episode 3「怒濤のイタリア-メキシコ戦」ビッグアイ 
ついに来ました、ビッグアイ。
大分スタジアム・ビッグアイ。まだ観客の入りは、半分程度。目立つのは、イタリアユニフォームを着た日本人の姿。我々の座席の周囲も、そんな人たちばかり。アミーゴたちは何処?と探してみると、対面のメインスタジオ側や右側のゴール裏に固まっている。しかも、太鼓や笛や楽器などの鳴り物や、アステカ文明みたいな仮面やかぶり物をつけて盛り上がっている。キックオフ前から大騒ぎ。
大きな目玉ということです。
ビッグアイは、スタジアムの屋根部分が開閉式で、大きな瞳のように見えることから名付けられた。天気予報では雨だったが、この日は晴天。スタジアムの屋根が閉まることはなかった。メキシコサポーターから、何度もウエーブが起きる、が、スタジアムを一周せず。まだまだノリ悪し。それでも、懲りずにはしゃぎまくるメキシコサポーター。
スポンサー様、大事。
スタジアム内の自動販売機はすべて封鎖。W杯スポンサーのコカコーラ、マクドナルド、バドワイザーの売店のみ。いずれも長蛇の列。我々は小型紙パック ストロー付きのウーロン茶を持ち込んだ。入口で没収されず。しかし、紙パックでも2階座席から思い切り投げたら、当たると痛いぞ。オフィシャルパンフレットが¥2,000。ぼったくり状態である。
飲んで騒ぐメキシコサポーター。
キックオフ前のアトラクションで、地元の小学生サッカーチームの試合が行われた。意外とオモシロし。我々の座席から、ピッチ上の人物はかなり小さいが、小学生だからさらに小さい。ちょこまか動いて、いっちょ前にシュート!メキシコサポーターは、関係なく騒いでいる、踊っている、歌っている、そしてテキーラを飲んでいるに違いない。酒類持ち込み禁止だろう。
「キャー!トッティー!」
両チームの選手がアップのために登場。メキシコチームにサポーターからやんやの喝采。イタリアチームには、(特にトッティ)フラッシュの嵐。娘は早くも、座っていることに飽き始める。エサを、失礼、おやつを与えて黙らせるが、おやつがなくなると座ってられない。妻が一計を案じ、「トッティー!」とか「王子!」とか、「カンナバーロ!」とか選手名を叫ばせてみる。かなりご満悦。「ザンブロッタ!」とか「トンマージ!」とかマイナーな選手もイケルようだ。
跳ねる緑のユニフォーム。
いよいよ、選手入場。場内は一気に盛り上がる。テレビで中継されているかな。メキシコサポーターは、なぜかすごい勢いで飛び跳ねてる。向かい側のスタンドで緑色のユニフォームが、虫みたいに跳ねる、跳ねる。気持ち悪い。いよいよワールドカップをこの目で見ることに。
食べ過ぎだって、あなたたち。
前の席の人。左のお父さんと、右のお母さんと、さらに写真には写っていないが娘さんが二人。席に着くなり、バクバク食い始める。売店で買ったものや、持ってきたおやつをひたすら食べる。食べていないときは、このお母さんは双眼鏡で選手を見ている。どうやらイタリアの伊達男たちを見ているようだ。イタリア選手がコーナーキックなどで近寄ってくると、娘さんはカメラをバシバシ。絶対に写らないって。
見たぞ、ヘディングシュート。
試合は、拮抗状態。というか、どちらも攻め手にかける。ただ、メキシコは、右サイドからの攻撃を重視し、時折、突破に成功する。イタリアは、トッティ、ビエリらが個人技でシュートを放つが、まったく入らない。入る気がしない。これは、メキシコの方が先に点を取るぞと思っていると、前半34分、ブランコからボルヘッティに渡り、ヘディングでメキシコ1点。場内大爆発!特にメキシコサポ。みんなが立ち上がったものだから、場内ホコリが舞う。咳き込む観客たち。
娘はオネムで大変です。
前半終了直前、眠たくて何もかもがイヤになりグレていた娘が「おしっこ」と。ハーフタイムの混雑を避けて、トイレに向かう妻と娘。残り時間は5分。オイラはワールドカップをはじめてゆっくり観戦した、一人で。メキシコの1点リードで前半終了のホイッスル。雪崩を打ってトイレに、売店に、喫煙所に向かう観客たち。妻と娘は帰ってこれず。仕方なく、カバンを持ち、席を立つオイラ。この時、心は決まっていた。帰ろう、やっぱり。眠たい娘を、親の勝手で連れ廻すのは良くないさ。
さらばビゥグアイ。
ハーフタイムにスタジアムを後にする。一度出ると戻れないと係員に言われる。約45,000人の観客の中で、我々が一番先に帰るのかもしれない。外には、チケットがなくて入れなかった人がいた。一人の外人のネーチャンが「チケットください」と近づいてきた。半券がないから無理だと言うと、「ワタシノトモダチ、ハイレマシタ」。チケットには我々の名前が書かれてる記念の品だ、あげられない。断るとオネーチャンは、「ニッポンジン、ユウズウ キカナイネ」という顔をして去っていった。
オレのデルピエロが同点ゴール。
シャトルバス乗り場までの長い道のり。娘をなだめすかし
抱っこしたりおんぶしたり歩かせたりしながら進む。
バス乗り場に着く。当然空いている。
「おや、もう帰るの」という視線。バスの中には入れたが、
もう少しお客さんが集まるまで発車を待ちたいとのこと。娘は、もうスヤスヤ。
運転手さんが車内のテレビをつけてくれる。すぐそこで行われている試合を画面で見る。
イタリアはこのまま負けると、1次リーグ敗退になる。
そのうちに2組4名の観客が来る。まだバスは出ない。
しかし、彼らが別府駅からの電車の都合があるということがわかり発車することに。
テレビが消される。車内灯が消える。
大きな観光バスに少しの乗客。警察官の誘導に従って、バスは待機場を出る。
まるでVIP気分。
妻も寝ている。オイラは娘が揺れないようにそっと支える。
さらば、ビッグアイ。さらば、ワールドカップ。
バスは高速道路に入り、一路、別府へ。
車内でiモードを見る。結果は…ん?デル・ピエーロのゴールで同点!
しまった、そんないいシーンを見逃すなんて。
Visited 02.6.13 (C)YAJIKITA NET
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