第16回「夢と魔法の王国〈前編〉」東京ディズニーリゾート
なんてったって“夢と魔法の王国”である。きっと子どもたちも大喜びしてくれるに違いない。何よりディズニーランド好きの妻が大ハッスル。有給休暇を2日間も取って、祖母まで誘って、オフィシャルホテルのひとつ『ディズニーアンバサダーホテル』で、朝食にはシェフミッキーも予約して、2泊3日の旅にいざ出発なのである。

ミッキーマウス VS 鉄腕アトム。
約10年近くぶりの東京ディズニーランド。その頃はまだディズニーシーもなかったし、名称も東京ディズニーリゾートではなかった。2004年、今年の夏は映画『TOY STORY』のキャラであるバズ・ライトイヤーの新アトラクションとパレードが大注目である。
イラクでアメリカが無体な真似をしているのに、アメリカの象徴に来てしまった。そんな反省と抗議を込めて、日本が誇る(ディズニーが恐れる、パクる)手塚治虫の鉄腕アトムTシャツを着て入場。ざまあみろ! 入口で「お客様、ちょっとそのお姿では」と入園拒否も覚悟。その時はせめてミッキーマウスに一太刀浴びせてと固い決意で突入。だが、何も言われず入園できた。少し、拍子抜け。こんなことなら娘にキティちゃんのTシャツを着せてもよかったか。ちなみに子どもたちの雨合羽は、ピカチュウとエルモを用意した。やる時はやるぜという意思表示である。
恐怖のキャラクター地獄。
入場ゲートをくぐると、そこにプーさんがいた。娘は大喜び。走ってプーさんに駆けより、手をつないで、「はいポーズ」。娘は大好きなミニーマウスに渡そうと手紙まで書いてきた。早速ミニーを捜して手紙をと思っていると、目の前に。ワオ!ミニーちゃんだ!。さあ、手紙を渡しておいでと背中を押すが、娘の足は前に進まず。手を引いて連れて行こうとするが動かない。どうしたのと問うと、「こわ〜い」。エー!本物のミニーが怖いんだ!確かに顔はデカイし、耳は堅そうだし。目は笑ってないし。でも、でも、でもと妻も信じられない様子。ミッキーも近くにいたので、「ミッキーさんは怖くないよね?」と聞いたが、それも「こわ〜い」。しまいには泣き出す。せっかくのシャッターチャンス。息子だけでも一緒に写真に納めようとしたが、息子も実物のミッキー&ミニーに恐れをなして腰が引けている。二人して「こ〜わ〜い〜!」と大騒ぎ。
しまいにゃ首を絞めるぞミッキーマウス。
目をつぶり、耳を塞いだ子どもたちを抱っこしてその場から逃げる。これからの3日間が思いやられる。しかし、来たからには遊び倒さねばと気を取り直し、何のアトラクションに乗るかを家族会議。『スターツアーズ』や『ビッグサンダーマウンテン』など怖いのはダメだけど、『プーさんのハニーハント』もあるし、『ピーターパン空の旅』もあるからね、と務めて明るく子どもたちに尋ねる。すると「こわいからイヤだ」。ゲー!アトラクションもダメなのか。おいおい、わざわざ高い金を払って、無理矢理休んで、何しに来たんだオイラはとしばし絶句。近くにミッキーがいたら、オメエのせいだと首を絞めていたかも。
ミニーちゃんのおうちに大満足。
娘のリクエストはミニーちゃんとミッキーさんのおうちが見たい。「でも、本物はいないよね」とビビる。いないいないと騙して連れて行ったトゥーンタウン。ミッキーの仲間たちが住むテーマエリアだ。ミッキーの家は改修中で入れなかったが、主のいないミニーちゃんの家で、娘はようやくご満悦。内部には堅いソファーやベッド、ダイヤルの回らない電話。テーブルから離れない果物などがある。ドナルドが住むボートも見て、『ジョリートローリー(路面電車)』に乗ってロジャーラビットのアトラクション前に移動。ちなみに息子のリクエストは「バズのバキュンバキュン」。バズライトイヤーの持つ光線銃のおもちゃが欲しいそうだ。混雑するショップに、妻が強行突入し買ってきた。
この日は梅雨の真っ直中。台風接近中にも関わらず快晴。千葉方面は気温30度超。暑さのためかストレスか、オイラは胃がシクシク痛む。「チェックイン時間になったら子どもたちとホテルに行って休んでいるから、好きなアトラクションで遊んできなよ」と妻に提案。思うようにならない子どもたちにイライラしていた妻は、「お腹が痛いなら医務室へ行ったら」と冷たい反応。夢と魔法で夫婦仲まで険悪に。
かわいそうなアヒルの物語。
