休日の山歩き 21 谷川岳 Tanigawadake
[上信越] 谷川岳(1977m) 西黒尾根から登る
2009年10月12日(月)
ラクダの背付近から望む谷川岳 トップページ
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ラクダの背付近から、これから登る
西黒尾根と谷川岳山頂を望む。

【紅葉の谷川岳へ】
前回皇海山で大変な目に遭ったから、次は楽に登れて、人がたくさん行く山に登ろうと思った。そして谷川岳にした。ガイドブックでは、往復ともロープウェイに乗り天神平から天神尾根で山頂を往復するものと、往路のみロープウェイに乗り山頂から西黒尾根で下山するものが紹介されている。しかし、西黒尾根の長い下りは足の爪が痛くなりそうだし、この長い尾根は登ってこそおもしろいのではないかと考えた。コースタイムの合計は西黒尾根を登る方が20分ほど余計にかかるだけだ。また、帰りの高速道路の渋滞を考えると、電車とバスで行くことにも魅力を感じたが、登山開始が午前9時前後になり、天神尾根を登る場合はそれでも良いが、西黒尾根を登ると山頂に着くのが午後1時頃で遅すぎる。ここはやはり車を活用することにし、折しも紅葉シーズンで人出が予想されるから、ともかく早く現地に着くことにした。10月の体育の日を含む3連休になり、天気は3日目の月曜日が最も良さそうだと見極めた。

【西黒尾根を歩き出す】
休日の月曜日の午前4時、まだ暗い中、車で自宅を出発し、所沢インターから関越道に入った。前回皇海山の時より1時間以上早く、まだ下り車線の渋滞もない。1時間余り快適に走行し、水上インターを6時前におり、土合駅前を過ぎて谷川岳ロープウェイの駐車場に6時10分過ぎに着き、外の駐車場に車を止めた。この時間で既に人々の動きがあり、程なく屋内駐車場への誘導が始まった。身支度をして菓子パンで腹ごしらえをしてから車を離れ、ロープウェイ駅に立ち寄ると、ロープウェイが動き出すのは午前7時だろうか、それを待ってもう登山者の列ができている。それを後目に、6時35分、車道歩きを始めた。こちらの方も10人以上の登山者が前後して歩いている。10分余りで西黒尾根登山口に着き、暑くなりそうなので防寒着を脱いで長袖シャツだけになり、樹林の中のいきなりの急坂に取り付いた。
今回の荷物はデイパックにまとめ、水は多めに3.5Lも持ち、全部で8kg余りになっているが、テント携行の荷物と比べれば半分の重さにすぎず、身軽でどんどん登れる気がした。木漏れ日が差し始め、好天が期待された。鉄塔の下で10人ほどの人が休んだり上着を脱いだりしていたが、休む必要もなかったので、そのまま歩いた。樹林の中の急坂の後、小さなピークを経て緩やかになり、再び石ころの多い坂道になり、8時頃、樹林帯を抜けて左側の展望が開けた。谷を挟んで向こうの山の中腹に天神平のロープウェイ駅が見える。見下ろしているから、既にこちらの方が高くなったようだ。

西黒尾根登山口 西黒尾根 石ころの急坂 西黒尾根から望む天神平と天神尾根 西黒尾根から望む谷川岳
西黒尾根 登山口 同 石ころの急坂 西黒尾根から望む天神平(左)と天神尾根 西黒尾根から望む谷川岳

