イニスフェイル〜ケアンズの南88kmの町〜
*** 2004年4月28日〜5月6日 ***


★旅の始めに
★イニスフェイルというところ
★フライング・フィッシュ・ポイント・ビーチフロントB&B
★イニスフェイルのゴルフ事情

★クロコダイル・ファーム
★ミッションビーチ
★ちょっとだけケアンズ
★自給自足の旅
★旅は終わって


★旅の始めに
会社の仕事の関係でGWは長めの旅行がしづらいのだが、今年はGW前にだいたいかたがつくことになった。そうなると私の旅行の虫が疼いてしまう。なんとかオーストラリアのケアンズ往復のチケットをゲットした。ケアンズはオーストラリア東海岸の最北地域に位置し、11月後半から4月中旬までが雨季。GWならもう雨季明けだろうと考えたわけだ。ケアンズは過去に2回行っているが、ちょっと観光地すぎてつまらない。
今回はとにかくのんびりしたい。社会は混沌としているし、会社はいつも忙しい。(これは当たり前か?)ここ2週間ほどのことなのだが、まぶたのあたりがたまにヒクヒクと痙攣してしまうのだ。目の酷使のためか、ストレスのためか。。
ネットでいろいろと探して見つけたのがケアンズから南に車で1時間半ほどのところにあるイニスフェイル。ゴルフ場があるし、キッチン付きの宿も見つかった。ガイドブックに載っていない町でどんな町だかよくわからないのだが、オーストラリアはどこに行っても広々としていて外れはないはず。ということで、イニスフェイルへの旅は始まった。

★イニスフェイルというところ
ケアンズの南88kmに位置するのはタイトルに書いた。観光の町というわけではないようで、「地球の歩き方」にも載っていない。ガイドブックに載っていないとなると、どのような町か知るのはなかなか難しいことだった。それは10年前くらいまでの話で、今はインターネットがある。何でもわかってしまう。(逆にそれが旅の楽しみを減らしているような気もするが)
町のHPを見ると、人口は8000人。現在の主要産業はバナナや砂糖。一帯の海岸はカスワリー・コーストと呼ばれている。(カスワリーはオーストラリア東北部の熱帯雨林に棲息する飛べない巨鳥で、日本語名は火喰鳥。)
この程度の知識で来てみたのだが、とてもこじんまりとした町で居心地はよさそうだ。スーパーは2、3軒あるし、中華料理屋も2軒。休日は閑散としていて町を歩く人も少ないくらいだ。田舎の町なので、例によって裸足の人も珍しくない。裸足の人を見ると、ああまたオーストラリアに来たのだなあ、と感じてしまう。(オージーの裸足事情こちらを参照)

★フライング・フィッシュ・ポイント・ビーチフロントB&B

道路から見たB&B 海から見たB&B 途中はサトキビ畑

やたらと長い名前だが、ここが今回5泊した宿だ。出発の2週間くらい前に、ネットでたまたま見つけたのだが、今回の旅の収穫はこの宿に尽きるといっても過言ではない。
フライング・フィッシュ・ポイントというのは地名。てっきり、フライング・フィッシュ(飛び魚)の釣り場として有名な場所かと思っていたが、宿のオーナーの話では、以前「フライング・フィッシュ」という名の船が沈没したことから付いた地名ということだ。
イニスフェイルの町からは車で15分くらい。町を離れるに従い、周囲はサトウキビ畑や熱帯雨林だらけとなる。

ビーチまで7ステップ

ビーチに降りるステップ 眺めが素晴らしい テラスでビール テラスで朝食 迷い込んだ鳥

とにかくロケーションが素晴らしいのだ。宿の名前がビーチフロントだし、HPに「Seven steps to the beach」と宣伝していたので、海が見えるだろうとは思っていたが、想像をはるかに超える素晴らしさだ。海に面して広々としたウッドデッキがあり、泊り客が自由に使うことができる。朝食もここだし、のんびりとお茶やコーヒーを飲んでもいい。ソファーまで用意してあるので、ここでのんびりと昼寝したってかまわない。
ウッドデッキの脇には小さなプールと、そしてオージーには欠かせないバーベキューのコンロもある。
あいにくの雨季明けでまだ水は澱んでいたし、天候もまだどんよりとしている日が多かったが、そんなことを差し引いてもやはりビーチフロントは素晴らしい。のんびりと海を見て本を読む。そしてビールを飲む。聞こえるのは波の音だけ。
たまに陽が射すと蝶々が乱舞する。紫色の特徴のある蝶々で、近くのダンク島のシンボルになっている蝶だ。野鳥も飛び交っていて、一度部屋に迷い込んできたが、胸がオレンジ色の小さな鳥だった。
オーナーの話では、季節がよくなると、野生のイルカが泳いでいるのが見えたりするとか。とても自然に恵まれたビーチなのだ。

