ストラトフォード・アポン・エイヴォン 2

Stratford-upon-Avon



ストラトフォード・アポン・エイヴォンの町。
写真左に小さく見えるのは、妖精パックの像。

 家族揃ってのイギリス旅行が決まったとき、父は言った。「ちょっとでいいから、スコットランドに足を踏み入れてみたいんだけどね」。母は言った。「湖水地方に行きたいわ」。そろいも揃って、行くのにかなり時間がかかる場所に行きたいという。両親の年を考えると、ハードスケジュールにすることはできないし、向こうで使えるのはたったの5日しかなかった。どう考えても、両方行くことは無理だから、と説明し、スコットランドよりも近い湖水地方に行こうと思ったが、日帰り旅行じゃ、あまりにももったいない。とすると、ここで1泊、時間を節約するために、着いたその日に、空港からマンチェスターに飛んで、そこから列車を使っていこうか、それとも、日帰りのツアーを利用するのがいちばん手っ取り早いかも、と、あれやこれや考えたが、時間とお金を節約して湖水地方にでかけるための、これぞ、という手立てがなかなかみつからなかった。
 すると、母が言い出しだ。「そんなにたいへんなら、どうしてもってわけじゃないの。もっと簡単に行ける所でいいのよ」。
 そのとき、真っ先に思いついたのが、ストラトフォード・アポン・エイヴォンだった。10年ぐらい前に訪れただけだが、たとえ、シェークスピア・ファンでなくとも、あの美しい町並みは感動的なはずだ。父と母に、ガイドブックに載っている写真を見せると、二人とも気に入った様子。じゃぁ、ストラトフォード・アポン・エイヴォンにしよう! 早速、列車の時間を調べ、下調べにとりかかった。


 前回、訪れたときには、ダイレクトでストラトフォード・アポン・エイヴォンに行く列車がなかったのでコーチを使ったが、今回、調べてみると、いつの間にかパディントン駅から1本で行ける列車ができたらしい。列車のほうが早いし、体を動かすスペースもあり、移動時間も楽に過ごせる。それなら、と、今回の旅では、列車を使うことにした。
 パディントン発9時18分の列車に乗り込み、ストラトフォード・アポン・エイヴォンをめざした。
 「こっちの列車はまだディーゼルなんだなぁ・・・。今さら電気に変えるのはたいへんなんだろうね」と父が言う。私は、これまで何も考えずに列車に乗っていたが、父には、そんなことさえ物珍しいらしい。そんなこんな会話を交わしながら、ごとごと列車に揺られているうち、11時半ごろストラトフォードに到着した。
 コーチの駅と列車の駅は離れているせいか、まるで初めて訪れる町に到着した感じ。「地球の歩き方」によると、1本道を直進すると、列車の駅から町の中心に行くことができるらしい。私たちは、町の中心部をめざし、その1本道と思われる道を歩き始めた。10分ぐらい歩いたころ、ようやく町の中心と思われる辺りに到着。コーチの駅が町の中心部にあるのに比べ、列車の駅はちょっと不便な感があった。
 その日は、何かの催しがあったらしく、古い町並みの中に、仮設の遊園地などが設けられていて、ちょっと不思議な空間が出来上がりつつあった。
 エネルギー補給のために、まずはカフェで昼食をとった後、情報を得るべく、tourist information centreへ向かった。
 係りの人に、名所を回るバスのチケットを買いたいんだけど・・・と言うと、「あなたたち、日帰りなの? それなら、これから7つ全部見て回るのは無理よ。7つのうちから3つを選んで見ることのできるチケットがあるけど、それは、ここじゃなくて、あそこのバス乗り場で売っているから」と言う。前に来たときは、1泊したものの、着いたその日に、ほとんど全部をバスで回った気がしていたので、7つ見るのは無理よ、と言われ、本当かなー、と最初は半信半疑だったが、確かに、5時半ごろの列車に乗ることを考えると、時間的にきついかな、と考え直し、「3か所に絞るとすると、どこがお勧めですか?」と聞いてみた。「どこも素敵けど・・・。そうね、メアリ・アーデンの家と、ホールズ・クロフト、そして最後にシェークスピアの生家を見るって感じかしら?」。オススメの3つの場所を頭に叩きこみ、観光を開始した。

