第18回「2005年春・京都〈義経編〉」宇治 
久しぶりの故郷、京都である。アメリカで暮らしている旧友 Mrs.Ohanの里帰りに合わせて、旧交を温めながら、観光も楽しんじゃおうという企画である。お花見も終わり、GW前の静けさを狙っていったのだが、さすが日本が誇る観光都市、いつ行っても人は多いのだ。

宇治橋が生まれ故郷です。
Mrs.Ohanとは宇治市で待ち合わせ。久しぶりにやって来たら、道路や公園など公共施設が次々に造られ、見違えるよう。源氏物語宇治十帖で知られる宇治は、平安時代、京都の貴族から見れば、あの世に近い浄土のイメージだったはずだが、オシャレなタウンと化している。子供の頃、親に「お前は宇治橋で拾ってきた子だ。言うこときかないと返してくるぞ」と言われ、泣いたものだ。京都の子のほとんどは、そう言われてるはずだ。

10円玉のモデルが鳳凰堂。
待ち合わせ時間より早く宇治に到着した我々は、とりあえず、宇治と言えばここ!平等院へやって来た。だが、本尊の国宝阿弥陀如来座像の大修理中で、10円玉の絵柄でおなじみの鳳凰堂には入れない。前回の京都旅行の時にも、金閣寺が修理中で見られなかった我々。ついてない。しかし鳳凰堂への入堂には拝観料600円とは別に500円が必要なので(高いねえ、京都の寺社は)、まあいいか。
ありがたいのか、ありがたくないのか。
その高い入場料のおかげか、境内に近年、平等院ミュージアム鳳翔館という立派な宝物館ができている。そちらでは修理中の阿弥陀如来座像の胎内から取り出した“月輪 蓮台”を初公開していた。半世紀ぶりに人の目に触れるという貴重なものだ。月輪(がちりん)は仏の清らかな心を表す直径30センチ程度の木製円盤。それを乗せる台が蓮台(れんだい)。きっとありがたいものなんだろうけど、土鍋みたい。としか思わなかった。

霊界Gメンの頼政公。
ところで、今年のNHK大河ドラマは『義経』。ここ宇治は幾たびも源平合戦の舞台となった。境内には、源頼政の自刃場所や墓がある。心配になるぐらい激痩せの丹波哲朗さんが演じた頼政は、鳳凰堂の側のこの芝生で切腹したとか。当時も貴重な建物だったであろう鳳凰堂の側で切腹することはないだろうに。ちなみにドラマでは頼政は屋敷の縁側で、至近距離から阿部寛演じる平知盛に弓で射抜かれ首に矢が刺さって死んだ。おいおい、その至近距離で弓矢は大人げないだろ、阿部ちゃんと思った。当然のように、宇治のお土産は義経グッズが多かった。頼政グッズは、なかったなあ。
茶そばはお茶のそばです、きっと。
平等院を出て参道で昼食にしようと散策。宇治といえばお茶、お茶を煎じるいい香りが参道の商店街に漂う。しかし、抹茶系の嫌いな娘は「くさい、くさい」と大騒ぎ。彼女は抹茶アイスさえ食べない。一軒の食堂に入る。お茶といえば、茶そば。ということで茶そばの盛りを食べる。麺類好きの娘は「わーい、おそば、おそば。おいしい、おいしい」と嬉しそうに一人前をペロリ。しかし、食後にお茶のそばだったんだよと教えてやると、いやな顔をしていた。そばが緑色なのを見た時に気がつけよ!

