13 早坂文雄:室内のためのピアノ小品集
早坂文雄:
(1)室内のためのピアノ小品集(1941)
(2)恋歌 Nos.3, 4(1946)
(3)ノクターン(レント)(1936)
(4)写真(ポートレート)(1940)
(5)オルゴール(1945)
演奏 
高橋アキ(ピアノ)
 [CD]  CAMERATA      CMCD-28061[CD]       ¥2,940(税込)        
今回取り上げるのは、去る9月20日にリリースされたばかりのCDで、収録曲はすべて世界初録音だそうです。

メインに置かれているのは(1)の《室内のためのピアノ小品集》で、全17曲でできています。もともとこの作品は、コンサートで演奏されることを想定して作曲されたというよりも、ひとり室内でつまびくのが相応しいといった感じのものみたいなのですね。これら17曲はストーリー性があるわけではないので、全体を通して聴くもよし、好きな曲をピックアップして聴くもよし、です。落ち着いた雰囲気を持ち雅楽的な趣もある第1曲、軽く弾むところが心地よい第2曲、全音階的な動きが特徴の第4曲、軽快でモダンな印象を受ける第8曲、弱奏の響きが美しい第11曲、すこし中国を思わせる第12曲などなど、私は、自分の好みの曲をみつけていく楽しみを味わいました。余談ですが、この作品は全音から2002年に楽譜が出版されました。

(3)は今回収録された作品のうち、作曲年代のもっとも古いものです。音のうごきが「どこそこ風(日本風とか中国風とか)」という枠に当て嵌まらない、私にとっては、少し不思議な感覚にとらわれた作品でした。ついで(4)は、亡くなった弟の写真に寄せた作品で、のちに《ピアノ協奏曲》の第1楽章の原型となりました。じっくり聴ける作品でした。

(5)は戦後間もない1945年12月に作曲されました。わりと軽い感じの作品。(2)の2曲は1946年の作。うちNo.4は演奏に8分ほど要しますが、はじめのうちは癒し系とも思えるゆったりした音楽がつづきますが、徐々に変容されていき、さいごは静かに曲が閉じられます。全体を通して、味わい深いディスクだと思いました。
【2004年10月5日】


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