第104回 : 閉館した東武美術館(2001年3月31日)

触れよう、触れようと思いつつまだ書いていないことがありました。それは、池袋にある東武美術館が幕を閉じたことです。この美術館は、1992年6月、「エルミタージュ美術館展 17世紀オランダ・フランドル絵画」でオープンしました。以後、去る3月4日に終了した「没後100年 トゥールーズ=ロートレック展」にいたるまで、58回の展覧会が実施されました。実はその後、3月8日から20日までカタログ類その他のセールが行なわれましたが、これもすでに終了しました。とても残念なことに違いないのですが、今回は、東武美術館友の会季刊誌「AMBIENTE」Vol.32の資料をもとに、58回の展覧会の記録を一覧表にし、そのうち私が見た主な展覧会から、印象に強く残った作品やことがらなどをメモしておきましょう。

No. 会期 展覧会名
01 1992年6月10日〜8月18日 エルミタージュ美術館 17世紀オランダ・フランドル絵画
 以後5年間、年に一度「エルミタージュ美術館展」を開催。もちろん毎回、展示のテーマは変りました。
02 1992年8月30日〜10月27日 栄光のハプスブルク家展
 19世紀末の絵画で、大勢の人物を描いた一枚の絵の中にJ.シュトラウス二世とブラームスを発見したときの驚きは、いまでも忘れられません。
03 1992年11月3日〜12月23日 モディリアーニ展
 細くて長い顔を描くモディリアーニの特徴が脳裡に焼き付けられた展覧会でした。
04 1993年1月2日〜2月14日 江戸が生んだ世界の絵師 大北斎展
 細かい観察力に感嘆しました。
05 1993年2月21日〜3月21日 芸術と自然 ― 西洋画家は自然をどう見たか ―
06 1993年3月28日〜4月25日 詩情の画家 小茂田青樹展
07 1993年5月1日〜6月10日 リール美術館所蔵 バロック・ロココの絵画
 2人の女性を描いたゴヤの作品が二つありました。一つは若い頃の、もう一つは老いてからのもの。皮肉がきいていて、思わず足が止まりました。
08 1993年6月17日〜7月18日 ニコラ・ド・ステール展
09 1993年7月24日〜9月15日 ルノワール展
 ルノワールが少年や少女を描いたとき、その人物像がとても生き生きしているのを発見しました。
10 1993年9月23日〜10月26日 エルミタージュ美術館 イタリア・ルネサンス・バロック絵画
 ティツィアーノなどに面白い絵がありました。いま、記憶に呼び戻されたばかり(笑)。
11 1993年11圧2日〜11月28日 パリに住み、フランスを描いて40年 村山密展
 この美術館で初めて知った画家でした。遠くに望む凱旋門からの通りが上品なピンクに仕上げられた作品が、特に印象的。
12 1993年12月3日〜12月23日 南大門仁王尊像平成修理完成記念 東大寺国宝写真展
13 1994年1月6日〜2月6日 山口華楊と晨鳥社の人びと
 記憶では、昭和戦中期に描かれた作品が少数展示されていて、それらがやけに暗く、戦争中は、のびのび作品が描けないのだろうかと首をかしげた記憶があります。
14 1994年2月26日〜3月27日 円山応挙展
 行きましたが、強烈な印象は残っていません。
15 1994年4月7日〜6月5日 ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画
 これも強烈な印象は残っていません。
16 1994年6月11日〜7月17日 浮世絵の子どもたち
17 1994年8月1日〜9月13日 大英博物館展 ― インドの仏像とヒンドゥーの神々―
 たしか、紀元4世紀くらいまでの像には、ギリシャっぽいというかバタ臭い顔が見出せましたが、9世紀ころにはそうした顔がなくなっていたように思い出します。
18 1994年9月24日〜10月25日 エルミタージュ美術館 フランス バロック・ロココ絵画
 行きましたが、強烈な印象は残っていません。
19 1994年11月3日〜12月4日 横山大観展
 大観をまとめて見たのは初めてでした。作品の多彩さに驚き、絵の面白さを堪能しました。
20 1994年12月20日〜1995年2月12日 ウィーンのジャポニズム展
 強烈な印象は残っていません。
21 1995年2月18日〜3月21日 17−19世紀・名作でつづるフランス絵画 トゥール美術館展
 特に印象に残っていません。
22 1995年3月28日〜6月25日 ブリューゲルの世界 コぺ・コレクションと世界の11の美術館から
 興味深い作品がたくさん来ていました。特にピーテル・ブリューゲル(父)がよかった・・・。
23 1995年7月2日〜7月30日 20世紀美術の挑戦 ― ルートヴィヒ美術館展
 ポップな感じの作品まで含んで展示されていて、「おっ」と思った憶えがあります。
24 1995年8月6日〜9月3日 エルミタージュ美術館 19−20世紀フランス絵画
 ルノワールの作品など、いい作品と出会えました。
25 1995年9月14日〜10月15日 西国三十三所
26 1995年10月26日〜12月10日 大写楽展
 個性の強さに脱帽。当時の歌舞伎役者の知識があればもっと楽しめたのでしょうが、私には無理でした。
27 1995年12月23日〜1996年3月10日 ピカソ 愛と苦悩
 多数の作品が展示されましたが、売りはドーンと設置された、実物大の《ゲルニカ》写真でした。友の会会員だった私は、3回ほど足を運び、この《ゲルニカ》をじっくり見ました。
28 1996年3月30日〜6月30日 印象派はこうして生まれた
 印象派以前のアカデミックな作品やバルビゾン派などから印象派まで展示されていたと記憶します。ただし強烈な印象は残っていません。
