偉大なる海の道 豪州の寒い夏

*** 2002年12月26日〜2003年1月5日 ***

   

☆旅の始めに
☆さあ、偉大なる海の道へ
☆トーケー〜ローン〜アポロベイ〜ポートキャンベル
☆理想のコテージ
☆ポートキャンベルのフリーマーケット
☆ポートキャンベル〜ウォーナンブール
☆デフレ大国ニッポン
☆寒い夏
☆バービーな人々
☆「グレート・オーシャン・ロード」のゴルフ事情
☆未知なる生物
☆旅の終わりに


☆旅の始めに
今年は私としてはけっこう忙しい年だった。
不況のせいか、時代の変わり目のせいか、私の勤めている会社も何かと新しいことに取り組もうとしている。そうすると当然ながら仕事は忙しくなる。春や秋についふらふらとアジアの街に出かけるのが私の習性だが、今年はそれもしなかった。

しかし、年末の旅行は行かないわけにはいかない。もうこれは使命感みたいなものだ。
ということで、今年もオーストラリアに出かけることにした。
昨年はオーストラリアの西部だった(「みちの七 オージーはどこに行った?」参照)ので、今回は南部にしようということで、飛行機のチケットはメルボルン往復。
メルボルンっていうのは日本人にあまり馴染がない。メルボルンオリンピックというのを聞いたことがあるが、開催されたのはもう50年も昔のことだし。オーストラリア大陸のどのへんかというと、一番右下の隅っこだ。
ガイドブックを見てみると、メルボルンはビクトリア州の州都で、キャンベラができる1927年まではオーストラリア連邦の首都だったとある。
人口は320万人。町並みはヨーロッパ風で、南太平洋のロンドンといったところらしい。
私はあまり都会に興味はない。しかし、さらにガイドブックをめくっていくと、メルボルン郊外のページで「グレート・オーシャン・ロード」という言葉にぶつかった。
ガイドブックの文章を引用しよう。
「グレート・オーシャン・ロード」はオーストラリアの誇るベスト・ドライビング・ルート。メルボルンの西、トーケーからウォーナンブールまで約250kmに及ぶ道だ。ここには人の手によって建てられたテーマパークのような見どころはいっさいない。オーストラリアの大地と海が作り上げた「偉大なる自然」のみが存在する。海にそびえ立つ神秘的ともいえる奇岩の数々、世界中のサーファーがあこがれるビッグ・ウェイブが待つビーチ、潤いの空間レインフォレスト・・・・・大自然と向かい合い、体すべてを使って感じ取れば、グレート・オーシャン・ロードの真の魅力が見えてくる。

どうも私は「グレート」とか「「グランド」とかいう言葉に弱い。「グレート・バリア・リーフ」も「グランド・キャニオン」もその言葉につられて行ってしまったし。もう決まり!今年は「グレート・オーシャン・ロード」の旅に決まりなのだ。

☆さあ、偉大なる海の道へ
ここはメルボルンから車で2時間程のトーケーという小さな町の小さなB&Bの一室。
トーケーは「グレート・オーシャン・ロード」の起点となる町なのだ。
昨日の午後6時過ぎのキャセイ便で香港に飛び、そのまま飛行機を乗り継いでメルボルンに着いたのが、今日の正午前。けっこうな長旅だ。
すぐにレンタカーを借りて車を走らせ、トーケーに着いたのは午後4時前だった。
現在の時刻は午後8時半だが、まだ陽は沈んでいない。外を見ると空がだいぶ色づいてきている。おそらく日没は午後9時くらいだろう。
静かな町で、遠くでたまに車の音がかすかに聞こえるが、鳥の鳴き声のほうがよほどよく聞こえる。
こんな静かな環境は久しぶりだ。

昨日までの慌しさはもう過去のこと。これからの1週間は静かに安らかに過ごしたい。
さあ、明日からは「偉大なる海の道」が待っている。

☆トーケー〜ローン〜アポロベイ〜ポートキャンベル

トーケーから1時間ほどでローンに着く。ここは「グレート・オーシャン・ロード」で一番賑やかな町だそうで、たしかにすごい賑わいだ。実は1泊目はここにしようと、日本からローンの多くの宿にメールを出したが、結局取れなかったくらいだ。

