各地域、同時代並行の世界史
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1989年〜現在:3

(32) 世界の課題

世界が一体化し、グローバル化が進んだ世界が新たに抱えている問題には、これまでとは異なった特徴があるような気がします。それは何でしょうか。 

人口

人口は社会の動向を表す重要な指標ですが、他の経済的な数値とは異なり、人間の内面的な部分にも大きく影響を受けて変動します。それを政策によって誘導したこともありましたが、さまざまな弊害をもたらしました。

一般に、生活水準の低い国ほど出生率が高い傾向があります。それは乳幼児の死亡率が高いために、子供を多く生んでおこうとする人が多いためだと説明されます。そのため、医療の普及により死亡率が下がると、貧しい国ほど人口が増え、さらに貧しい生活を余儀なくされるという悪循環が生じます。

一方、先進国では子供を少なく生んで大切に育てようとする傾向が強く、さらに結婚しない人の数も増え、少子高齢化が進行しています。そのため、社会保障制度を維持することが難しくなっています。

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人の移動

情報・金・物・人の移動が激しくなっているグローバル化の時代ですから、人口が減りつつある先進国に職を求めて人びとは移住します。また、世界中で事業を展開するため、企業は国境を越えて人材を求めるようになっています。

しかし、情報・金・物と違って人の移動には多くの問題がともないます。生まれ育った地域の生活習慣や価値観・宗教を捨て、新しい環境のそれに適応することは簡単ではありません。それが宗教に関連することであれば、時には感情的な対立の原因にもなります。

「郷に入れば、郷に従え。」ということわざのとおり、新しい文化に同化してしまうのがいいのか、多様な文化が共存する社会がいいのか、考えはさまざまですが、言語や文化の一体性を前提にしてきたこれまでの国家のあり方が問い直されて入ることは確かです。

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競争と共生

「よりいい物をより安く。」客の立場で聞けば心地よく耳に響く言葉ですが、物やサービスを提供する側にとっては、競争は地獄のような経営努力を強いる場合もあります。競争相手に勝つために、消費者の知らないところで、安い賃金と長時間の労働を我慢しなければならないこともあります。「そこまで安くなくてもいいです。」と客は簡単に言ってのけますが、やはり、条件が同じなら、迷わず安い方に手が伸びてしまうのは自然のなりゆきです。

しかし、厳しい競争に勝ち抜き、生き延びられる勝者は少数です。その勝者の地位も長続きせず、気を抜けば次の勝者に地位をとって替わられてしまいます。消費者も自分の仕事では厳しい競争にさらされており、場合によっては明日の生活の見通しもたたないこともあります。このような競争を世界規模で続けた場合、必要な物が安定して供給され続けるのでしょうか。安全はどのように保障されるのでしょうか。

激しい競争により発展する産業もあれば、特定の人びととの信頼関係に守られて育っていく産業もあるはずです。これらが互いに支え合っていかなければ、一過性の競争だけでは文化はすぐに枯渇してしまいかねません。このような市場の棲み分けはどのようにして可能なのでしょうか。

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宗教復興

「暗黙知」という言葉があります。言葉では説明できないが、間違いなくその人に備わっている知恵のことです。学校の授業で教わった知識ではなく、長い間の体験をとおして体で覚えた直感のような判断力です。「なんとなく変だ。」と事前に危機を悟ってそれを回避したりする能力もこの「暗黙知」の一つです。

最近の脳科学では、学校で学ぶ知は大脳をとおして言語化できる知ですが、「暗黙知」とよばれる知は小脳や脳幹に結びついていることが分かってきました。

もし、私たちが合理性と呼んでいる言語化できる知だけを頼って社会を作って入ったとしたら、バランスの欠けた文明によって、犯罪・自殺・精神疾患などが多発するような事態になってしまうかもしれません。目先の競争や短絡的な合理主義に流されがちな現代にあって、宗教の大切さを見直す動きが盛んになってきていることを、私たちは軽く考えてはならないと思います。

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