おどろきの共有スペース

リビングを開け放つ 広々としたキッチン

そのウッドデッキから室内に入るとそこは広々としたリビング・ダイニング・キッチン。とても広々していて20畳はあるだろう。キッチンには電子レンジ、オーブンから食器にいたるまで何でも揃っているし、リビングには気持ちのよいソファーが置かれ、オーディオ設備もばっちりだ。ドアを開いておくとウッドデッキと室内が一体となり、とても快適で広々とした空間が出現するわけだ。
このB&Bは客室が2つあり、リビング・ダイニング・キッチンは共有スペースということになる。私たちは5泊したが、そのうち他の泊り客がいたのは3泊目と4泊目だけだった。だから残りの日はもう貸切状態。
客室だって15畳くらいはあり、もう自分の家みたいにくつろいでしまった。いや、自分の家よりも広かった!

気さくなホスト、ピーターとマンディ
こんなに素晴らしいB&Bのオーナーが、ピーターとマンディ。
ピーターはオーストラリア人だが、マンディはイギリス出身で、20年位前にオーストラリアに来たそうだ。ケアンズの北にあるクックタウンという町でホテルとレストランを何年かやっていたそうだが、こちらには昨年の11月に移ってきた。冗談っぽくセミリタイアしたと言っていたが。
だからこのB&Bはオープンしてまだあまり時間がたっていないのだ。元々あった古い家をだいぶ改装したそうで、とても快適な家になっている。どれだけの改装費がかかったのが想像も尽かないが、素人目にもかなりかかったように思う。(プールだって新しく作ったそうだ。)
こんな素晴らしい宿が2人で泊まって1泊たったの120ドル。(約1万円)改装費を回収するまでどのくらいの期間が必要なのかと心配になってしまう。やっぱり商売っていうよりも、セミリタイアっていうのは本当かもしれない。
2人ともとても気さくで、いろいろと気を遣ってくれる。今日は何するのとか、ゴルフの調子はどうだったとか。言葉があまり通じなくたって大丈夫。相手に合わせて笑っていればよいのだから。(笑)
最高点
私も海外旅行が好きで、いろいろな宿に泊まった。以前はホテル中心だったが、最近はキッチン付きの宿やB&Bが増えてきた。そうした中で、今回の宿は文句なしに最高点だ。もちろん、お金に糸目をつけなければこれ以上の宿はいくらでもあるだろうが、こういう料金、気楽さ、ロケーション等総合評価をすると文句なしのNO.1だ。
日本人で泊まったのは今のところ私たちだけ。もしただひたすらのんびりと過ごしたいという人には是非お勧めする。やはり貸切状態になると快適さは増すので、家族で2部屋抑えてしまったらよいと思う。

★イニスフェイルのゴルフ事情
オーストラリアのゴルフ場
イニスフェイルのゴルフ事情を話す前に、まずオーストラリアのゴルフ場について整理してみよう。
私のオーストラリアでのゴルフ経験は乏しく、キャディバッグをかついできたのは今回が3回目にすぎない。そのわずかな経験からで恐縮だが、オーストラリアのゴルフ場は概ね3タイプに分けられると思う。
<タイプ1>ここの特徴は受付に人がいないという点。プレーしたい人は入口に置いてあるノートにサインをして、料金は小さな封筒に入れてポストにような投入口から投げ入れるだけ。あまり手入れをしていない、というか荒れ果てている。もう公園のような感覚なのだろうか、犬を連れて遊ぼうが何をしようが勝手だ。料金も恐ろしく安く、1日(1ラウンドではない!)で1000円とか2000円だ。
印象に残っているのがダンズボローのゴルフ場。プレーする人も少ないので、カンガルーがのんびりとフェアウェイに横たわっており、いたるところにカンガルーの糞が散乱している。そして、グリーンがなんと砂。バンカーが砂なのは当たり前だが、ここはグリーンが砂なのだ。砂を薄く敷き詰めてあるので、たしかにボールが転がる。きっと手入れが不要だからこうしているのだと思う。
<タイプ2>ここには受付に人がいる。クラブハウスというほど立派ではないが、小さな建物にちゃんと受付があり、そこではボールやクラブも売っている。料金はタイプ1よりも安いがせいぜい2000円から3000円くらいだろうか。一応勝手に人が入らないように管理はしているわけだ。
<タイプ3>これはもう日本のゴルフ場と同じ。立派な建物に受付があり、ゴルフ用品もたくさん置いてあるし、レストランだってある。当然ながらコースの手入れもきちんとしている。料金的にはピンキリで、リゾートコースなどは1万円を超えるところもあるようだが、普通のコースならば日本よりもずっと安く、数千円もあれば十分だろう。