娘はロジャーラビットのアトラクション前にある遊具で遊んでいる。娘と向き合っていたオイラは彼女の背後から近づく怪しい影を発見。抜き足差し足でドナルド・ダックが娘に近づいてくる。娘の真後ろまで気づかれずに来たドナルドは、小さな背中を大きな手でチョンチョンと突いた。きっと母か祖母だろうと思って振り向く娘。目の前にはアヒルの化け物。しばし硬直し、ウギャー!と叫んで走って逃げ出た。驚いたのはドナルドダック。愛されることしか知らないアヒルは、娘の態度に呆然。しかし、気を取り直し、プロ意識で「やあ、大好きな子に嫌われちゃった残念」ポーズ。「ほんま、申し訳ない。ちょっとビックリしただけやから、気にせんといて」とドナルドに話しかけるオイラ。そのうち、ドナルドを発見し取り囲む老若男女に囲まれ、いつものお茶目な彼に戻っていった。
平和な風景で戦争を思う。
台風接近と人出の多さに、暑さ上昇中。アイスクリーム売場は大賑わい。園内にはアジアからの観光客多数。前後左右を人に囲まれたら、3方向までが中国や韓国、台湾の方なのだ。オイラは国際平和を希求し、先の大戦における帝国軍のアジアへの行為にも深い哀悼の意を表する者である。しかしながら、アジアンは声がデカイ、うるさい、おまけにあつかましい。園内でキャラクターを見つけると、順番を無視して取り囲み、我先に抱きつき、写真を撮りたがる。ああ、なぜわが国は大東亜戦争に敗れたのか。あの時、勝って植民地にしておけばこんなことにならなかったのに(涙)。
娘の怖い基準がわからん。
娘は『キャッスルカルーセル(回転木馬)』に乗り、息子はアイスクリームを食べ、機嫌が直る。おかげでオイラの腹痛も治る。座席位置の高い回転木馬に、ベルトで支えられているとはいえ、両手を離して楽しげに乗る娘。それだけできりゃ、どんなアトラクションだって怖くないだろうに。基準がわからん。時間は午後3時をまわった。ディズニーアンバサダーホテルのチェックインタイムだ。荷物は入園前にウエルカムセンターに預けてあるので、身ひとつでホテルに向かい、しばし休憩。それにしてもこの日は暑かった。
ウッキーさんのリゾートクルーザー。
ゲートを出てバスターミナルでホテル行きのシャトルバスに乗る。ミッキーマウスデザインのバス、ディズニーリゾートクルーザーだ。運転手はウッキーさん。本人がそう言った。お顔を見ると、失礼ながらお猿に似ている。車内放送では面白い話で盛り上げてくれる。こんな所にもゲストを喜ばせようというプロの姿があった。チェックインを先に済ませようとする人たちで車内もホテルも大混雑。フロントには長蛇の列。妻が並ぶが手続終了まで30分以上かかった。その間、ジュースが振るまわれ、ロビーではディズニーアニメが放映され、子どもたちはそれを見て待つ。子どもの数の多さ。まるで幼稚園のようだ。
オフィシャルホテルは最強なのか。
オフィシャルホテルのため、あちこちにディズニーキャラのデザイン。エレベーターは、例のミッキーマウスの声で「ドアが閉まるよ」、「5階に着いたよ」など喋る。ホテルのクオリティは、良からず悪からず、普通。部屋も広からず狭からず。ドアが薄いためか廊下での話し声がよく聞こえる。ミッキーをあしらったアメニティグッズが人気で持ち帰りOK。 スタッフの対応はテキパキ。しかし、お客様と良くコミュニケーションするようにとマニュアルに書かれているのか、どうでもいい話題で話しかけてくる。それなら、静かにしてくれていた方がいいのにとも思う。
この旅行で一番楽しかったのは。
なぜかベッドの高さがハンパじゃない。子どもたちがよじ登るぐらい。オイラと娘の寝るベッドは壁にぴったりとひっつける。娘はもちろん壁側で落下防止。妻と息子の寝るベッドは息子側に祖母用のエキストラベッド(高さは一般のベッドのマットレスぐらい)を近づける。しかし、夜中、何度も息子は祖母のベッドに落下し、その度に持ち上げられていた。朝起きたら、持ち上げることに疲れたのか、結局祖母と一緒に下のエキストラベッドで寝ていた。大人にも子どもにもパジャマが用意されているのはうれしい。ホテルではCS放送のディズニーチャンネルが見放題。帰宅後、今回の旅行で何が一番楽しかったと子どもたちに聞いたら、ホテルでディズニーのテレビを見たことと答えていた。なんだかなあ。
遥かなるディズニーランドの初日。
5時までホテルで休憩し、隣接する商業施設、『イクスピアリ』で夕食。夜のディズニーランドへと繰り出す。目的はエレクトリカルパレードと花火。しかし、台風接近に伴う強風でパレードも花火も中止。ちなみに、昼間に予定されていたパレードイベント『バズ・ライトイヤーの夏の大作戦』も中止だった。お土産を少し買って、ホテルに戻る。開拓時代の西部をイメージしたウエスタンランドではカントリーの名曲「レッドリバーバレー」がもの悲しく流れていた。♪「遥かなるディズニーランド。来てみたけど、大変」。
to be continued

 
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