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20: いちばん強い物語はなんですか

人は呼吸し、食べて、排泄します。それと同じように生きていればさまざまな願いをもちます。それが物語です。それでは物語とは虚しいものなのでしょうか。

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リハビリテーション

脳梗塞などで脳の神経細胞が損傷を受けると、言葉が話せなくなったり、体が自由に動かせなくなったりします。脳のどの部分が損傷を受けたかによってその障害の現れ方が異なってきます。

しかし、損傷を受けなかった脳の他の部分が損傷をうけた部分に代わって新しいはたらきをすることがわかっています。歩けなくなった人も訓練次第では歩かれるようになるのです。つまり、生まれてはじめて歩き始めたころのことをもう一度やりなおすわけです。このトレーニングをリハビリテーションといっています。


人生の辛いやり直し

まったく新しい体験をする乳幼児にとっては言葉を覚えたり歩いたりすることは感動的な体験かもしれませんが、その能力を失った大人にとっては歯がゆい作業となります。すらすら話せた体験や自由に歩けた記憶があるからです。「そんなことは無理だ」と始めから試みることすらしない人もあります。

障害をうけた人にとってリハビリは念力で石を持ち上げる訓練をさせらるようなものです。何度も何度も悔しい思いをしながら少しずつ少しずつ、リハビリは続けられます。諦めないでやり通そうとする強さはどこから生まれるのでしょうか。

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日ごろの生きる姿勢で決まる

リハビリに成功する人は日ごろから生きる力が強い人です。物語をもつ力が強い人といってもいいでしょう。目の前のことに安住することなくいつも強い願いを持ち続けられる人です。自分が再び能力をとりもどす物語を家族や医療スタッフと共有することがあれば、この物語はいっそう強力なものとなり、リハビリを支えます。

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理由のないことがいちばん強い

人とは異なった行動をとっている人がいると、私たちは「なぜ、そんなことをしているのですか」と尋ねたくなります。勿論、具体的な行為には具体的な理由がありますが、その根源的な理由にまで立ち入って尋ねていくと、最後には理由がなくなります。結局「そうしたいから」という答えしかなくなります。

理由のある行為はその目的が遂げられれば終わります。他の行為にとって代わられることもあります。しかし理由のないことには終わりはありません。たとえば愛とか希望といったことから発している行為です。

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物語は命のかたち

愛とか希望など理由のないことが人の動機としてはいちばん強くはたらきます。それは命のかたちそのものだからです。生きたい、という感情こそ私たちの根源的な感情ではないでしょうか。そして生きているうちは物語を誰かに語り続けている存在こそ、人という存在です。

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