第203回: ナクソス・ミュージック・ライブラリー(2006年4月20日) 

この3月にデスクトップ・パソコンを新調しました。基本性能があがったおかげで快調に使えています。なによりも、音声や動画の取り扱いが以前のマシーンよりもずいぶん楽になりました。しかも音質もけっこう良く感じられます。面白いもので、自分のPC環境がこのような変化を遂げたとたんに、あることを思いつきました。

昨年の秋のこと、クラシック音楽のCDを出しているナクソス(NAXOS)が、自社をはじめ他社レーベルの音源までをも含む有料のインターネット図書館をスタートさせたのです。現在BISやヘンスラーなどを仲間にして、合わせて29レーベルの全音源が自由自在にストリーミング再生することができます。メジャー・レーベルこそありませんが、よく見るとかなり個性的なレーベルが並んでいるようにみえます。ストリーミングですから、音源のデータを利用者のパソコンなどにダウンロードしてから再生するのではなく、音源の元ファイルに接続してそれを受信しながら順次再生していきます(ダウンロードすることはできません)。

これをナクソス・ミュージック・ライブラリーといいます(← こちら へどうぞ)。画面につなぐと概略の説明、「15分無料体験」、料金と利用方法などが記されています。私はCDにはわりとお金を使ってしまうほうなので、個人で登録した場合の月額1,890円が高いのか安いのかを確かめる意味で、まずは「15分無料体験」に繋いで収められている曲を探したり、そこから選んで音楽を聴いたりし始めました。面白くなってきてもっといろいろ試そうと思ったら15分経過して、チョンと呆気なく無料体験は終わりました。私にとって、この内容ならば個人で登録して損はないと判断をしました。

機能面では再生だけなく基礎的な知識を得ることにも配慮がなされています。そのひとつが音楽之友社の『新編 音楽中辞典』がウェブ上で使えること。ありがたいと思いました。実は3年ほど前、この時点をウェブ上で使っていたことがありましたが(確か税込月額315円でした)、利用しない月が何ヵ月が続いたため利用をやめました。その後、ときどき再度契約しようかどうしようか迷うことがあったのですが、そのままになっていました。さらに「用語集」「人名発音ガイド」「オペラの粗筋」「オペラのリブレット」「CDブックの台本」「音楽基礎用語辞典」なども用意されているのですが、これらは現在のところ英語のテキストです。日本語で読める日を楽しみに待ちましょう。

さて、再生する音源を選ぶのは「カタログ」からゆっくり探してもいいでしょうし、「検索」のページ(現在の検索は英語のみと書いてあります)をあけてトライするのもいいでしょう。しかし一度さがした音源を繰り返し聴きたいと思ったら、そのつど探すのでは手間も時間も惜しいです。そうしたときは「プレイリスト」に適当なフォルダーを作って置いておきましょう。そうすれば次回はプレイリストから選んでクリックすれば、すぐにストリーミング再生がはじまります。これを使わない手はありません。

用意されている音源を眺めていくと、いまCDショップの店頭では見当たらないものも含まれているようです。廃盤になったものでも、このインターネット図書館にはきちんと残して聴けるようにしようというわけです。この姿勢は大歓迎です。

さて、このように書いてくるととりたてて問題や不満を感じていないように思われるかもしれませんが、実は少しばかりあるのです。それは、ストリーミング再生という機能を使ったサービスである以上やむをえないのでしょうが、再生ボタンをクリックしてから実際に音源のファイルに繋がり音が出るまでの時間がやってみないとわからないという点です。時には「メディアに繋いでいます」というメッセージがでたまま、比較的長い時間待たされることもありました。また、次の楽章に移るときに「メディアに繋いでいます」というメッセージがあらためて画面に出て待たされたということもあります(待たされっぱなしでも困るので、私はひとまずストップ・ボタンをクリックし、そのうえで再生ボタンをクリックしなおします。そうしなくとも繋がることもありましたが、あまりにも長く感じられるときにはこのように対処しています)。こういうときの「間(ま)」は実に不自然なものですから、技術的な改良を施す余地ってないものでしょうか?

この4月3日からは図書館がナクソス・ミュージック・ライブラリーと契約して利用者に提供することもできるようになりました。大学や学校などの図書館で契約した場合は、先生が学生にこの曲を聴いておくように伝えて、そのようにしてもらうこともできるのだそうです。しかし図書館が契約した場合、一般利用者が「プレイリスト」まで自由に扱えるわけではないようなので、個人で契約する価値が下がるというものではないと思います。むしろ、個人個人でCDに対して使うお金や時間などが違うでしょうから、選択肢が増えてよいということも言えるように思います。

ちなみに、このインターネット図書館を使い始めて1ヵ月あまり。CDを買うことをやめたわけではありません。でも、CDショップに足を運んだときに、これは要る、これは要らない、これはナクソス・ミュージック・ライブラリーを調べてあればそこで聴こうという判断が早くなりました。もちろん1ヵ月にCDに使っていた金額も少し減ったようです。全体的にみれば、いいインターネット図書館を見つけたと感じています。これとジャパン・ナレッジをあわせて、1ヵ月におよそ3,500円の支出。ぎりぎりという印象ももっていますが、まあいいところなのでしょう。



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