第1回 : ワシントン・ナショナル・ギャラリー展(東京都美術館)
オルセー美術館展、ルーヴル美術館展、テート・ギャラリー展といった企画を毎年重ねてきた東京都美術館に、今年はアメリカのワシントン・ナショナル・ギャラリーから85点の絵画がやってきました。[7月11日(日)まで。(月)休み。]
印象派以前が20点(コロー、クールベ、ブーダン、マネほか)、印象派が30点(バジール、ドガ、モリゾ、ルノワール、モネ、ピサロ、シスレーほか)、後期印象派と新印象派が11点(セザンヌ、ゴッホほか)、世紀末から20世紀へが16点(ヴュイヤール、ボナール、ドランほか)、そしてオールド・マスターズの絵画が8点という嬉しいオマケ付きの内容です。
会場の一点一点の絵画には解説のパネルが用意されていません。でも、音声ガイド(有料)で30の作品と4つのトピックに対して説明が聞けます。私もこれを首からぶら下げて見て回りました(1999年5月28日)。
印象に残った作品を2、3挙げてみましょう。
マネ『悲劇役者(ハムレットに扮するルヴィエール)』(1866年)。構図や色使いのシンプルさもさることながら、ハムレットの苦悩がにじみ出ているような顔の表情は忘れられません。
ルノワール『ポン・ヌフ、パリ』(1872年)。普仏戦争が終わった翌年の作品です。パリのあるカフェから、眼下に見える橋を通る歩く大勢の人々を描いていて、夏の日差しが降り注ぐ穏やかな画面となっています。思わず笑ってしまうのは、画面右下と左下のあたりに描かれている男性で、麦藁帽子をかぶりステッキをもっている人のことです。実はルノワールの弟だそうで、兄がうまく絵が描けるように通行人に協力を頼んだらしいです。
最後にフェルメール『手紙を書く女性』(1665年頃)。画面中央の女性が着ている衣装がひときわ目立ち、手にペンを持ったまま、ふとこちらに顔を向けた瞬間がとらえられているように見えます。その目は何かを語っているように見えます。女性の後ろにあるのは絵でしょうか? フェルメールの作品の中に描かれる絵画は、なんらかの寓意をもっていることもあるらしく気になったのですが、あまりにも暗く塗りつぶされていてわかりません。この作家独特の落ち着きを感じさせる作品でした。
【1999年6月1日・記】


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