「ミントお姉ちゃん。この花、分けてもらっていいかな?」

いつものように、遊びに来ていたリシェルが帰り際に庭の花を指して言った、

「カネルね。いいわよ。どうするの?」

「この間、アルバに助けてもらったでしょ?そのお礼にしたいなって思って」

「ああ、それはいいわね。後で一緒に花束にしようか」

「あ、できたら鉢植えにしたいんだけど」

「鉢植え?できるけど、アルバくん今の問題が落ち着いたら旅に出ちゃうし、花束のほうがいいんじゃないかしら?」

お礼に花。というのは実に可愛くて良いなと思ったが、鉢植えにすると言うとは思わなかった。
訝しげなミントに、少し考えるそぶりを見せてリシェルは言う。

「うーん、多分アルバ、カネルの花好きなんだと思うのよね。萎れちゃったらイヤじゃないかな。鉢植えだったら、花が終っても大丈夫でしょ」

「え?どうしてそう思うの?」

「だって、よくこの花見てるもの。
 旅に出るときは、誰かにあげてって言って渡すわ。あいつにも頼んでおくけど、もし貰ったらミントお姉ちゃん世話してくれる?」

「もちろんよ。それじゃあ、後で一緒に鉢植えにしようか。長めのリボンとかあったら飾りにできていいわね」

「うん。ありがとう、お姉ちゃん」

嬉しそうにリシェルは言う。
その様子を見て、ミントはにっこりと笑った。
自分は全然気付かなかった。
普段、色々とよく気が利くのは弟で、リシェルには気遣いが足りないと思われがちだが、そんなことはない。
きっと、お礼をどうしようと、がんばって考えたんだなと思うと、リシェルがとても可愛いと思った。


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