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1870年〜1910年:2

(2)20世紀は日露戦争から

「20世紀の歴史は日露戦争から始まった。」どんな意味でそう言うことができるのか、ここを理解すると、歴史の大きな流れのが見えてきます。

太平天国の乱

開国したばかりの中国では内乱が十年以上も続きました。同じようなことは日本でも朝鮮でも起こる可能性がありました。

開国した清国では、安い欧米の製品が流入したため、農村の綿織物産業は衰退ました。加えて、欧米の買い占めによって品薄になった商品が値上がりしたりして、農民の暮らしは困窮していきました。

追いつめられた人びとのなかから清朝を倒し、欧米を排斥する運動が広がります。太平天国と呼ばれるこの反乱(1851年〜)は人びとの心をとらえ、中国各地に広がり、一時は清朝内にもう一つの国家が存在するような形になりました。

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清朝の対応

この鎮圧に手を焼いた清朝は英国の力を借ります。その任に当たったゴードンは常勝軍を率いて戦いました。また、清朝官僚の中からも日本のような改革の必要性を感じる人びとが現れてきました。李鴻章や曾国藩らは自ら組織した軍を率いて戦いました。

こうした動きの中から中用西体(日本の和魂洋才と同じく、精神は中国的なまま技術的なことにはヨーロッパから学ぶ、という意味)の考えが広まり洋務運動が始まりました。この動きに西太后や旧守派の官僚は主導権を奪われることを恐れ、近代化への動きを潰すことになります。これが日本と清国との大きな差となって現れることになりました。

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日清戦争

長い間、中国を中心とする東アジアでは、貿易とは利益を追求する「経済活動」ではなく、中国の皇帝との関係を保つための「外交」でした。そのような背景もあり、貿易は政府の管理下に置かれていました。欧米にとってそれは鎖国政策でしかなく、強く開港を求めました。

中国、日本、朝鮮と19世紀の半ばから開港は順に進み、流入した欧米の安い商品により農村の手工業は壊滅し、、特産品が輸出されるなると、物価上昇により人びとの生活は困窮しました。これは開港した三国に共通した現象でした。

朝鮮の農民達は立ちあがりました。それを弾圧するために日本軍が動きました。この動きに清国も反応し、1894年日清戦争が勃発します。この戦争で戦勝国となった日本は下関条約で朝鮮に対する優位な支配権と賠償金を得ました。これにより日本は朝鮮国内に市場を新しく持ち、産業革命を推進するための莫大な資金を得たのでした。

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日本とロシア

日本の朝鮮進出はロシアにとっては脅威でした。太平洋への進出を図るロシアにとって日本列島が邪魔な存在でした。日本列島の北は冬季に港が凍ってしまいます。もし、日本が朝鮮や中国東北部に進出すれば、南の海に通じる黄海方面への進出が難しくなります。

ロシアはフランスに資金を頼んでシベリア鉄道の完成を急ぎました。日露両国にとって時間の戦いが続きました。日本の戦争準備が先か、シベリア鉄道の完成が先か。そんな時、1901年に北進事変がおきました。

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日露戦争

「扶清滅洋」をスローガンに蜂起した武術団は中国に進出していた外国人を実力で排斥しようとしました。各国政府は自国民を守るために北京周辺に軍隊を派遣します。北京議定書というかたちでこの紛争は落着したのですが、日本とロシアはすぐには軍隊を撤退させませんでした。やがて両国の軍事対立は、戦争へと発展していきました。

日本の劣勢を憂えた英国は1902年日英同盟を結んで日本への支援を約束しました。イギリスにとってもロシアが中国へ進出してくることは避けたいことでした。そこに日本がいたのです。日英同盟はその狙いどおりの効果を発揮し、日本を勝利へと導いたのでした。

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日露戦争と20世紀の歴史

日露戦争に勝利した日本は朝鮮を植民地とし、樺太など極東アジアでの覇権を確立しました。敗れたロシアでは生活に苦しむ民衆の不満が高まり、「血の日曜日事件」がおき、それはやがてロシア革命に結びついていくことになります。

日露の関係が改善されると、イギリスとロシアの関係にも変化が現れました。エジプト、イラン、アフガニスタン、インド、東南アジアと海からアジアへ進出していたイギリスと、伝統的な南下政策を追求するロシアは、アジアの各地で対立関係にありました。それが日本との関係を介して関係が改善され、英・仏・露の三国の関係強化へとつながり、第一次世界大戦に向けて歴史を一歩進めした。

また、アジアの小さな新興国が大国ロシアに勝ったことは、中国をはじめアジア各地で欧米の支配からの独立をめざす人びとに大きな希望となり、各地で近代的改革や独立運動の中核的な組織が生まれました。

日本人だからそう感じるのではないと思いますが、日露戦争は20世紀の歴史の方向を大きく決めたように思えます。ロシアでの革命、第一次世界大戦、独立をめざすナショナリズム。いずれも20世紀のメインテーマとなったことばかりです。

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