ローンを過ぎると道はだいぶ険しくなる。アップダウンが激しく、曲がりくねった道が続く。事故多発地帯という標識も目立つ。
なんとなく伊豆の道路と雰囲気は似ている。でも伊豆と違って渋滞がないのはありがたい。
もちろん、交通の絶対量が伊豆に比べて少ないということもあるのだろうが、それに加えて工夫もしている。
というのは、車で走っているとひっきりなし(感覚的には1〜2分ごと)に「Slow Vehicles Turn Out 300m」という表示がある。スピードの遅い車は300m先で後続車を追い抜かせなさい、ということで、300m先に車を止められるスペース(バス停くらいの広さ)が用意されている。だからここでバスなどを追い抜くことができるし、また自分でもゆっくりと走りたいときは、ここで後続車を先に行かせればよいのだ。こんなくふうって日本でもあってよいのではなかろうか。

ローンから1時間ほどでアポロベイという町に着く。この町もなかなかの賑わいぶりで、手作り物中心のフリマも開かれていた。
アポロベイから道路はしばらく海を離れ、なだらかな丘陵地帯を走っていく。オーストラリアらしい広々とした光景が広がっている。
そして1時間くらいでまた海に戻り、ポートキャンベル到着する。
偉大なる海の道というが、その名にふさわしい風景はポート・キャンベルの周辺に集中しているらしい。
この町の近郊に3泊する。あまり観光は好きではない私だが、1日くらいは名所めぐりをしてみるつもりだ。

☆理想のコテージ

アジアの旅は別として、アメリカとかオーストラリアを旅するときの宿はなるべくキッチン付きの宿を取るようにしている。
私は現地のスーパーマーケットに行ってぶらぶらといろいろな物を見るのが好きなのだ。特に食料品売場はその国の食文化が垣間見られて面白い。
食料品をいろいろと見ていると当然ながら実際に食べたくなる。だからキッチン付きの宿を取るということになる。
オーストラリア人にとって、長い休暇を経済的に過ごすためにキッチン付きの宿は一般的なようで、インターネットでもキッチン付きの宿を探すのに苦労はしない。(オーストラリアでは self-contained という表現をしている。)
今回インターネットでようやく確保をしたのが、Willowglen Cottage だ。ポートキャンベルから内陸(北)に車で20分くらいのティンブーンという町にある。
周りは牧場地帯で自然の真っ只中だ。
ピークシーズンにもかかわらず空きがあったし、また料金も手頃だった(1泊約9000円)ので、実はあまり期待していなかったのだ。かなりしょぼい宿ではないかと。ところが、とてもとても快適なコテージだった。
コテージは一つだけ。つまり一組限定の宿ということになる。広々とした敷地(約3000坪)の中にオーナーの家とこのコテージだけがある。
コテージはとても清潔でさりげなくいろいろな物を揃えてくれている。(調味料とか殺虫剤とか、ちょっとした物がいろいろ)
コテージには屋根付きのデッキ(テラス)があって、そこでのんべりと椅子に腰掛けて眼前の池を眺められる。多くの野鳥の鳴き声がこだましていて、とても落ち着く。
デッキにはバーベキューセットも用意されているので、スーパーで買ってきた肉を焼いてビールを飲む。うーん、最高!

コテージの所有者(たぶん Willowglen氏)に話を聞いた。
ビクトリア州北部の生まれで48歳。5年前に家付きでこの土地を約1500万円で購入し、自分でコテージを建てた。
都会より田舎が好きで、このあたりでは「Everyone knows everyone」とのこと。
ああ、こんなコテージに住みたいものだ、とつくづく思った次第。

