第53回 : 「作曲家群像」展(1999年11月21日)

上野公園にある旧東京音楽学校奏楽堂では、毎年秋に特別展を催しています。今年は、(財)台東区芸術文化財団と日本近代音楽館の主催で「作曲家群像 ―― 新興作曲家聨盟の人々」が行なわれています。といっても、終了が間近に迫ってきました。私にとっても見ておきたいイベントでしたから、きょう(11月21日)行ってきました。

会期は11月28日(日)までですが、その間いつ行っても入れるわけではないので、少し丁寧に書き止めておきましょう。(入場料は一般200円、児童・生徒100円)。
11月22日(月) 休館
11月23日(火) 全日開館(9時30分〜16時30分)
11月24日(水) 休館
11月25日(木) 全日開館(9時30分〜16時30分)
11月26日(金) 半日開館(9時30分〜11時30分)
11月27日(土) 休館
11月28日(日) 全日開館(9時30分〜11時30分)

さて、私は過去にも数回、旧奏楽堂で行なわれた特別展に行ったことがあります。いずれも、特定の作曲家にスポットを当てた企画でした。確か、作曲家群像というかたちで企画された展示は初めてじゃなかったでしょうか(記憶なので、いま一つ確かではありませんけど)。
「新興作曲家聨盟」とは、1930(昭和5)年に旗揚げした作曲家の団体で、2回の名称変更を経て1940(昭和15)年に解散、戦後、日本現代音楽協会として再発足した団体なのです。日本現代音楽協会、略して「現音」と言えば、「そうか」という人も多いことでしょう。

で、いよいよ今回の展示についてです。
順路にしたがって見ていくと、はじめの方で諸井三郎たちのグループ「スルヤ」の機関誌や吉田隆子らの「日本プロレタリア音楽家同盟」の機関誌などが展示されていました。一瞬「あれ?」と思いましたが、考えてみれば、これらのグループから新興音楽家聨盟に参加した人たちがいるわけですから前史という感じで受け止めました。
新興作曲家聨盟については、1930(昭和5)年4月28日付の「聲名書」をはじめ、その後に行なわれた試演会や作品発表会のチラシやプログラムなども多く展示されています。これらの中には、雑誌『音楽世界』の小さな広告らしきマークが描かれているものがありますが、こう事実は実物を見て初めてわかることでした。
聨盟が活動し始めてからあと、外国からタンスマンやチェレプニンといった音楽家が来たときには、会食をともにしたりして情報交換につとめたりもしたようです。その時の演奏会プログラムや記念写真などもありました。テェレプニンは、ロシア、中国、日本の作曲家の作品を出版しています。以前から「チェレプニン・エディション」の存在は知っていましたが、今回、展示会場の一角にまとまった数の楽譜の表紙を見ることができ、中にはとてもかわいい表紙に仕上がっているもの(確か、小船幸次郎作曲『日本の子供へ送るピアノ曲』)もあって、けっこう楽しめます。
そう、意外だったのは吉田隆子の肖像画が一点展示されていて、その絵が何ともモダンな姿に描かれているのには驚きました。

会場では、資料「展示資料一覧」を無料で貰うことができます。「それだけ?」という方には『作曲家群像 ―― 新興作曲家聨盟の人々 資料集』という1000円の資料が用意されています。日本近代音楽館の手になるもので、内容は、
『プロフィール27 ―― 作曲家群像 新興作曲家聨盟の人々』(32ページ)
『年表 ――新興作曲家聨盟と作曲家たち』(4ページ)
「新興作曲家聨盟第一回試演会」プログラム 1930(昭和5)年6月16日(複製)
新興作曲家聨盟第一回作品発表会「新興作曲家の集ひ」プログラム 1930(昭和5)年11月22日(複製)
「日本現代作曲家聨盟第一回作品発表会」ちらし 1936(昭和11)年12月9日(複製)
「日本現代作曲家聨盟第三回作品発表会」プログラム 1937(昭和12)年6月4日(複製)
「紀元二千六百年奉祝 日本現代作曲家聨盟創立十周年記念作品発表会」ちらし 1940(昭和15)年5月(複製)
でした。以前、特定の作曲家を特集していたときには、こんなにバラエティに富んだ資料集ではありませんでした。ことにプロフィールは、取り上げられた人数が27人と少ないのが残念ですが、写真や主要作品表まで含んだ力作です。

後援団体は、日本現代音楽協会と国立音楽大学。前者は、新興作曲家聨盟が現音につながっていることを考えれば容易に理解できますね。では、後者は?
その答えは次回、あらためて書きたいと思います。


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