T:各地域、同時代並行の世界史
世界史・納得のツボ(人類編)
home 納得のツボ(人類編)納得のツボ(案内)

300年〜1200年:2

(14) アジアの中心:バグダードと長安

8世紀、バクダードと長安は国際都市として、政治・商業・文化の中心となりました。ここではイスラームと中国の大帝国を商業という観点から考えてみます。この大帝国の対照的な特徴が見えてきます。

中国帝国は商社だった

前漢の時代に均輸法と平準法という経済政策が実施されたようです。均輸法とは政府に納められた各地の特産物を、不足している地域に転売することで、平準法とは物価が安い時に買い上げ高い時に売ることです。安い時に買い、高い時に売れば、政府に利益が入ります。余っている物を買ってくれ、足りない物を売ってくれる政府は、人々にはありがたい存在です。

宋の王安石の新法にも似た考え方があります。王朝の政策として行われた経済活動ですが、これは今で言えば、商社です。

◆ページのトップ

外交と貿易を兼ねた中国

また、中国は周辺の国々に、特産物を持参して中国の皇帝に挨拶に来ることを求めました。来訪した使節には、皇帝はより多くの品々を持たせて帰し、中国の威信を示すようにしました。

朝貢貿易と呼ばれるこの外交は見方によっては貿易そのものでした。このように、中国では政治と経済は不可分のものでした。

◆ページのトップ

根っからのビジネスマン

「見知らぬ少年が一輪の花を差し出している。花を受け取ると、少年は手を突き出して、お金を要求する。花は売り物だったのだ。」アラブの人は生まれつき商人なのだ、と言うイスラム学者から聞いた話です。

遊牧の民はそのまま商人でした。家畜という生きた財産を引き連れて長旅をする彼らには、常にリスクを背負う貿易はうってつけの仕事でした。

◆ページのトップ

イスラームは国際法

厳しい部族社会に生きていたアラブの人々を、部族間の対立・緊張を乗り越えて、一つの権威の下に結集させたのがイスラームの教えでした。絶対とされたイスラームに従えば、 見知らぬ者とも身内のように安心して商いができるようになったのでした。

イスラームの教えが普及すれば、商いの範囲は広がり、商機も増えます。厳格で変更・修正が許されないイスラームの教えは、彼らの社会から政治を吸収してしまい、人々はビジネスに集中できるようになったのです。

この効果は、国境や民族を超え、イスラームの教えは国際法のような役割を果たしたのでした。

◆ページのトップ

技術は東から西へ

製紙法は8世紀、中央アジアでムスリムと唐が戦ったタラス河畔の戦いの際、捕虜となった中国の職人から伝わったとされています。これにより、イスラーム社会では記録が容易になり、官僚制度が整備されるようになっていきました。

その他、絹の製法や繭は長い間、秘密にされてきましたし、後の時代には、火薬や木版印刷術や羅針盤も中国からムスリムを経て、ヨーロッパに伝えられました。歴史を変えることになった技術は、東から西へと伝わっていく傾向があったようです。

◆ページのトップ

新技術は珍品・特産物

中国には西からいろいろな宗教が伝わり、一部では信仰されましたが、中国社会が一つの宗教で一色に染まることはありませんでした。中国では一貫して、祖先を大切にし、季節の行事をとおしてその信仰が伝えられてきました。

一つの世界観・価値観に縛られることのなかった中国人は、新しい技術を工夫しましたが、それらは珍品・特産物と同じ扱いを受けて、皇帝に献上されたりするだけで、人々の生活を変革したり、ビジネスに結びついて発展していくことはありませんでした。

◆ページのトップ

学問・知識好きのムスリム

イスラームの世界では学問が大切にされました。マドラサ(学院)と呼ばれた高等教育機関が各都市にあって、イスラームの学問(「固有の学問」)を中心に若者を教育しました。イスラーム社会では尊敬されたウラマー(法学者)を養成するのが目的で、寄宿舎や奨学金制度も整備されていました。尊敬する師を求めて各地を遍歴し学問を深めること学生も多くいました。

数学、天文学、医学、哲学など「外来の学問」も盛んで、様々な地域から集められた知識や情報は整理・研究されていました。

◆ページのトップ

編集はムスリム
活用はヨーロッパ

私たちが使っている1・2・3の数字はアラビア数字と言いますが、これは存在しないことを表記する発想を、インドから学んだムスリムの学者が、「0」を使うことで十文字で無限に数字を表す方法を考え、ヨーロッパに伝え発展したものです。

このように、ムスリム商人が各地から集めた珍しい商品や知識は彼らのネットワークをとおして世界各地に再び広められていきました。そのうち、ヨーロッパはムスリムから学んだ知識や商品によって、急速に変化していきました。

◆ページのトップ

home 納得のツボ(人類編) | 前ページ | 次ページ