ポートキャンベルのフリーマーケット
最近は女房が現地のフリーマーケットに参加するのも一つの楽しみになっている。それで今回参加したの「ポートキャンベル・サーフサイド・マーケット」だ。
ポートキャンベルは小さな町で人口は400人足らず。こんな小さな町なのだが、夏場は全豪各地からバカンスの人々がやってくるので、12月末と1月の日曜日だけこのマーケットが開かれているという。今日(12月29日)が最初のマーケットということになる。
多くは業者の店のようだが、中には自分の家のガラクタを処分しようという素人さんもいる。バイオリンを弾いて小銭を稼いでいる少女がいたりする。まあのんびりとした雰囲気だ。
日本のフリマと違ってこちらは当日参加OKで、出店料は20ドル(約1500円)。
果たして我が女房の手作りアクセサリー(興味のある方はHPをご覧ください。)の売れゆきはいかに?
結果は上出来。3時間ほどで日本のフリマの一日分くらいを売ってしまった。
日本のお客さんとちょっと違うのは、興味を持ってくれていろいろと見てくれたあと買わずにいってしまうときでも、beatiful とか pretty とか褒め言葉をかけてくれる人が多いというところだ。日本だと買わないときはそそくさと去ってしまうのだが、こちらの人はしっかりと褒めてくれてから去っていく。最初のうちは買ってくれるのだと勘違いしてしまったが。(笑)
国民性なのだろう。

☆ポートキャンベル〜ウォーナンブール
「グレート・オーシャン・ロード」の見所はポートキャンベルの周辺に集中している。
東から西に挙げると、「ギブソン・ステップス」「12人の使徒」「ロック・アード・ゴージ」「ロンドン・ブリッジ」「サウザンズ・オブ・アイルズ」等々。
このあたりは波が激しく海岸の浸食がさかんなため、長い年月をかけてユニークな形状の海岸線が形成されたというわけだ。たしかに行ってみるとその景観には圧倒される。
しかし、何ヶ所も見ているとだんだん慣れてきて、なんかこんな景色は日本にもあるのでは、という気にもなってくる。
まあ、写真をご覧ください。

ギブソン・ステップス 12人の使徒 ロック・アード・ゴージ ロンドン・ブリッジ

この中で飛びぬけて観光客が多いのが「12人の使徒」だ。波の浸食によって海岸から切り離された大きな岩が立ち並んでいるのを、キリストの12人の弟子になぞらえたものだ。
駐車場も広いし、ヘリコプター観光もできる。訪れたのが土曜日だったためにたいへんな賑わいで展望台に行くまで行列状態だった。メルボルンから車で3時間くらいなので、手軽な観光スポットなのだろう。
他のスポット(ロンドン・ブリッジ等々)は駐車場と展望台があるだけなのだが、ここには建物もある。日本人の私は、きっと使徒饅頭、いや使徒クッキーとか、使徒キャンディーとか、使徒ぬいぐるみとかいろいろ売っているのかと思った。ところが建物の中はトイレだけ。こうした商売っ気のないのがオーストラリアらしく、なにやらさわやかな気持ちになってしまった。
最後の見所である「サウザンズ・オブ・アイルズ」から先(西)は海岸を離れる。牧場地帯を30分も走ると「グレート・オーシャン・ロード」は終点となり、道路はプリンセス・ハイウェイに合流する。そして、ウォーナンブールに到着だ。

☆寒い夏
グレート・オーシャン・ロード」終点の町がウォーナンブールだ。ポートキャンベルやティンブーンに比べるとずっと大きな町で、人口は2万5千人。5月から9月には鯨が見られるので有名らしい。
ポートキャンベルやウォーナンブールのあたりの海岸は Shipwreck Coast と呼ばれている。日本語に訳すと難破海岸ということになる。
この地域の案内パンフレットの地図にはご丁寧なことに、難破した場所に船の名前と年が記されている。かなりの数だ。見所の一つである「ロック・アード・ゴージ」も、実は1878年にイギリスからの最後の移民船「ロック・アード号」が難破した場所なのだ。展望台には難破の状況を描いた絵などもあって、少々痛々しい。


そうした難破の名所だからというわけではないのだろうが、今回の滞在中は天候が荒れた日が多かった。強風が吹き、ときおり横殴りの雨が降るといった具合だ。
陽が当たらないのだから、気温もあがらない。今日(1月1日)など最高気温は20度には満たなかったと思う。散歩に行くときもトレーナーにジャケットといういでたちだ。私は冬の日本から来たからこそこういう衣類を持っていたわけなのだが、周りの人々を見ても似たような厚着の人が珍しくない。ということはこういう気候はそれほどの異常気象ではないということなのだろう。一説によると、南極からの風をさえぎるものがないので、常に冷たく強い風が吹いているとか。
ガイドブックで確認したところ、ここウォーナンブールの1月の平均最高気温は22.2度だった。やはりとても涼しいところなのだ。
部屋の電気ヒーターを使うほど、今日は寒かった。

