Last UpDate (10/02/12)
朝起きたらまず鞄のチョコをチェック!
――良し。徹夜になりかけて造ったチョコは、ちゃんとリボンも結んで良い感じにラッピング。
学校に着いたら手紙を彼の下駄箱へ。内容はシンプル。
「放課後、○×に来て下さい」
ここで成就した恋は……っていう、人気のスポット。
でも名前は書かない。いつも通りに一日すごすの。大切な想いは直接会って伝えたいから。
――焦っちゃダメ。焦っちゃダメだよ。
隣とか上の下駄箱に間違えるなんて、あとで笑いものにされちゃうわ。
なんて言ったって、彼の下駄箱の上下左右はあの女達(ヒトタチ)のなんだから。
風邪をひいてたけど、欠席なんて有り得ない。彼は昔からずっと皆勤賞だもの。
一日バレないように過ごす。放課後までガマン!
――ホントは目が会う度に、すれ違う度にドッキドキ。心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかなってくらい。
でもつい背中を追っちゃう。気づいてないの? 今日は特別な日だよ? って。
意識してそわそわしてる男子はたくさん居るのに!
放課後になったら心を決めて。いざ、決戦の地へ!
―― 一日、長く感じたけど、いざ時間が近付くとキンチョーしてきた!
ああっ、恋の神様勇気を下さい!
いつもは沢山、人が居る学舎も、今日は、この瞬間は誰もいないと思っちゃうくらい静か。
ううん。
キンチョーしすぎて、ここの音しか聞こえない。
入ってきた時、顔を合わせたらいっぱいいっぱいなっちゃうから、私は扉に背を向けて。
そして、扉を開けて、彼が入ってきた。
今、ここは2人だけの空間。
彼の足音。彼の吐息。みょーに意識しちゃう。
「シルクだったのか、この手紙。どうしたんだ? こんな所に呼び出して……」
いつもより低い、かすれた声で。
ああっ。ホントにイベントに疎い! 今日は女の子にとって大切な日なんだから!
ちょっとくじけそうになる。
それでも、勇気を振り絞って、私は目を瞑って、彼へと振り返り全身全霊を込めて告白した!
「好きですっお兄ちゃん!! お兄ちゃんのコイビトにしてください!」
ずっとずっと、ちっちゃい頃から想い続けた言葉。
――この勇気、どうか届いて下さい!!
願いと共に両手にのせてチョコを差し出す。
「嬉しいよ、シルク。いつもボクに冷たかったのは愛情の裏返しだったんだね」
――やった、届いた!
嬉しくて、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキする。
私はゆっくりと目を開けた。そこにはちょっと顔を赤らめたお兄ちゃんの顔が……。
――アレ?
無かった。
「好きで意地悪するなんてキミも幼稚だなぁ。ま、そこも可愛いけど」
目の前に居たのは、咳払いでかすれた声を整えながら語る、見覚えはあるけど名前も覚えていない男子。
――誰だろ、この人……?
「そんなっ、シルクちゃんもサトウ君を好きだったなんてっ」
さらに後ろから女の子の悲痛な叫び。
どうやら私よりも前からここにいて、物陰に隠れていたらしい。
――え? いや、それはないって。私が好きなのはお兄ちゃんだけだもん。
見直すと白いマスクを顔に装着した彼は風邪をひいている模様。
頭の中が真っ白で、彼の語らいを聞いていると、彼の後ろの扉が開いた。
「お? お前らここで何してるんだ?」
入ってきたのはお兄ちゃん。私の本命……。
チョコを手にした私を見て、
「ああ、そうか。邪魔して悪かったな」
何かを察して部屋を出て行く。
私の中で、しばしの沈黙。
後ろの女の子と佐藤君(?)が何か話してるけど聞こえない。
「ちょっ、ちがっ。ちがうの、おにいちゃぁぁぁん!!」
私は手の中の物を握りしめ、お兄ちゃんの後を全力で追いかけた。
――結局、今年も告白失敗。
……人気の告白スポットなんて、選ぶんじゃなかった。
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