第94回 : 新・三津五郎襲名披露公演(2001年1月8日)

昨年に続いて、正月に歌舞伎を観てきました。信心の薄い私にとっては、初詣よりも向いているかもしれません(笑)。場所は、東銀座にある歌舞伎座で、ここで行なわれている今年の「寿 初春大歌舞伎」は、坂東八十助が新しい坂東三津五郎を襲名し、その披露公演となっています。気になる「口上」は、夜の部に組み込まれていましたので、私はそちらへ。

夜の部は、午後4時30分開演。演目は、
   一.) 源平布引滝 ― 実盛物語
          斎藤実盛
勘九郎 小万福助 葵御前菊之助 瀬尾十郎左團次
   ニ.)  口上 

   三.) 寿曽我対面 ― 工藤館の場
          曽我五郎
三津五郎 曽我十郎菊五郎 小林舞鶴芝翫 工藤祐経團十郎
   四.) 団子売

          杵造三津五郎 お福勘九郎
でした。

源平布引滝は、三津五郎の出番はありません。口上のあと、いよいよ三津五郎の舞台が楽しめます、寿曽我対面では曽我五郎を演じ、最後の団子売では杵造を踊ります。寿曽我対面は、仇の工藤祐経に三津五郎演じる曽我五郎が悔いついて行くところが見どころでした。源平布引滝も同様なのですが、どちらの演目も、仇役が将来必ず討たれてやるから、それまでしばらく待てという内容をもっています。こういう筋立て、ちょっと勘弁して欲しいと思うのですが、これは言っても仕方ないですね。やむを得ません。

さて、口上です。実は3年前の正月に、片岡仁左衛門襲名披露公演がやはり歌舞伎座で行なわれました。この様子はテレビでもオンエアされましたが、なかで左團次の述べる口上がユーモアたっぷりで面白く、実際に観に行ったものでした。今回はテレビをチェックしませんでしたので、出てくるといいなと思って行ったのですが、口上を述べに登場した歌舞伎俳優の中に、いました、いました\(^o^)/

左團次は、八十助が若い頃あることを言って囃したてたそうですが、三津五郎を襲名した以上は、もうそんなことを言ってからかうことはできない。これからは別のことを言って囃したてるというのです。これを聞いた会場は大爆笑に包まれましたが、さて、その「別のこと」とは次の3つのうち、どれでしょう??
   A. 金もいらなきゃ名誉もいらぬ、わたしゃ(三津五郎)も少し背が欲しい
   B. 逃げた女房にゃ未練はないが
   C. 幸せなら手をたたこう!
正解はB。詳しく書かなくとも、事情はサトっていただけますよね・・・。それにしても左團次という人、口上の天才と呼びたい御仁です。

三津五郎自身の口上も、重大な決意のこもったそれだったように思います。なにしろ十代目
(失礼!)坂東三津五郎を襲名したのですから。私は、歌舞伎をたまにしか見ないですから、特定の役者に思い入れをもつことはないのですが、とはいえ、こんなことを思い出していました。毎年夏になると、歌舞伎役者たちは松竹大歌舞伎と題して(だったと記憶してます)、全国各地を回ります。十数年前、私が生まれて初めて歌舞伎を見たのは、この巡業が練馬文化センターに来たときでした。そのとき、先代の三津五郎と当時の八十助が「連獅子」を踊ったのをかすかに覚えています。次に思い出すのは1996年夏のこと。歌舞伎座に「牡丹燈籠」を見に行ったときです。このとき八十助は、伴蔵という、この芝居の要になる役を演じて、大いに楽しませてもらいました。歌舞伎座の1月公演は26日までです。来月も演目を変えて、三津五郎襲名披露公演が続きます。八十助さん、今回、三津五郎となって、なお一層の活躍を期待したいですね。


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