☆デフレ大国ニッポン
私が外国を旅行するようになってから早いものでもう20年だ。当時アメリカやオーストラリアでは、ああ外国は物価が安くていいなあと思ったものだ。
しかし、近年は日本の物価もかなり下がったので、そういう感覚はあまり持たなくなった。
現地物価の一つの物差しがあのマックのハンバーガーだが、今や日本(59円)を下回る国はないのではなかろうか。ちなみにオーストラリアのこの地域は1.45ドル(約110円)だった。

こちらのスーパーマーケットに行ってもこれは安いと感じるものはあまりない。もちろん肉は安い。牛肉だと、一番安いのが100g50円、一番高いフィレが100g200円といった具合。やはりこちらでは肉を食わねば損をした気になってしまう。
牛肉が安ければ牛乳も安いだろうと思うとそうでもない。1リットル150円くらいだからさして安くない。オレンジジュースなどは日本のほうがずっと安い感じだ。

レストランやファーストフードだってそんなに安くは感じない。きっと牛丼280円(吉野家)とか、スパゲッティ390円(サイゼリア)とかに慣れてしまったせいなのだと思う。
ただ、ポテトの量は感動ものだ。こちらでよく見かけるFish and Chipsの店のSサイズ(こちらではミニマムという。)でもマックのLサイズの3倍はあると思う。けっして一人では食べきれない!ポテトさえ食べていればこの国では安上がりっていう感じだ。

食べ物からちょっと離れよう。
ウォーナンブールのショッピングセンターを歩いていたら「Just Cuts」という床屋があった。いかにもチェーン店という感じだ。日本で最近よく見かけるQBハウスみたいな感じの店だ。たしかQBハウスは10分で1000円だったと思うが、さてこちらはいくらかと興味津々。料金表を見てみると18ドル(約1300円)だ。散髪時間はというと、調査のため(?)に実際にカットしてもらったら約15分ほどで大差なしだった。
ところで、オーストラリアの床屋には大抵、シニア料金がある。この店でも一般料金18ドルに対し、シニア料金は15.5ドルとなっている。この店にはなかったが、町の床屋の料金表でよく見るのが、「はげ頭料金」だ。たしかに理にかなっているが、日本人には抵抗がある?(笑)

☆バービーな人々









オーストラリアはこれで6回目だが、来るたびに感じるのが、オーストラリア人のバーベキューに対する情熱だ。(バーベキューのことをオーストラリアでは略して「バービー」という。)
オーストラリア人の国民食(?)と言ってもよいのではないだろうか。
町の地図を見ると、トイレや病院といったマークに並んで、ちゃんとバーベキューのマークがあったりする。(BBQの3文字)また、車を運転していると、バーベキューの標識(炎の絵)を見かけたりもする。
宿の案内を見ても設備案内でだいたいバーベキューの設備あり、という記載がある。
町を歩いていてもちょっとした公園には必ずバーベキューの設備がある。無料のものもあるようだが、コイン式のものが多いようだ。夕方になると仲間でわいわいと肉を焼いている。
とても安上がりで楽しい夕食だ。
日本の場合だと屋外バーベキューっていうのは、よしやるぞといった特別な行事みたいになってしまうが、オーストラリアでは日常の食事として定着しているのだ。多くの家は庭にバーベキューの設備を持っているそうだ。

帰国間近にメルボルンのアルバート公園という大きな公園をぶらぶらと歩いたが、やはりバーベキューの設備があった。金曜日の午後4時なのに、10人くらいのスーツ姿の男達が肉を焼き、ビールを飲んでいた。日本人的には不思議な光景だが、ここではありふれた光景なのかもしれない。

