第19回 : イタリアのオンライン・ユニオン・カタログ(2)

前回は、基本的な使い方を中心に書きました。今回は、その続きです。

■検索結果の詳細表示画面■
たくさんの項目名が挙がってきます。これは落とせないという項目、音楽関係の項目など、イタリア語と日本語の対照をしておきましょう。
Livello bibliografico ⇒ 標準の書誌レベル [小関注: ギョーカイ用語
Tipo documento ⇒ 資料の種類
Descrizione fisica ⇒ 形態事項
Titolo uniforme ⇒ 統一タイトル
Altri titoli collegati ⇒ 別タイトル
Note al Caste ⇒ 配役に関する注記
Incipit Letterario ⇒ 歌詞の歌いだし
Alterazioni ⇒ 変化記号の付く音 [小関注:変化記号は音楽の♭や#
Tempo ⇒ 拍子 [小関注: 音楽でいう何分の何拍子というアレです。速さのことではありません。
Incipit Musicale ⇒ 楽譜の出だし

Livello bibliograficoの右側には、Monografia、Periodico、Spoglioの3種類のいずれかが見出せるようです。
Monografia は「単行図書」のこと。印刷楽譜なども含まれます。
Periodico は「逐次刊行物」、つまり雑誌の類です。
Spoglioは、分かりません。ただ、詳細表示を見ていくと手稿楽譜や手稿本の場合に、この語が多く見受けられます。伊和辞典には「裸の」といった意味が載っていますから、ナマ原稿のことを指しているのかな? と想像しるのですが・・・。わかる方がいらしたら、ぜひ教えてください!!

Tipo documentoでは、Teso a stampa(=印刷されたテキスト)、Testo manoscritto(=手書きのテキスト)、Musica a stampa(=印刷楽譜)、Musica manoscritta(=手書きの楽譜)、空欄(=CD)など、どういう資料なのかがわかる仕組みになっています。

さて、私が試した検索実例をご紹介しながら、このユニオン・カタログの特徴を見ていきましょう。

■件名(Soggetto)に、letteratura italiana と入力した結果は・・・■
「件名」は具体的な著者名や書名から探すのではなく、知りたい分野やことがらなどをコトバで探すものです。私は「イタリア文学」で検索してみようと思い立ったわけです。ところが、イタリア語を入力する必要があるのです。創造力を逞しくして、なんとか letteratura italiana に達したのですが、音大の学生さんは、声楽を学ぶ友人がいれば、中に「チャオ」などと挨拶をする人がいるでしょうから、そういう人に聞いチャオ(笑)。

で、162件の結果が表示されました。
「ちょっと少ないかなぁ〜」と思いながら詳細表示を全部見ましたが、1970年代から90年代にかけて出版された刊行物がかなりの割合を占めたのです。このカタログがカバーする刊行年代の範囲は、きわめて広いはずですから、ちょっと意外でした。

■ベートーヴェンのピアノ・ソナタを検索しようとして・・・■
ベートーヴェンの『フィデリオ』を検索したいときは、Autore に 「Beethoven」、Titolo に「Fidelio」と入力して探せば良いです。曲名にソナタや交響曲など、固有のタイトルとは違って楽曲形式などを入力するときにどうしたらいいのかな? これも私の疑問でした。なんとかやってみました。

Autore: Beethoven
Titolo: Sonate pf


作曲者の箇所は説明を要しないでしょう。タイトルの箇所は「統一タイトル」と呼ばれる入力の仕方をするのですが、始めに楽曲形式 Sonata の複数形=Sonate を入力します。次にスペースをあけて、ピアノを意味する
pf を入力。そして検索です。面喰ったのは、この入力の仕方だとピアノ・ソナタもチェロ・ソナタもヴァイオリン・ソナタも探し出してくるのです。この点をどう乗りこえたらいいのか、私は、いまのところ方法が分かりません。

Titolo の箇所を Sinfonie(=Sinfoniaの複数形)に変更して「第九」が出てくるまで詳細表示を見てみましょう。Titolo uniforme の箇所に、楽器編成が仔細にわたって表記されている例を見出せることでしょう。これは、ほんの一例ですが、私がこれまで慣れ親しんできた統一タイトルの方式とは大いに異なる面をもつようです。

■オペラを検索してみよう!!■
Autore: Verdi
Titolo: Rigoletto


検索結果の簡略表示を見ていきます。オペラ全曲の楽譜、特定のアリア等の楽譜、このオペラを原曲にしたパラフレーズ等々、かなり多くの資料が見出せます。[Manoscritto]、すなわち手書きと書かれたデータもけっこう含まれます。すべてが作曲者の自筆譜とばかりは限らないみたいですよ。早合点しないで、じっくり見たいものです。

件数が多くて、見るのがじれったいという人も出てくるでしょうね。そう、アリアが1曲あればいいんだけどな、という場合も。たとえば「女心の歌」。曲の歌いだしは、イタリア語で歌えるぞという方、次の方法を試してみましょう。

Autore: Verdi
Titolo: la donna e mobile


結果が出てきたでしょう。統一タイトの箇所には「Rigoletto . donna e mobile . riduzione」、別タイトルの箇所には「La donna e mobile qual piuma al vento」とあります。歌詞の歌いだしの箇所も、別タイトルの箇所と同じ字句が見出せます。

ここから先が驚きです。
「変化記号の付く音」が記されています。「x」印は「#」と同義のようです。「♭」はその記号が使われています。ト音記号に続けて「♯」が付く音、FCGDA、と続きます。ABC順じゃありません。楽譜の約束事に沿って表現されていることがわかります。拍子4分の3拍子

そして楽譜の出だし(=Incipit Musicale)が出てくるにいたっては、私は心臓が止まるかと思いました(思っただけです、ご安心を・・・)。
/=9/とか =10/ の意味は分かりません(前奏の小節数でも表しているのでしょうか?)。ひとまず無視しても大勢に影響がないみたいです。
4 は四分音符、8 は八分音符、6が16分音符、3が32分音符。- は休符。ABCは英語形の音名です。

'8DDD/6.F3E4C/8CCC/{6.E3D}, 4B

どうですか? たしかに「女心の歌」でしょ?
こんなカタログ、私は見たことがありませんでした。この例では出てきませんが、ヴェルディの『オテロ』ではそのアリアを歌う配役(Jago-Br。イャーゴ − バリトンの意味)まで出ているケースがありました! これらの特徴は、器楽曲やオペラ全曲、歌曲集の全曲といったケースでは見出せません。ただ、ベートーヴェンの『アデライーデ Adelaide』など、独立した歌曲では歌詞の歌いだしが表示されたり、それを Titolo に入力することで検索可能になったりしました。

まだ、私自身が熟知したとは言えない段階なのですが、これほどのカタログを眠らせておく手はありませんよ!
【2000年3月17日記】


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