10 昭和のヴァイオリン・ソナタ選
(1)外山 雄三: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(1964)
(2)箕作 秋吉: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ Op.15-1(1935)
(3)尾崎 宗吉: 提琴と洋琴のための奏鳴曲第三番(1939)
(9)吉田 隆子: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ニ調(1952)
演奏
  荒井英治(バイオリン) 白石光隆(ピアノ)
 [CD]  ナミ・レコード    WWCC-7426[CD]          ¥2940(税込)             

東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターである荒井英治さんの新しいCDがこれです。私がもった疑問は、どうしてこのCDが生まれたのだろう? ということでした。この答えは荒井氏自身がCD解説書の冒頭で記しています。それによると、荒井氏が師事した鈴木共子さんが戦中から戦後の十数年の間に10作品以上の[日本人作曲家の]ヴァイオリン・ソナタの初演に携わっていたことを知ったからだといいます。それは演奏家がさまざまな作曲家から信頼されていた証だというわけです。なるほど、そうでしょうね。その中から4曲を選んでCDにしたわけですが、興味深い成り立ちだと思います。

作曲年代は1935年から1964年と、ざっと30年という長さがあるのですが、どの曲もどこかに民謡音階風の動きを含んでいるのが一つの共通点です。それだけが原因といって良いかどうかはわかりませんが、1935年(二・二六の2年前)に作曲された箕作のソナタと1964年(東京オリンピック開催の年)に作られた外山のソナタにいたる4曲は、いずれかが古色蒼然としたソナタで、別のあるものがすごく前衛的だといったような幅の広さは感じません。

尾崎の《奏鳴曲第三番》だけが第1楽章<夜曲>、第2楽章<トッカータ>という2楽章構成ですが、あとはすべて3楽章。ですが、よくある「速い〜ゆっくり〜速い」というものは箕作作品がそれに当て嵌まるだけで、外山と吉田の作品はそうではありません。ちなみに、箕作の作品は1935年とありますが、このディスクの演奏は戦後の改訂版によっていると記されています(片山杜秀氏による曲目解説は、読みごたえがあります)。どの曲も、演奏は適度にロマンティックで、音色はブリリアント。そしてピアノとのアンサンブルもすばらしく、じっくりと聴きこめるディスクだと思います。

【2002年12月16日】


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