イモリはもともとはどこにでもいる、身近な生き物でした。
田んぼや、水路など、人が住んでいる近くの水の中にいるからです。
特に、「里山」に囲まれた「谷津田」といわれる水田とその周辺がイモリの絶好の棲息地です。
冬でも一定の水温が保たれる湧き水が山からしみ出すような、
そして餌となる小さな水棲動物が豊富な泥地(湿田、沼田なら文句なしです)で、
水辺に身を隠せるような草や枯れ葉、石垣があれば、そこはイモリにとっての高級住宅地なのです。
でも今の日本は、イモリにとって、ますます棲みにくくなっています。
まずは開発の手が伸びて、水田はどんどん埋め立てられ、宅地化されて無くなってしまいました。
耕作放棄も深刻です。ですから、今や標高の低い所ではほとんど見かけなくなりました。
また、多くの水田で実施されている「耕地整理」がイモリの棲息に決定的な打撃となりました。
畦や水路がすべてコンクリート化されたからです。
また、それにともなって、あたりまえとなった水の徹底管理も致命的です。
稲刈り前から田おこしまでのあいだ、水は完全に止められ、餌も絶たれ、みずからも生きていけません。
農薬なども餌の激減をもたらしました。
こんな状態では準絶滅危惧種となってしまうのも無理ありませんね。残念なことです。
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イモリに会いたかったら、水の湧いていそうな山際の水田や水路を探してみましょう。
そう、なるべく耕地整理のされていない、自然の残る「谷津田」がイモリのいるところなのです。
土地のひとに聞いてみるのもいいでしょう。
でも、寒い冬の間にイモリを見つけるのは困難です。山際などの、湧き水が流れ込むような泥の中に、
たくさんのイモリが塊になって潜んでしまっているからです。
イモリは冷たくない水がある場所でひっそりと冬を過ごすのです。
春になって水がぬるみ、田に水が張られる頃になると、どこからともなく田の中に這い出してきます。
この頃がイモリを一番見つけやすい季節です。早い時期には、棲み家の近くでうろうろしています。
このような所の、畦の下や水路にある足元の窪み、あるいは水田の棚となっている石垣の隙間など、
水の中に手をつっこんで探ってみると、イモリに触れる事ができるかもしれません。
また、愕いたイモリが泳ぎ出てきたりします。このような時にまず出てくるのはオスのイモリです。
水田の中に散らばるのもオスが先です。メスの方が悠然としています。
夏から秋にかけては、水田や水路、池の中などに散らばっていたり、物陰にひそんでいます。
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イモリを探したり、観察する際に畦などに入るときには、ちゃんとことわってからにしてくださいね。
また、畦をくずさないように注意してください。水が張られている水田の中に入るのはやめましょう。
これとは別に、イモリを見かける場所があります。そう、ペットショップです。
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研究室で取り扱っているイモリは、必ず元いた場所に返すようにしています。
一網打尽に捕るようなこともしません。
同じ場所から採取する場合には、何年かあいだを空けて採取するようにしています。
また、研究室で孵化・成長したイモリも、ある程度の大きさになったら、
親が棲んでいた場所に放すようにしています。
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