イニスフェイル・ゴルフクラブ

クラブハウス(外から) クラブハウス(コースから) グリーンフィーを払いましょう 1番ホールのティーグラウンド

イニスフェイルは小さな町(町の人口は8000人)だが、ゴルフ場がある。国道1号線(ブルース・ハイウェイ)をケアンズから走ってくると、イニスフェイルの町に入ってすぐのところに位置しているのでとてもわかりやすい。
このゴルフ場はさきほどの3タイプのどれにあたるかというと、タイプ1と2の中間くらいだろうか。こじんまりとした2階建ての建物があり、1階がクラブハウスで、2階はレストランのような感じ。「感じ」というのは、鍵がかかっていて人がいないのだ。オフシーズンなのかもしれない。人がいないとお決まりのパターンで、料金を小さな封筒に入れて投げ入れることになる。
料金はビジターだと9ホール12ドル(約1000円)、18ホール(1日)18ドル(約1500円)と格安だ。ジュニアはたったの5ドル(約400円)という具合だ。18ホールとはいっても、各ホールのティーグラウンドにティーが2つあって、9ホールを2度回るスタイルだ。(例えば1番ホールと10番ホールは同じティーグラウンド)
まあこういう料金なので、コンディション的にはあまり期待できない。フェアウェイの芝は刈っているけれど、芝自体が雑草のような感じだし、雨季明けということもあってフェアウェイがかなり湿っている。ティーショットをドライバーでナイスショットをしても球には泥がへばりついてしまうという次第。だからアイアンショットやアプローチショットは難しい。芝の抵抗がけっこうあるし、芝のすぐ下が泥土なのだ。こんな書き方をするのは自分が下手な証拠。相変わらずの不安定なショットにちょっとめげてしまっているのだ。

でもゴルフ場はとてものんびりしていて嫌いなわけではない。
<初日(金曜日)>とても空いていて、私以外にプレーしている人は見かけなかった。
<2日目(土曜日)>家族10人くらいで回っているグループを見かけた。本当にピクニックのような感じなのだ。お爺さんもいれば小学生位の子供もいる。10人もプレーしているので滅茶苦茶スローペースだが、きちんと後続の組には気を遣っていて、追いつかれそうになると次のホールをパスしてしまうとか、あるいはまた前のホールに戻ってしまうとか。
<3日目(日曜日)>夕方にプレーしたが、近所の子供らしき2人がサッカーをして遊んでいた。こんな環境ってやはり日本人にはとても羨ましく感じられてしまう。
<4日目(祭日)>途中から雨に降られてしまった。もう泥んこゴルフ。そのうえ蚊に十数か所刺されてしまい、戦意喪失。

★クロコダイル・ファーム

入口の看板 遠くに見えるのがワニ カスワリー ワラビー

いつも書いているが、私はあまり観光好きではない。日本で旅行をしても**サボテン公園だの**サファリパークなどには入ったためしがない。
そんな私が今回いかにもという感じのワニ園(クロコダイル・ファーム)に行ってみた。当然ながら園内にはワニがいっぱいで、すごくでかいやつもいる。それ以外にもオーストラリアでお馴染みのワラビーやエミュー。そうそう、ちょっと変わったところでは絶滅に瀕しているというカスワリーが1頭だけいて、来園客の人気も高い。日本ではあまり聞かない鳥なのだが、この地域で保護をしようという活動がさかんなようで、道路で保護を訴える看板をよく見かける。園内はさほど広くなく、ガイドさんに連れられて30分くらいで1周してしまう。伊豆熱川のワニ園もまあこんな感じなのだろうなあ、と想像してしまう。いや、ちょっと違う。日本に野生のワニはいないが、オーストラリアにはわんさといる。うん、うん。

★ミッションビーチ

道路の両側はバナナ畑 砂糖博物館 ダンク島 スピードの出しすぎに注意

イニスフェイルもフライング・フィッシュ・ポイントもそれほどの観光地ではないようだが、近くにミッションビーチというまあまあメジャーな観光地がある。今回の滞在先の候補にもなったところだ。たいして離れていないので、ちょっと遊びに行ってみた。イニスフェイルから国道1号線を南下するのだが、道路の両側はサトウキビ畑かバナナ畑が続いている。途中に「砂糖博物館」なる建物があったりして、やはりこの地域がサトウキビで発展したことが偲ばれるのだ。
国道を左折してしばらく走るともうあたりは熱帯雨林。このあたりはカスワリー(火喰鳥)の棲息地で保護を訴える看板がやたらと多い。
イニスフェイルを出て1時間くらいでミッションビーチに着いてしまう。ミッションビーチの前に見えるのはダンク島。十数年前に行ったときはケアンズから飛行機を使ったのだが、ミッションビーチからは目と花の先で、船が出ている。
ミッションビーチ自体はたしかに多くの店が建ち並んでいて賑やかだが、ちょっと賑やかすぎる。日本でいえば湘南を大人っぽい感じの町にしたようなものだろうか。何もないフライング・フィッシュ・ポイントのほうが落ち着く。フライング・フィッシュ・ポイントを選んだのは正解だったようだ。

