「あんな奴等に負けたりはしないっ。ヒナ、俺を……俺たちを信じろ!!」

意気込む蒼牙。
すぐそこにまで迫った魔王の軍団、対するこちらは数名の勇者のみ。
戦力の差は明かであるにも関わらず、妹をはじめとした勇者達は決して光を失っていなかった。

今まで何度も見てきた状況……聞いてきた言葉。
護ってみせると、貫いてみせると、多くの者達が彼女に確信という真実を持って、宣言し、敗れていった。
甘く見ていたのかもしれない……ヒナ自身も全てを知っていた故に、その真実を幾度と無く信じてきた。

いつだろうか、ヒナは彼らの、その真実が無力であることを知ってしまった。

……どうせできない。どうせやり遂げられない……

いつからだろうか、自然と全てに「諦め」を抱くようになってしまっていたのは。
彼らの思いが心からの真実なのを知るが故に、打ち砕かれた気持ちの痛みを知るが故に苦しむ。
その繰り返しに心が疲れてしまったのだ。
人々から「世捨て姫」と呼ばれる様になるには、そう時を要さなかった。

また今回も、「ま、がんばりなさい」と、素っ気なく、勇者達を送り出した。
もう、このこの人達は戻ってこないと、諦めて。

……

どれほどの時が流れただろうか、永遠とも感じる時間を経て、響いていた戦いの音が止んだ。

(終わったのね……。蒼牙、馬鹿なヤツだったわね)

ため息混じりに、最期ぐらいは見届けてやろうと、戦場へと向かうヒナ。
そこには、彼女の想像も出来ない光景があった。

「お、ヒナ、加勢に来たのか? でも今終わった所だ。心配かけちまったかな?」

微笑む旋璃亜。そして、一人も欠けることなく立つ勇者達の姿。
魔王軍を撃退し、一人も欠けることもなく再び自分の前に立っている。それはヒナの聞いた真実の想いが、初めての、事実となったを瞬間だった。

「俺たちは負けない。そういっただろ?」

「……馬鹿ね、知っていたわよっ」

うれしさを隠しきれずに出てしまった微笑みは彼女の心を移すように晴れやかだった。
(勇者屋キャラ辞典:「世捨て姫」ヒナ
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