☆「グレート・オーシャン・ロード」のゴルフ事情
今回は2つのゴルフ場に行った。少しだけ報告しよう。
●ティンブーン・ゴルフ・クラブ
Willowglen Cottage から一番近いゴルフ場と聞いて行ってみたが、なかなかオーストラリアらしいゴルフ場だった。
どこがオーストラリアらしいかというと、ゴルフ場を管理している人がいないのだ。普段はいるのかもしれないが、今日(12月30日)は誰もいない。もう17時だからかもしれない。
受付にはきちんと説明書きがある。受付表に自分の名前を記入し、用意されている小さな封筒に料金を入れて投函するようになっているのだ。
ちなみに料金は1日11ドル(約800円)だ。1ラウンド800円ではなくて、1日800円というのがまたオーストラリアらしいところだ。
ちょっと困るのが手引きカート(バギー)が置いていないというところ。オーストラリア人はマイ・バギーを持ってくるのが当たり前のようなのだ。やむなくキャディバッグを担いでプレーしたが、慣れていないのでちょっと疲れる。
こんなふうに書くとちゃちなゴルフ場のように思われるかもしれないが、私に言わせたらちゃんとしたゴルフ場だ。
もちろん、手入れはあまりしていない。荒れ放題と言ってもいいかもしれない。フェアウェイの草は生え揃っておらず、クローバーがフェアウェイに生えていたりするし、グリーンもはげはげで、落ち葉が一面をおおっていたりする。
そういう点を除けば立派なゴルフ場なのだ。大きな木々が生い茂った林間コースで、とても風情がある。距離だってたっぷりある。(ミドルホールの平均的な距離は350mくらいか。)けっこうアップダウンもあるが、フェアウェイにあまりうねりはない。
一応18ホールのゴルフ場ということになってはいるが、実は14ホールしかなく、15番ホールからは1番ホールに戻ってしまう。(1番から4番が15番から18番を兼ねている。)まあこれはご愛嬌だ。

なかなか手強いコースだが、スコアを気にせずに練習をするのには最適だ。受付に人がいないのは書いたとおりだが、ここはコースにもほとんど人がいない。自分以外のプレーヤーはたまに見かけるくらいだ。いやプレーヤーとは言えないようなリラックスした人々もいる。小さな子供を3人も連れた夫婦とか、クラブは1本しか持たず犬を連れたカップルとか。もはやゴルフ場というよりも公園という感覚なのだ。
これぞオーストラリアのゴルフ場だと感心してしまった。

●ウォーナンブール・ゴルフ・クラブ
ここはティンブーン・ゴルフ・クラブのようなのんびりしたゴルフ場ではない。
クラブハウスもきちんとした建物だし、プロショップもあっていろいろなクラブやウェアを売っている。きちんとした身なりのスタッフもいる。
まあ、日本人的には普通のゴルフ場なのだ。
メンバーシップのゴルフ場でけっこう混んではいるが、ビジターもプレーさせてもらえる。
料金も1日単位ではなく、1R25ドル(約1900円)、ハーフ15ドル(約1100円)となっている。ちゃんと貸し出し用のバギーもある。(4ドル、約300円)
とてもトリッキーなコースで、ティーグラウンドからグリーンが見えないホールがほとんどだ。距離の短いサービスホールもあり、木々もティンブーンに比べれば少ないが、フェアウェイは狭い。また海に近いので風が強く、しかもとても冷たい風だ。総合的にはティンブーンよりも難しいといえようか。
ティンブーンに比べればフェアウェイの芝の状態はよいが、日本人の感覚からすればあまり手入れはされていない。日本の河川敷よりもちょっとよいくらいだろうか。でもグリーンの状態はまあまあだった。
ここでは2回プレーしたのだが、2回目はプレーを始めたのが遅かったので、プレーを終えたのが午後の8時過ぎだった。こんな時間だとプロショップは店じまいしていてもう誰もいないのだ。借りたバギーをプロショップの脇に置いて、車にキャディバッグを積んで帰るだけだ。日本のゴルフ場の場合、プレーを終えたあとにゴルフ場のスタッフがいないということは考えづらいが、オーストラリアでは当たり前のようなのだ。ティンブーンのように最初からスタッフすらいないゴルフ場だってあるくらいだから驚くことではないのだろう。
こうしたところにゴルフに対する日本とオーストラリアの感覚の違いを強く感じる。
何と言ったらよいか。オーストラリアのゴルフ料金っていうのは入場料みたいな感じなのだ。だから前金制だし、払ったあとはお好きなように、だ。
広大な土地を持った国だからこそこういう感覚になるのだろう。