【展望の良い稜線登り】
その先で岩場の道が始まり、いきなり鎖場だ。鎖を一つ越えると右側の展望が開け、秋晴れの空に谷川岳の山頂を仰ぎ見るようになった。また後方を振り返っても形の良い山が聳えている(朝日岳)。いくつかの鎖場を経て道も落ち着いてきて、「ラクダの背」、次いで「西黒尾根ガレ沢の頭・厳剛新道」と標示された場所になった。ここからはガレた急坂になり、黄色のペンキに導かれながら、なおもいくつもの小突起を越えて岩の稜線を登る。岩場の道になってからここまで、同じ方向の登山者10人ぐらいと出会い追い越してきたが、随所の小突起で振り返ると、それらの人々が歩いているのも良く見下ろせる。
平べったい大岩や、ザンゲ岩とされる地点(標識が道端に立てかけられていたというか、転がっていたので、どこがザンゲ岩か分からなかった)を過ぎると笹原が広がる。左手には天神尾根も近づいてきて、多数の登山者が縦一列で急坂を登る様子が見える。「西黒尾根 中級者以上 初心者下山不向き」の標識(これも地面から抜けて立てかけられていた)が、長い稜線の登りもあとわずかであることを物語り、石積みの塔の先で天神尾根と合流し、多数の人の列に溶け込み、最後の登りで谷川岳トマノ耳に達した。9時45分で、ロープウェイ駅から一気に登って3時間10分になり、コースタイムの4時間はかからなかった。

ラクダの背を見下ろす 西黒尾根の峰の一つ 西黒尾根から天神尾根を望む
ラクダの背やその上の峰を見下ろす 峰の上に三脚を立てているカメラマン 天神尾根の登山者の列

【谷川岳山頂を楽しむ】
狭い岩場の山頂は360度の展望だ。トマノ耳から天神平を見下ろすと、右手に直線的な稜線が伸びており、その先でうねりながら万太郎山を経て、去年登った仙ノ倉山と平標山へと続いているようだ。山頂にはなお双耳峰のもう一方のオキノ耳が立ちはだかるので、そちらに進むことにする。はい松や笹の間の狭い道を一旦下って登り返し、オキノ耳に立つ。こちらも展望は素晴らしい。さて昼食だが、山頂の岩場は狭いので、稜線をさらに少し進んだ所で1人分のスペースを見つけ、弁当を広げた。
この稜線は、上越国境(群馬・新潟県境)と一致するから、太平洋と日本海の分水嶺でもあるのだろう。越後側はたおやかな笹原の斜面だ。上州側は切り立った岩壁で、先ほどのトマノ耳が壁に張り付いてずんぐりと頭をもたげ、その後ろに登ってきた西黒尾根が谷底まで続いている。いつまで見ていても飽きない展望だ。稜線の少し先に鳥居が見えるので行ってみると、「富士浅間神社奥の院」と表示され、小さな祠があり、ここも越後側の展望がよい。
ここから帰路に就いた。狭い山頂稜線は、オキノ耳まで戻る手前から登山者がますます多くなってきていた。この中には、天神尾根を登ってきた多数派のほか、早朝から西黒尾根を登ってきた数十人の”同志”や、その他の稜線を縦走してきた健脚が交じっているはずだが、もはや”同志”を見分けることはできなかった。

トマノ耳 オキノ耳 トマノ耳からオキノ耳を望む
トマノ耳 オキノ耳 トマノ耳からオキノ耳を望む
オキノ耳とトマノ耳 トマノ耳 奥の院と一ノ倉岳方面を望む
オキノ耳とトマノ耳 トマノ耳 奥の院の鳥居を望む その先に一ノ倉岳
トマノ耳と西黒尾根 トマノ耳と国境稜線
トマノ耳と西黒尾根 背後に天神平 トマノ耳と国境稜線

【突然の異変】
交互通行の渋滞にもまれながらトマノ耳にさしかかり、素通りしようかと思ったが思い直して、山頂標識のある所に立ち寄ろうと、その方向に2、3歩歩いたところで、急に左脚のふくらはぎに痛みがあり、倒れ込んだ。初め何のことか分からず、後ろを歩いていた人のストックが強く当たったのかと思ったが、そうではなく、体の内部から生じた痛みだった。ふくらはぎが腫れてきており、普段の筋肉痛の最も重傷の時の痛みを一点集中でさらに3倍くらい強くしたような痛みだ。左の足首を曲げるとふくらはぎが伸び痛みが走る。左の足首を曲げないように歩こうとするから、右足を前に踏み出せない。下り坂は何とか歩けそうなので、下山を開始した。11時35分で、山頂で1時間50分過ごしたことになる。