29 1996年7月13日〜9月1日 エルミタージュ美術館 16-19世紀スペイン絵画
 以前のエルミタージュ美術館展のうち、もっとも宗教性の強い(「祈り」が前面に押し出されている)作品が多数あり、印象に残りました。
30 1996年9月12日〜10月20日 京都・永観堂禅林堂の名宝展
 あまり記憶に残っていません。でも、同じ時期にテレビで京都の永観堂を使った、観光のコマーシャルが流れたような記憶があるのですが・・・。
31 1996年11月2日〜1997年1月19日 ヨーロッパ近代絵画の100年 ドイツ・フォルクヴァング美術館展
 さほど印象に残っていません。
32 1997年1月25日〜2月11日 時代の目撃者 オノレ・ドーミエ版画展
 版画に加えて、書かれている文字(当然フランス語)も多く、会場の解説を読んでどんな風刺が込められているのかを理解するのに一苦労(理解できない場合が多かった!!)。
33 1997年2月22日〜4月13日 天空の秘宝 チベット密教美術展
 踊りながら交わる男女の神の像が何体かあったような記憶があります。
34 1997年4月26日〜6月8日 古代出雲文化展
35 1997年6月19日〜7月27日 光と闇 華麗なるバロック絵画展
 さほど印象に残っていません。
36 1997年8月7日〜9月23日 ニューヨーク・ニュージャージー 浮世絵コレクション展
37 1997年10月9日〜12月9日 ケルン東洋美術館展
 さほど印象に残っていません。
38 1997年12月20日〜1998年2月11日 ボナノッティとデ・ミトリオ二人展
 私にとっては趣味が合わず、30分も会場にいたかどうか。
39 1998年2月21日〜3月29日 愛と光/ガラスの絵画 ジュマイユ展
 初めてジュマイユを見たのはNo.11の村山密展で。しかし、これだけまとまって見たのは、後にも先にもこれ1回で貴重な体験となりました。
40 1998年4月11日〜6月28日 ブッダ ― 大いなる旅路 ― 展
 世界の国宝級仏教美術を一堂に、といううたい文句で開催されました。細かい構成は忘れましたが、見終わった時に「来て良かった」と感じた覚えがあります。
41 1998年7月11日〜8月30日 モネ、ルノワールと印象派の画家たち 印象主義とその広がり
 楽しめる展覧会でした。
42 1998年9月11日〜11月24日 アフリカ・アフリカ 熱い大陸のアーティストたち
 珍しい企画でした。
43 1998年12月5日〜1999年1月17日 日本の心・富士の美展
 時代によって富士山の描き方が異なっているのを初めて知りました。なかなか面白い企画でした。
44 1999年1月25日〜2月23日 顔/かお/カオ ドミエ版画展 U
45 1999年3月6日〜4月13日 神品と呼ばれたやきもの 宋磁展
46 1999年4月24日〜5月30日 江戸の華 歌舞伎絵展
 不慣れな世界に飛び込んだ感じで見てきました。役者絵を見るのは、どうも苦手です・・・(汗)。
47 1999年6月10日〜7月20日 来日450年 その生涯と南蛮文化の遺宝 大ザビエル展
 展覧会としての面白さというよりも、歴史的な関心を満たしてくれる企画でした。
48 1999年8月1日〜8月31日 小野竹喬展
 強烈な印象は残っていません。
49 1999年9月11日〜10月17日 役行者神変大菩薩千三百年遠忌記念 役行者と修験道の世界展
50 1999年10月28日〜11月28日 没後50年記念 美の精華 上村松園展
51 1999年12月9日〜2000年1月23日 ドイツにおける日本年 特別展 帰国記念 東大寺の至宝
52 2000年2月5日〜3月14日 新時代への眼差し ドーミエ版画展 V
53 2000年4月1日〜5月21日 ホノルル美術館展
 火山噴火後の人びとの生活を描いた珍しい絵などもあり、さすがハワイと思いました。好企画といえるでしょう。
54 2000年6月2日〜7月2日 河鍋暁斎・暁翠展
55 2000年7月13日〜9月3日 マティスとモデルたち
 マティスが好きな人には面白かったに違いありません。私は、そこそこ楽しみました。
56 2000年9月15日〜10月22日 平成大修理完成記念 京都大原三千院の名宝展
57 2000年11月3日〜12月24日 コートルード・ギャラリー所蔵 16−17世紀オランダ・フランドル風景素描の世界展
 解説を丹念に読みながら見ましたから、それなりに意味が把握できました。素描って、私のような素人が見ても、地味な分、つい丁寧に見ないで先に行ってしまいます。
58 2001年1月2日〜3月4日 没後100年 トゥールーズ=ロートレック展
 最後を飾るにふさわしい充実した内容でした\(^o^)/。
No. 会期 展覧会名
という具合に、私自身は40回とちょっと見に行ったことになります。東武美術館が、私の自宅から比較的近いところにあったおかげで、友の会会員になって2回以上見た展覧会もあります。一度みれば充分かというと、これが必ずしもそうではありませんでした。2度、3度と見ていくうちに、それ以前に気付かなかった細部に自分なりの発見をしたり、確かに見たはずの絵でも2度目に来てみると大きさの記憶がごちゃごちゃになっているのに気付いたりと、いい面があると実感しました。会場が遠いとなかなか2度、3度と見ることはできませんし、第一お金もかかりますからね。私は友の会会員になったおかげで、その都度の金銭負担の心配をせずに、自由に出入りできましたので良かったです。

せめて、こうした記録だけでも残しておきましょう。


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