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1930年〜1945年:3

(13)市場経済の欠陥

世界恐慌によって明らかになった市場経済の欠陥とはどんなことですか。

世界恐慌

1929年10月24日米国ニューヨークのウオール街でおきた株の暴落は世界中を巻きこんでいきました。鉱工業生産が低落、銀行の倒産、失業者の急増、過剰な農産物の廃棄、この深刻な事態はどのように説明できるのでしょうか。原理的なことに限って言えば、次のようなことが考えられます。

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世界恐慌の原因

  1. 過剰投資:第一次世界大戦中、米国は工業・農業生産は戦争体制に入っており、戦後の復興と共にそれは過剰な投資になっていきました。
  2. 米国の経済成長は自動車や住宅の需要によるところが大きかったのですが、一般に耐久消費財は一旦普及してしまえば、需要は減退しやすい傾向があります。米国経済の成長が頭打ちになったということです。
  3. 資金に余剰がある巨大企業は一旦生産を停止してもある程度の時間は耐えられますが、労働者は再雇用されない限り購買力を失っていきます。その分さらに国内需要が減少します。
  4. 世界一の債権国になった米国は、余剰資金を各国に貸し付けていましたが、恐慌が起きるとそれを回収してしまったために、米国の恐慌が世界中に伝わってしましました。
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負のスパイラル

要約すると、売れないから作らない、作らないから失業者が増える、失業者が増えるから購買力が低下する、購買力が低下するから売れない、売れないから・・・。この最悪の「負のスパイラル」に世界がとりつかれたらどうしたらいいのか。未体験の世界が広がっていました。

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市場の失敗

「市場に自由な競争が確保されれば、需要・供給のバランスは自動的に調整されて、価格が決まっていく。」18世紀イギリスの経済学者アダム・スミスの言葉は百年以上信じられてきましたが、1929年その信仰は崩れ去りました。市場は失敗したのです。その欠陥は早急に修復されなければなりませんでした。

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ケインズの理論

そもそも巨大企業が市場を独占している状態では、市場の自由な競争が確保されているとは言えません。労働者は機械化によって賃金は下がり、雇用主とは対等に交渉できないでいます。政府が社会の経済活動に積極的に介入して、市場が再び機能するように働きかけるしかありません。これが近代経済学の父ケインズの結論でした。

彼の言葉で言えば「政府の力で、有効需要を創出せよ。」ということになります。有効需要とは支払い能力に裏付けられた需要、つまり「金を握った客」のことです。

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国家の役割

1930年代、多くの先進国では国家の改造が進みました。世界恐慌によって、「国民の生命と財産を守るのが国家の役割だから、経済のことには干渉せず、市場での自由な競争に任せなさい。」という19世紀型の「夜警国家論」の限界がはっきりしてしまったのです。

新しい国家像は「福祉国家論」とも言われました。「国家は社会の調整役として、積極的に経済活動に干渉して、その成長を助けなさい。」と正反対の考え方に変わったのです。1930年代は国家の役割が大きく変貌していった時代でした。

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