平標山方面 奥の院付近から望む 天神尾根 天神平
奥の院付近から望む 天神尾根 天神平

【天神尾根でともかく下山】
肩の小屋から先は、天神尾根の石ころの多い一本道の下りが続き、多くの人の流れに乗って歩けた。熊穴沢避難小屋を過ぎ、平坦な木道やアップダウンのある階段の道になると、痛みのせいで歩きにくくなり、後から追いついた人に道を譲ってゆっくり歩いた。木道で一度足首を曲げてしまい、激痛があった。道は水が出て泥んこだった。午後1時半、天神平に着くと、圧倒的に多い観光客の中で、登山者が少数派になってしまった。靴の泥を落とし、買い物をして、下り片道のロープウェイに乗った。下の樹林が紅葉し始めてきれいだった。2時半過ぎ、車での帰路に就き、往路と同じ道を引き返し、途中渋滞があったが、6時半過ぎに無事帰宅した。オートマ車だから足首を動かせない左足は使わずに済んだ。
今回は、前回に続き、今まで経験したことのない異変に遭ってしまった。しかし、脚に痛みが生じたのが登りの途中などでなく、山頂から下りに差し掛かろうとする時で、自力で歩けたので、幸いだった。なぜ急にこうなったのか分からないが、西黒尾根の登りで飛ばしすぎたのが良くなかったのかも知れない。

【その後の顛末】
翌日、病院の整形外科で診てもらった。症状は、肉離れ、つまり、筋肉の部分的な断裂だった。医師の診断は、湿布をして腫れを抑える薬を飲み、全治3週間で完全に直るまで運動は禁止、1週間は飲酒も禁止(アルコールの影響で損傷した部分に血が通わなくなるから)、だ。どこの山に登ったか聞かれ、谷川岳と答えると、もう体が若い頃と違うのだから、運動する前にストレッチをよくするとか気をつけるように、と言われた。
谷川岳という名前は、普通の人からはすごいところだと思われ、肉離れを起こしたのも無理はない、というふうに思われてしまうようだ。(いえ、ロープウェイに乗って誰でも楽に登れる山なんですけど・・・でも私はロープウェイに乗らずに下から登ったんですけど・・・)

【行程】
4時自宅発⇒4:40所沢IC入る⇒5:54水上IC出る⇒6:13谷川岳ロープウェイ駐車場着

6:35ロープウェイ駅→6:43登山指導センター→6:49西黒尾根登山口→7:02鉄塔→8:00岩場へ→鎖場→8:28ラクダの背→8:33厳剛新道分岐→黄色ペンキ→9:27ザンゲ岩→9:41天神尾根と合流→9:45谷川岳トマノ耳9:52→10:02谷川岳オキノ耳10:45→10:50奥の院10:56→11:05オキノ耳11:10→11:26トマノ耳11:36→11:39西黒尾根分岐→11:43肩の小屋11:48→12:17天狗の留まり場→12:43熊穴沢避難小屋→13:08天神峠分岐→13:15土合分岐→13:26天神平→ロープウェイ→14:20駐車場

歩行時間 6時間51分(登り3時間10分、山頂1時間51分、下り1時間50分)
標高差 ロープウェイ駅750m→谷川岳1977m→天神平1310m=+1227m-667m
歩行中水消費 約1.3L

14:40谷川岳ロープウェイ駐車場発⇒15:01水上IC入る⇒渋滞約1時間半⇒17:52所沢IC出る⇒18時半自宅着

地図
【参考資料】
山と高原地図「谷川岳」(2009年版)、関東の山あるき100選(昭文社1998年)、関東日帰りの山ベスト100(実業之日本社2007年)

2009/10/18整理、10/20修正

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