☆未知なる生物
ゴルフ場は人間の手が加わったものではあるが、その土地その土地の自然が多少なりとも残っていて、土地柄が楽しめる。
これまで遭遇した生物で印象に残っているのは、フロリダ(マルコ島)の大量の蚊・ぶよ、ベトナム(ホーチミン)のイグアナ、タイ(ホアヒン)の猿、オーストラリア(ダンズボロー)のカンガルー等々いろいろなのだが、今回特筆すべき生物と遭遇したのだ。

ティンブーン・ゴルフ・クラブでのことだ。たしか4番ホールだったと思うが、第2打を打って上り坂のフェアウェイを歩いているとかなり前方に黒い物体を発見。どうやら動いている。
以前フロリダのゴルフ場で大きな亀に出会ったことがあったので、亀かと思って近づいていくが、どうも亀ではない。シルエットが甲羅のような滑らかな曲線ではなく、ギザギザとした感じなのだ。カメラを構え、少しずつ近づくが相手は逃げようとはせず、ゆっくりゆっくりと移動している。
どうにも妙な生物なのだ。全長が40〜50cmで全身がとげのようなもので覆われている。鼻が異常に長くて先端にあぶくがついている。今までに見たことはない生物だ。
不気味ではあるが、さほど危険な生物ではなさそうなので、さらに近づく。もう2mくらいまでに接近しただろうか。すると相手は動くのをやめ、不思議な行動にでた。地面にひれ伏したのだ。そしてぴくりとも動かないのだ。うーん、危険を察知して、死んだふりをしたのだろうか。2〜3分待ったが全然動かない。ひょっとして死んでしまったのかと思い、やむなくゴルフのプレーに戻ることにした。
だいぶ離れてから振り返ると、奴はまた移動を始めていたのだ。やはり死んだふりだったわけだ。
奴の歩き方には妙な哀愁が漂っている。例えて言うと、変な生物に変身させられた王子が、ああこんな姿になってしまったけれどまあしょうがないから生きていこう、とトボトボと歩いている感じなのだ。
さすがにもう戻るのも面倒でそのままゴルフを続けたが、妙に気になる生物だった。

あとで宿に帰ってガイドブックを見てみたところ、どうやら奴は「ハリモグラ」だったらしい。(「エドキナ」ともいう。)
ガイドブックを引用しよう。カモノハシの唯一の仲間である単孔目。体長40センチほどで、その名のとおり背中がトゲに覆われている。外敵が襲ってくると、土の中にもぐって、トゲだけを地上に出し、体を守る。長い粘着力のある舌を使ってアリを食べるおとなしい動物で、オーストラリア全土に生息している。
うん、奴はハリモグラだったのだ。納得。

☆旅の終わりに
メルボルンから香港に向かう飛行機の中でこの文章を書いている。
香港での乗継便の予約を取れず、今晩は香港に泊まる。明朝の便で日本に戻ることになっている。

実は今回はあまり天候に恵まれなかった。多くの日は雨が降ったりやんだりで、気温も低く、夏の旅行という感じではなかった。
でもこんなときもあるものだ。たまには寒い夏もよいものだ。

私のHPのタイトルは「みちのくにひとりたび」というものだが、たびというには今回は少々期間が短かったように思う。オーストラリアに8泊したのだが、どうも移動ばかりしているようで、あまり落ち着きがない。もちろん、1ヶ所にじっとしていたってよいわけだが、そうしょっちゅう来れるものでもないとついつい欲張ってしまう。
今回のレンタカーの走行距離は1083km。まあまあ走ったほうだが、オーストラリアの地図を見ると、本当にわずかな地域を往復しただけだ。オーストラリアに来るたびに思うのだが、のんびりと風に吹かれるままにたびをしたい。その思いは強まるばかりだ。
いつしかオーストラリアを何ヶ月もかけてまわりたい。気に入った町にあきるまで滞在し、また次の町を目指してハンドルを握る。そんなたびが理想なのだ。
しかし、現実の私はしがないサラリーマン。定年退職までおあずけか?いやいや、そんなに待ってはいられない。
なにか方法はあるはずだ。きっとあるはずだ。それほど遠くない将来に実現させたい。
そんな決意をしたたびであった。


感想はこちらから