルク。いつもボクに冷たかったのは愛情の裏返しだったんだね」

 

――やった、届いた!

 

嬉しくて、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキする。

私はゆっくりと目を開けた。そこにはちょっと顔を赤らめたお兄ちゃんの顔が……。

 

――アレ?

 

無かった。

 

「好きで意地悪するなんてキミも幼稚だなぁ。ま、そこも可愛いけど」

 

目の前に居たのは、咳払いでかすれた声を整えながら語る、見覚えはあるけど名前も覚えていない男子。

 

――誰だろ、この人……?

 

「そんなっ、シルクちゃんもサトウ君を好きだったなんてっ」

 

さらに後ろから女の子の悲痛な叫び。

どうやら私よりも前からここにいて、物陰に隠れていたらしい。

 

――え? いや、それはないって。私が好きなのはお兄ちゃんだけだもん。

 

見直すと白いマスクを顔に装着した彼は風邪をひいている模様。

頭の中が真っ白で、彼の語らいを聞いていると、彼の後ろの扉が開いた。

 

「お? お前らここで何してるんだ?」

 

入ってきたのはお兄ちゃん。私の本命……。

チョコを手にした私を見て、

 

「ああ、そうか。邪魔して悪かったな」

 

何かを察して部屋を出て行く。

私の中で、しばしの沈黙。

後ろの女の子と佐藤君(?)が何か話してるけど聞こえない。

 

「ちょっ、ちがっ。ちがうの、おにいちゃぁぁぁん!!」

 

私は手の中の物を握りしめ、お兄ちゃんの後を全力で追いかけた。

 

 

――結局、今年も告白失敗。

……人気の告白スポットなんて、選ぶんじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

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