話を聞かない男、地図が読めない女

―男脳・女脳が「謎」を解く―

アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ (藤井留美 訳、主婦の友社、2000)

 

ウーマン・リブ運動などの影響もあって、脳の働きに見られる男女の違いについて触れることは、かつてはタブーのようなものでしたが、最近ではそうでもなくなりました。人間は科学的に間違ったことを信じようと思っても、どうもうまくいかないようです。

本書の著者(夫婦)は科学者ではないので、科学的に見ればあまり厳密ではないことも書いてあると思われますが、それでも脳科学や動物行動学などの最新の成果を取り入れているようです。それにしても、よくこれだけ集めたものだと感心するほど、男女の行動様式の違いが並べ立てられ、それらの違いは結局脳の働きの違いに起因すると説明されています(脳の働きの違いは、人類の長い進化の歴史がもたらしたもの)。だれでも、そのうちのいくつかは、今までに聞いたことがあったり、常々感じたりしていることかもしれませんが、全く初めて聞く話や思いがけない発見と感じられることも多々あり、それだけでも十分に楽しめます。

重要なことは、平均すれば多くの男は「男脳度」がかなり強いのは確かだとしても、男がすべて「男脳」の持ち主ではないし、女がすべて「女脳」の持ち主でもない。また、一人の人間の中には必ず男脳度の強の部分と女脳度の強い部分がある、ということ。これをきちんと理解していないと、結局「男は・・・」「女は・・・」というステロタイプの偏見に陥り、それは個人にとっても社会にとっても大きな損失になります。それを踏まえた上で、男女の行動様式の違いとされている事柄にある程度の注意を払うことも、人間関係における摩擦や無用の誤解を避けるために必要でしょう。

それにしても、常々不思議に思うのですが、ふだんのおしゃべりではおよそ非論理的で、「勘」や「感」だけでものを言っているような女性でも、相手を非難したり攻撃したりするときには、なぜあれほど見事に理路整然としゃべれるのでしょうか。

 

厳選読書館・関連テーマの本
共感する女脳、システム化する男脳