第34回 : 『京都国立近代美術館ガイドブック』(1999年9月4日)

先月の12日に京都国立近代美術館に行きました。「近代京都画壇と『西洋』」という企画展が見たかったためです。この企画展については正確な会期を含めて、回を改めて書くつもりです。残念ながら、いま一つ企画の意図が飲みこめず帰ろうとした矢先「上の階の常設展示もどうぞご覧ください」という一言に誘われて、階上に。京都へ"上洛"する身としては、常設展とセットにして見ると、企画展の内容も少し理解が深まったような気がします。そのまま帰らなくて良かった・・・。
(なお、私が見た「京都国立近代美術館常設展」は8月29日までが会期で、すでに終了しているようです。悪しからずご了承ください。)

常設展を見た時の印象をさらに助けてくれたのが、ここに取り上げる『京都国立近代美術館ガイドブック』でした。常設展示の会場付近に置いてあって「非売品」(要するにタダ)。表紙には「美術との出会いがきっと楽しくなる所蔵作品基礎知識」と書かれてあります。A4判、64ページに折込の年表付き。中身は、カラーの図版もふんだんに織り込まれた見ごたえのあるものでした。

主な内容は、「日本画」「洋画」「工芸」「写真」「版画」「彫刻」「書」「素描」「西洋美術」と分かれます。たいてい、"明治""大正""昭和前期""第二次大戦後"といった区分で説明が書かれます。簡潔な解説は読みやすく助かります(ただし戦中のことについては記述されていないと思っていいくらいです)。特筆したいのは、本文に作家の氏名にふりがなをふり、生没年もていねいに記していることです。これは索引でも徹底していました。たとえば浅井忠という作家を、つい「あさい・ただし」と読んでしまうこともありえましょうが、こうした配慮が行き届いていれば「あさい・ちゅう」と読めますね。そして「西洋」との関わりも項目によっては短く記述されています。

京都国立近代美術館の収蔵作品だけあって、ガイドブックに登場する作家は京都にゆかりの人たちが多いようです。強いて不満を挙げれば、東京や大阪、その他と京都の画壇との違いが、そうはっきりとは見えてこないことでしょうか。

私が見た常設展では、ガイドブックに紹介されていないものも多数含んで展示されていました。私は展示を見た後で、ガイドブックのページを繰りもう一度記憶を呼び起こしたわけですが、けっこういい手助けになりました。

各地で美術館ができています。こんなガイドブックを作る予算が取れるといいですね。
ともあれ、価値ある一冊でした。

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