霧が立ちこめ、日の光すら遮られた薄暗い草原の中を、獅子のマスクをかぶった、怪しげな男が走っている。

男は何かに追われているように何度も後ろを気にしながら、道なき道を進んでいた。
しかし、程なくして彼の行く手を阻む黒い壁が、彼の前に現れた。
黒くとても細い糸の集合……否、無数の髪の毛が集合し、壁を形作っている。

「我から逃れるのは不可能だと、いったはずだぞ? ライオン」

壁となっていた髪が柔らかさを取り戻し、ほぐれ、その隙間から徐々にその主の姿を男の前に露わにして行く。
霧に遮られ、力を無くした陽光を背に立つ美女は、男……ライオンを見つめ、優しい声音で語りかけた。

「ゼミニア隊を離れ、白竜戦団に入ったとはいえ……貴様とは戦いたくないないのだ」

態度は決して低くはないが、彼女の精一杯の切実な願い。
部隊でも常に無言の彼だが、彼の纏う空気、創り出す雰囲気が、彼女に安らぎを与えていた。例えゼミニア隊を離れても、出来ればそれを失いたくはない、彼とは戦いたくない……。

しかし、ライオンは静かに首を横に振る。語りはしないが、彼の決意が彼女に変えられるものではないと、語るには十分だった。

(力を振りかざした時点で、我の負け、か……)

ゆっくり目を閉じ、小さなため息。

「そうか、では次にあった時は、我と貴様は敵同士だ。……今回はこれで退こう。また、な」

ライオンに背を向け、歩き出す。秘めた想いを見せないように。彼を振り返らず、違えた道を歩き続けるように――
(勇者屋キャラ辞典:ラヴィスタ
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