第149回 : 明るい喫茶店(2002年7月2日)

私の出身高校の同窓会は、毎年、その年に50歳を迎える代が同窓会報の編集、同窓会の総会・講演会・懇親会などの準備や仕切りをすることになっています。これを称して当番幹事と呼んでいます。私も、ふとした偶然から、その一人に加わりました。私の主な受け持ちは、同窓会報の編集です。

4月までの私は、仲間の活躍もあって楽をさせてもらいましたが、5月に入ると原稿依頼にはじまり、電話取材をし、原稿のとりまとめにとりかかるといった具合に時間が過ぎていきました。原稿がどっと帰ってくれば言うことはないのですが、そうは問屋が卸しません。そんなわけで原稿は何回かに分けて印刷業者に送りましたが、ほぼ入稿が済んだのは、6月も下旬近くになってのことでした。

たいへんでパニックに陥るということはありませんでしたが、業者が出してきた予定を横目で睨みながら、今週はこの辺りまでの仕事が終わっていなくてはマズイよな、と自問自答しながら少しずつ作業を進めていきました。簡易な作業リストもどきを作って、少しずつでいいけれど、けっこうコンスタントに作業を進めていくのがコツでした。作業リストは、あまり先まで考えすぎず、向こう1〜2週間程度を視野に入れ、終わったら作業リストをいつまでも残さない。とまあ、(いいか悪いかは別として)こんなやり方で、5月から6月が過ぎていったのですから、このふた月の私の終業後のプライベート・タイムは、たまに行きつけの飲み屋さんに寄るようなことはあったものの、いたって真面目な生活に終始しました。

手書きの原稿やワープロ打ちの原稿は、再度、ワープロ・ソフトを使って入力し、紙に打ち出すと同時に電子ファイルを作ります。こうしておけば、印刷業者の作業も楽になろうというものです。電子ファイルは、CD-Rに焼きました。文章のファイルも、Eメールに添付されて送られてきたデジタル写真の画像も、CD-Rに収めます。ただ図表の類は、無理に私が入力(デジタライズというらしい、かっこいいですね \(^o^)/)しないで、紙の原稿のまま送ります。

さて、6月も終わりが近づいたある日、待ちに待った初校が送られてきました。入稿が遅れましたから、当初の予定は一部変更され、3回行なう筈だった校正を2回に減らしたのです。それだけに初校をきちんと校正しなければと気持ちにも肩にも力が入りました。初校が到着したその日は、かなり夜遅くまで校正を行ないました。といっても1回で完了するわけではないので、これも初校を戻すまでに、この日にはこのあたりまで校正を進めようとある程度の予定を立てました。

この段階までくれば、基本は誤字・脱字の修正ですが、レイアウトなどを印刷業者にお任せしている部分があるので、編集会議を開いて、意見を交換することにしました。それが6月29日(土)夕方のことです。場所は、前々回のこの欄で取り上げた、貸し会議室のある新宿三丁目の「ルノアール」。

この日、私は用事があって午前中から新宿にいました。夕方までには数時間空きができてしまいますが、これを無駄にする手はありません。私は校正を進める積りで出かけました。昼食時も、注文をして食事が運ばれてくるまでの間に校正をしたのですが、なにせ室内が暗い! 暗くて、校正には不向きなのです。そんなわけで、そこでの作業は無理をせず、食事を終えた私は、インターネットで調べておいた室内が明るく長居が可能(ホントかな?)な喫茶店を目指して歩き始めました。もちろん、「ルノアール」も明るいに違いないと思うのですが、午前は西口の方にいましたし、同じ喫茶店に5時間くらいも粘るというのもチョット嫌だなと思って、午後の早い時間、新宿駅西口にある「談話室滝沢」に足を踏み入れました。

ドアを開けると、明るく上品なスペースが目に飛び込んできました。人数は一人で喫煙しないことを告げると、手ごろな大きさの席に案内してくれました。驚いたのは、はじめ水を運んでくれたウェイトレスが、「いらっしゃいませ」と言った後に「Mです」と名乗ったことです(私の空耳ではないと思うのですがね)。テーブルを見ると、幅は少々狭いのですが、適度に横長で、テーブルの端のほうに飲み物を置き、中央から左あたりに原稿と初校を広げて、スタンバイOKです。

ふだん校正などしない人間にとって、照明の明るさはプラスに働く要因だと思います。文字と文字をつき合わせて間違いがないか見ていくわけですから、画数の多い漢字など、暗くては判断がつきにくくなります(視力の良い私でも、さすがにそういう歳にさしかかっています)。おかげで集中できました。1時間もすると、かなりはかどり、それに比例して肩なども凝っているのが自分でもわかるほどでした。肩や首をグルグル回したり、腕を伸ばしたりして凝りをほぐしましたが、向かいに座っていた別のお客さんからは、何やってんだろうという目で見られてしまいました(トホホ)。

追加注文で別の飲み物をとってさらに1時間、初校の校正は終わりました。なんと編集会議まで1時間近く時間ができました。少し身体を動かしたい衝動にかられましたので、私は、店をあとにしました。この店、飲み物1杯で1,000円という話は聞いていて覚悟していきましたが、確かに最初の1杯は1,000円、でも追加した飲み物は半額の500円になっていて、さらに次回持参すると200円割引となるチケットを1枚もらって帰ってきました。

その後の編集会議はどうなったかと仰るのですか? 校正が全部済んだおかげで、会議はスムースに進みました。実は「編集後記」の原稿を残していたのですが、これは二次会でお酒を飲みながら出席者の4人が話し、それを仲間の一人がまとめる方法をとりました。こちらも、いやこちらは、なお一層楽しかったですよ。


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