武士の風上にもおけない話。
食後は和菓子屋で名物の茶だんごを購入。宇治川の塔の島にある公園で食べる。抹茶嫌いの娘もおいしそうに食べる。えっーと、だんごも緑色なんですけど。塔の島は宇治川の中洲にある島で、平家物語の宇治川先陣争いの碑がある。木曽義仲軍と宇治川を挟んでにらみ合う源義経軍。このとき、義経軍の武将、佐々木四郎高綱と梶原源太景季が愛馬もろとも宇治川にざんぶと分け入り一番乗りを競った。どちらがかは忘れたが、馬の腹帯が緩んでるぞと嘘をこいてまで勝ったという、武士の風上にもおけない話だが、平家物語の中でも名場面として知られている。なんで?
だんご談義、天国編。
写真の茶だんごは小粒で美味しい。次に、みたらし団子屋を発見!みたらし団子とは、串に刺しただんごに砂糖醤油を絡めたものだが、関西と関東では味付けが違う。関西は砂糖味が勝り、関東では醤油味が勝る。まあ、砂糖味が平氏で、醤油味が源氏だな。関西出身のオイラはもちろん平氏味のファンだが、現在住んでいる愛知県では源氏味ばかりで諸行無常を感じていた。もちろん購入して食す。関西風は、たれにつけた後、きな粉をまぶすとさらにグッドなのだが、この店では、そこまではなかった。京都市内だときな粉まぶしも多いのだが、とブツブツ言いながら食べる。でも、美味い。

植物園は花盛り。
Mrs.Ohanとその息子との待ち合わせ場所は、宇治市植物公園。エーッ!こんな立派な植物園、オイラが京都に住んでいる頃にはなかったぜ!宇治市南部の丘陵地、山城総合運動公園(太陽が丘)と隣接し、入場料大人500円を払っても惜しくない素晴らしさ。年間パスポートは1,500円。近所の方はそちらの方が断然おトク。園内には色とりどりの花や樹があり、散策が楽しい。ただ、子ども向けの遊具がほとんどなく、大きな広場もないので、どちらかというと大人向けの施設。八重桜が満開で、樹の下で昼寝でもしたい気分。温室やタペストリーと呼ぶ立体花壇など見どころも多し。
だんご談義、地獄編。
久しぶりに会ったMrs.Ohanは、あの頃と全然変わらず。いやー、しかし、お互いに子ども連れで会う日が来るだなんて、想像も出来なかったけどね。
Mrs.Ohanは、我々のためにわざわざ、宇治の和菓子屋で花見だんごと茶だんごを買ってきてくれていた。また、だんご!だんご地獄か。彼女が高校時代にバイトをしていた店のだんごで、もちろん美味しいのだが、数がかなりある。その場でも食べたが食べきれず、相談の上、いただいて帰ることに。これが本当の談合だ。

一休軒をたずねて三千里。
Mrs.Ohanと別れて、我々は本日の宿へと向かう。京都市左京区岡崎にあるホテル。そこを選んだ理由は、この潰れてしまったラーメン屋の近所だからなのだ。というか、潰れたなんて知らなかった。かつて京都に住んでいる頃、我々夫婦が何度も通ったラーメン屋『一休軒』。佐賀にある有名なラーメン屋で修行し、暖簾分けをしてもらった店主が開いた店。あっさり系のとんこつ・細いストレート麺で、すんごくおいしかった。オイラのラーメン人生No.1の美味さで、京都を離れてからも何度か食べに来ていた。
カウンターしかない狭い店で、子ども用のお椀などないからと、妻はわざわざ家から用意していったのに。子どもの世話をしている間に自分の麺がのびるのは許せない。だから、先に夫と子どもの分を注文し、その後、おもむろに自分の分を時間差注文しようと妻は考えていたのに。晩飯は一休軒!が今回の旅行のテーマだったのに。店は長期間閉まったままの様子。人の良さそうな大将はどうしただろう。元気だといいのだけど。一休軒について何かご存じの方、情報をお待ちしています。(京都一休軒 住所/京都市左京区鹿ヶ谷上宮の前町20-1 市バス真如堂前、歩道橋近く)。仕方がないので、晩飯は銀閣寺道バス停近くの串八へ。京都人ならおなじみの居酒屋だ。最近の居酒屋は、子ども連れでもウエルカムなんだね。だって、お子さま用ジュースってのもメニューにあったよ。こうして、京都の夜は更けていった。
to be continued

 
Visited 05.4.23 (C)YAJIKITA NET

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