第157回 : 音楽療法のはなし(2002年10月25日)

10月19日(土)に、中野サンプラザで出身高校の同窓会があり、行ってきました。 夜の懇親会は、中心になって動いた幹事さんたちが例年とは違った工夫を凝らし て、こんな楽しみ方もありますよと新しい提起をしていました。ところで、 我同窓会は、いきなり懇親会から始まるわけではありません。夕方の講演会からスタートし、その後で総会をおこなった後に懇親会なのです。以前、ビールの美味しさ倍増計画を立てた人が、いたのかもしれません。

で、今回は、こんな講演会を聞いたよというお話。

当日は、私たちの同期生で音楽療法士の木村美音さんをお招きして(途中サキソフォン奏者の園山光博さん―彼も同期―も参加)、「音楽は身体の内からあなたを救う」というテーマで、肩の凝らない、しかし深い内容をもったお話をききました。忘れないうちに言っておきますが、参加者も交えての実演コーナーも用意されていて、私も、トーンチャイムという楽器を初めて鳴らしてきました \(^o^)/

高校時代はテニス三昧の日々を送ったという木村さんですが、実は小さい頃から音楽 に親しんでいたそうです。その木村さん、結婚後、子育てに追われ、疲れとストレスが溜まっていたらしいある時期、なにげなくバッハの無伴奏チェロ組曲のCDを聴いて、それまでになく心が癒され、聴きおわった後で「明日も頑張ろう」という気持ちになれたといいます。その後、音楽療法士という仕事があることを知り、勉強をして今のお仕事につかれたのだそうです。

音楽療法士としてはダウン症の赤ちゃんとのセッション、精神や身体に障害をもった人たちとのセッション、ご老人とのセッションについて話されました。聞いてみるとそれぞれに特徴的な接し方もあるようです。そしてセッションを終えて帰宅するときは、ぐったりと疲れるといいます。しかしそれは、自分がもって出たエネルギーを患者さんに伝えた証なので、そのように疲れるのはむしろ良いことなのだと考えているらしいのですね。この前向きな考え方には、頭が下がりました。

さて、先ほど木村さんが無伴奏チェロ組曲を聴いて癒されたことを書きましたが、実はこのことじたいが、一種の音楽療法体験だったようです。つまり、落ち込んだ気分でいた木村さんにとってバッハのこの曲は、落ち着いた、そしてどこか憂いを含んだ音楽として心に響いたのでしょうが、音楽を聴きはじめるときの曲の感じと聴く人の気分がマッチして、心に響くというわけです。そして肝心なのは、そのあとで「明日も頑張ろう」と思えたというところでしょうね。考えてみれば、同じような経験をした人は私も含めてかなり多いのではないでしょうか。

聴く音楽療法もあれば、演奏に参加する音楽療法もあります。お客さん参加コーナーが2回用意されていました。さいしょは威勢のいいマーチを園山さんがサキソフォンで吹き、それに合せて7、8人(だったでしょうか)の人たちがさまざまな打楽器を受け持ち他の人たちも机や湯飲みを打楽器に見立ててリズムを打つといった試みでした。私は、湯飲みの端をボールペンで軽く打ちながらリズムを刻んでいました。でも、なにか物足りない気がして、2回めには志願して「トーンチャイム」という楽器を鳴らしてきました。この時は、講演会も終わりにさしかかるあたりで、皆でゆったりとした「故郷」を歌ったのですが、トーンチャイムなる楽器を伴奏に使ったのです。

トーンチャイムについては こちら を参照してください。


一人一人受け持つ音程が決められ、私は「レ」でしたが、ほかの6人の方もそれぞれに楽器を手になさいました。そして「ド・ミ」「ファ・ラ・ド」「ソ・シ・レ」と3つのグループに分かれて、木村さんの指揮を注意深く見ながら和音の伴奏をつけました。音色が夢見ごこちとでもいったらいいのか、なかなか魅力のある楽器でした。やはり、たとえ下手でも演奏に参加できるほうが一体感を感じながら、発散もできて良いなと感じましたが、これって、いま私の日常のテンションがどちらかというと高めだからでしょうか?

木村さんの将来の目標は死期を言い渡された患者さんに対する音楽療法だそうです。人はどういう死に方をするかわかりません。懇親会の席で、私は死期を言い渡されるようなことがあったら、ぜひ私の音楽療法をしていただきたいとお願いしました。快く引き受けてくださって、なぜかとてもホッとした気持ちになりました。


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