「アルバ。これ、あげるわ」
引っ越したばかりのアルバを訪ねて、忘れじの面影亭にやってきたリシェルが差し出したのは、小さなカネルの鉢植え。
可愛らしくリボンが結んである。
「え?おいらに?」
「そうよ。この間助けてもらったから、そのお礼。」
「あ、ありがとう」
フラットの仲間たち以外の女の子から花を貰うのは初めてだったので、アルバは少し赤くなった。
「お礼を言うのはあたしのほうよ。本当にありがとう。
それと、その花、出発するときには、誰かにあげていってくれるといいから。」
「え?」
「それじゃ、あたしたちがいない間、あいつとミルリーフのこと、よろしくね」
そういって、宿を出て行ったリシェルの背中に
「まかせといてくれよ。
ありがとう、リシェル。この花、大事にするよ」
と大きな声を掛ける。
振り返って手を振ったリシェルは少し照れくさそうな顔をしているように見えた。
>>2:ちょっと前の話
SS