左:THE SHAKESPEARE HOUSES City Sightseeingのバスストップ。このバスは、ストラトフォード・アポン・エイヴォンにあるシェークスピアにゆかりの建物を回っている。この目印のある場所で待っていると、だいたい20分おきにバスがやってくる。私たちは、このバスに乗り、任意の3つの場所を訪れることのできるチケットを購入した。
右:
バスに乗り込む前にイヤホンを渡された。そのイヤホンをはめると、バスが今走っている場所やもうすぐ到着するはずの場所の説明を聞くことができた。日本語のガイドまで用意されていたのにはびっくり。それだけ、たくさんの日本人が訪れている、ということですねぇ。が、イヤホンから聞こえてくる日本語は、留学生が吹き込んだものなのか、場慣れしておらず、多少、聞きづらかった。

 

 チケットを買い、バスに乗り込み、2階建てバスの2階席の前方に腰を下ろしやれやれ・・・と思っていると、バスがちょっと走った所で、母が、「あなた、ここで降りるんじゃないの」と言う。「へ? 違うでしょ」、と言いつつも、念のためバスの運転手に確認してみると、「ここがホールズ・クロフトだよ」という返事。慌てて、バスを降り立った。ここに来るちょっと手前に教会があり、すぐそこの距離だったので、いったん教会に引き返し、そこをちょっと散策してから、ホールズ・クロフトの建物内に入った。

左:ホールズ・クロフトの近くの教会。訪れたとき、ちょうどミサが始まるところだったので、建物の中には入れなかった。
右:ホールズ・クロフト。建物続きの隣はレストランになっている。ホールズ・クロフトは、シェークスピアの娘婿であるジョン・ホールの家。彼は開業医だっため、家の中には診療室や当時の医療器具が飾られていて興味深かった。

 ホールズ・クロフトを一通り見て、バスストップでバスを待ったが、さっき行ったばかりらしく、なかなかバスが来ない。空は曇っていて、じっとしているとけっこう寒かった。結局、20分以上待ってやって来たバスに乗り込んだのだが、ちょっとついてなかったなぁ・・・。
 この後、tourist information centreの人のオススメに従い、メアリ・アーデンの家とシェークスピアの生家を観光。バスの便に恵まれなかったこともあり、彼女の言ったとおり、日帰り旅行では、3か所を回るのがやっとであった。

上段:シェークスピアの母であるメアリ・アーデンの家とパーマー農園。かなり広い敷地内に、家畜小屋や納戸、鳥が飼育されている場所などがある。家の中の台所やダイニングなどを見ると、当時の農家の生活の様子がうかがえる。
下段:町の中心部にあるシェークスピアの生家。中に入ると、まずはビジターセンターがあり、シェークスピアの時代の机や彼の戯曲集などが展示されている。家の中には、台所や、シェークスピア誕生の部屋とされる寝室などに、シェークスピアの時代を再現した、道具や洋服の複製が飾られている。

 観光を終え、町に出てみると、たくさんの家族連れが、にわかに設けられた出店や遊園地に繰り出していた。
 古きよき時代と、現代が混在する、こんなストラトフォード・アポン・エイヴォンの風景なんて、めったにみられるもんじゃない。静かなストラトフォードの町をみたかった気もするが、これもまた貴重な体験だったかも。(笑)
 ちょっと買い物でも、と思っていたが、母が、そろそろ駅に向かったほうがいいんじゃない、という。心配性だなー、と思ったが、これは正解だった。来るときは1本道に思えた道が、帰りは、どこから来たのやら、といった感じで、家族揃って迷子状態。2、3度道を尋ねながら、やっとのことで駅にたどり着いたのだった。

 5時半過ぎの列車に乗り込み、訪れた場所を確認しようとガイドブックを開いたとき、アン・ハザウェイのコテージが目に飛び込んできた。あー、しまった。両親に、あのコテージ見せてあげようと思ってたんだった。肝心の観光スポットを訪問し忘れ、ちょっと、とほほ・・・、の私。またの機会があるといいんだけど。

1回目のストラトフォード・アポン・エイヴォン

(2005.3.5)
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