★ちょっとだけケアンズ

全部美味しい 空港内のショップ

今回の旅行ではB&Bに5泊したあと、ケアンズのすぐ北にあるパーム・コーブというビーチに2泊した。それで1日だけケアンズの街をぶらぶらとした。ケアンズは3度目で前回からは10年くらいたっていたのだが、随分と日本人観光客を意識した街になっているのには驚いた。
ケアンズのハワイ化といったらよいのだろうか。(私はハワイには1回しか行っていないので、単なる想像だが。)とにかく街には日本語があふれている。レストランに日本語メニューがあるのは当たり前で、それ以外のお店にも日本語でいろいろと勧誘の言葉が掲げられている。
近郊の観光地キュランダなども観光客の半分くらいは日本人で、ケアンズの街以上に日本語が氾濫している。
まあ、ケアンズは日本に近い(7時間)ので、こういうことになったのだろう。私としては旅の風情が乏しくてあまり好きではないのだが、日本人のお年寄りなどは旅行しやすくてよいのかもしれない。
しかし、これはやり過ぎと思ったのは、ケアンズ空港内のアクセサリーショップ。日本へ向う便の搭乗口のすぐそばにそのショップはあるのだが、店員が普通の日本人の茶髪の若い女性。恐らくワーホリかなんかの連中だと思う。客もほとんど日本人で、もちろん日本語で買い物をしている。もうこれじゃぁ外国じゃないよ、とちょっと憤慨した。

★自給自足の旅
今回イニスフェイルのB&Bで海を眺めながめていて、「ああ、いつまでも飽きるまでのんびりと過ごしていたいなあ。」と例によって怠惰な思考に耽っているときに、こんな言葉が頭に浮かんだ。それは『自給自足の旅』。
自給自足の旅というと皆さんはどんな旅を思い浮かべるだろうか。東京12チャンネルあたりで、田舎で米や野菜を作って生活している人たちのことはよく放送されている。でもそれは、定住であって旅ではない。
では、自給自足の旅とは?
私には趣味が3つある。旅行、ゴルフ、株式投資である。私のHPもそれぞれの分野別に作っている。(是非ご覧ください。)この3つを融合すると、なんと自給自足の旅になるのである。
では種明かし。インターネットの発達は目ざましく、外国にいながらも投資情報を得ることは可能であり株式売買の注文を出すことができる。そして稼いだ資金で、というか稼ぎながら外国を旅するのだ。もちろん、キャディバッグを担いで、その土地その土地のゴルフ場でプレーして腕前をあげる。簡単にいうと、株式投資で稼ぎながらゴルフ修行の旅をする、ということになる。
うーん、すごい名案である。ひょっとしてできるかも。。。


★旅は終わって
いつもは帰りの飛行機の中で最後の文章を書くのだが、今回は私の愛用のパソコン(富士通製LOOX)が不調で駄目だった。それで帰国後に書いているわけだ。すぐに書こうと思ったが、あっという間に1ヶ月がたってしまった。
それにしても日本はちまちましている。わが町亀戸の混雑ぶりもそうだが、朝の通勤時の駅の混雑ぶりもすごい。そんなに混雑しているのに人々は歩きながらケイタイを覗きこんだりしていて、歩きづらいのなんのって。もっと早く歩けよ、と怒鳴りたくなってしまう。
やはり落差が大きいのである。波の音しか聞こえなかったあのB&Bでの1週間が遠い遠い昔のことのように思えてしまう。以前オーストラリアのティンブーンという町で泊ったコテージを「理想のコテージ」と表現したが、今回のB&Bはまさに「理想のB&B」だった。
まあこんな愚痴ばかりこぼしていても仕方がない。こういう言葉がある。「人は生まれる場所は選べないが、住む場所は選ぶことができる。」ふむふむとてもよい言葉である。(実は私が考えた言葉なのだ。)いつの日か大都会を脱出したい、そんな思いが強まった旅であった。

私ごとだが、妻に子供ができ、順調に行けば私も秋には父親になることになった。子供が成人するときの自分の年齢を考えると気が遠くなってしまう。(笑)もうのんびり旅行なんかできないなあ、と考えるのが普通だが、妻の出産や育児で私の病気(つまり、旅)が簡単に直るとも思えない。
必ずや多くの困難を乗越え、旅を続けていくことだろう。うん、間違いない。そして家族揃って世界を旅する日もくることだろう。うんうん。
そうは言っても、さすがにちょっとの間だけ旅はお預けだ。
次の旅がいつになるかはわからないけれど、そのときまでさようなら。



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