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1870年〜1910年:6

(10)20世紀の病・ファシズム

第一次世界大戦後のヨーロッパでファシスト党やナチ党のような政党が誕生したのは何故ですか。
当時のイタリアやドイツの国民感情をふまえて考えなさい。

ムッソリーニとファシズム

当初は社会主義者を自任したイタリアのムッソリーニもドイツのヒトラーも、ソ連の社会主義を激しく嫌悪していました。彼らにはソ連の国民は独裁者にひざまずく奴隷のように見えました。それでは彼らはどのような社会主義を主張したのでしょうか。

まず、一部の資本家が富を蓄え大衆が苦しんでいる姿を改めるべきだと考えたのはロシアの革命家と同じでした。しかし、革命を推し進めるべき人びとは独裁者にひれ伏す個性のない労働者の集団ではなく、祖国を愛し誇り、共に戦う仲間でなければならなかったのです。

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ムッソリーニを支持した人々

勿論これはムッソリーニやヒトラーらのイメージでしかありませんでしたが、このイメージにイタリアやドイツの中間層の人たちが魅せられていきました。彼らは大戦後の不況の中で未来を憂えていました。有効な政策を打ち出せないでいる政治家には絶望しながらも、社会主義には抵抗を感じていました。そうしたまだ守るべき者をもった中間層の人たちや若者たちがファシズムの魅力に惹かれていきました。

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戦勝国イタリアの不満

イタリアでは現実はこんなふうでした。三国同盟の一員だったイタリアは古くからの領土問題でオーストリアとは対立関係にありました。戦勝国になって、オーストリアから残る領土を取り戻せるかもしれないと考え、イタリアは同盟側(ドイツ側)ではなく協商側(イギリス側)で第一次世界大戦に参戦したのでした。

しかし、期待したほど領土を得ることはできなく、国民には不満が残りました。戦後の不況の中でイタリアでは労働者達が武装して工場を占拠して、管理するような事態になっていましたが、政府は有効な策を出すことができなくなっていました。

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ファッシスト党の台頭

民衆の心が既存の政治家から離れている状況をチャンスと見て、ファシスト党を率いるムソリーニは武装した仲間と共に、改革を求めてローマに進軍したのでした。国王もこれを歓迎し、社会主義の台頭を恐れる支配層もこれを受けいれ、ムッソリーニの独裁体制が確立していきました。

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ルール占領

ドイツでは変化は社会の基底部においておきていました。莫大な賠償金を背負ったドイツは早速支払い延期を申し入れますが、これに怒ったフランス・ベルギーはドイツの工業地帯であったルール地方に派兵し占領してしまいます。ドイツの労働者はゼネストでこれに抗議しますが、そのために驚異的なインフレがおきてしまいました。

過剰な資金を手にした米国はドイツへの支援を申し出、ドーズ案と言われるこの救済策によりドイツはピンチを脱しました。賠償金は支払われ、英・仏は賠償金で戦争中の対米債務を返済できたのでした。

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ミュンヘン一揆

この時、ヒトラーに率いられたドイツ社会労働党(ナチ党)はミュンヘンで蜂起し、激しく政府を批判しました。このミュンヘン一揆は失敗しましたが、社会主義勢力に対する対抗馬としての役割を期待された彼らは徹底的には弾圧されることなく、着実に勢力を伸ばし、1929年の世界恐慌以後は歴史の表舞台に登場することになります。

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国際連盟の発足

米大統領ウィルソンが1918年に発表した「14カ条の平和原則」の中でも提唱されていた「国際的な平和機構」として国際連盟が1920年に発足しました。これも世界の結びつきが密接になった現れでもありました。

しかし、連盟には当初ドイツもソ連も参加せず、米国は議会の反対で加盟しませんでした。また、全会一意の原則を取ったため、国際社会の問題解決にあたり強制力を行使するような局面をもつことはできませんでした。

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戦間期の協調外交

戦間期と呼ばれる1920年代から30年代にかけて、欧米各国は互いの立場を踏まえながら相互に協調して、新しい国際秩序を模索する努力も始まっていました。例えば、1925年のロカルノ条約の成立を踏まえて、ドイツの国際連盟加盟が認められたり、1928年の不戦条約によって、国際紛争を解決する手段として武力に訴えないことが約束されたりしました。

ヒトラーはこうした平和を求める時代の機運を笑うように、激しい人種差別や排外主義的な主張をドイツ国内に浸透させて行きました。

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1910年〜1930年:まとめ

コントロールを失ったようにアジアへの侵略に進んでいった日本。終わらせることもできなくなってしまった第一次世界大戦。見通しもなく踏み出すしかなかったロシア革命。そして、社会に溢れ出した大衆。この時代になって、巨大になりすぎた社会も欲望が肥大化してしまった個人も等身大の姿を見失って、コントロールできなくなったようでした。

社会も個人も、再び自分を取り戻すことができるのでしょうか。

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