Q1-3 鉄道事業法改正とは


A1-3 免許制から許可制へ 

 鉄道事業は公益性が高いので、これまで国は、需要と供給を勘案して、新規参入を制限してきました。これによって市民の足(交通権)が保証される一方、鉄道事業者は地域独占的に事業を進めることができました。しかし、今日では、鉄道だけが交通機関ではありません。バスや飛行機、自家用車もあります。鉄道事業者間だけの利害を行政が調整することはあまり意味をなさなくなってきました。むしろ、広く運輸事業者の間に適切な競争原理が働くようにした方が、お互いに利便性の向上を競い合うので、利用者にとってもメリットがあると考えられるようになってきました。
 こうして、規制緩和の潮流にも乗り、運輸関係の各分野で、需給調整による参入規制を見直す気運が高まり、その一環として国会の審議を経て1999年5月21日「鉄道事業法の一部を改正する法律」が公布されるに至りました。

 改正の主なポイントは以下の通りです。
 (1)鉄道事業への参入について、需給調整規制を廃止し、現行の免許制を、路線ごとに事業の実現可能性・継続性・安定性、輸送の安全性等を審査する許可制に改める。
 (2)旅客鉄道事業の退出(廃止)について、現行の許可制を、原則1年前の事前届出制とするとともに、運輸大臣(2001年1月からは国土交通大臣、以下同じ)は、退出後の沿線地域の公衆の交通利便の確保に関し、関係地方自治体等から意見を聴取する。
 (3)鉄道事業の運賃規制について、現在運用で行っている上限運賃制(運賃の上限のみを認可する制度)を法律で明記し、認可された上限の範囲内であれば、多様な運賃が設定・変更できることとする。
 (4)鉄道旅客の乗り継ぎ利便の向上を図るため、鉄道施設の接続に関し、現行の改善命令に先立つ自主的ルールとして鉄道事業者の努力を求め、事業者間の協議を促進させるとともに、運輸相の裁定・勧告について定める(「乗継円滑化措置」という)。
 (5)一定の技術力を有する鉄道事業者について、安全規制に関する認可の申請などの手続きを大幅に緩和する。

 乗りつぶし派にとって重要なのは(2)です。第二十八条の二では、廃止の届出は廃止しようとする日の1年前までに行わなければならないと規定しています。つまり、1年が経てば、地元の同意が得られなくても廃止に踏み切れることになりました。この新規定を活用して、廃止届出に踏み切ろうとする動きも、すでに報じられています(廃止が取りざたされる路線を参照。なお、軌道法については、廃止の事前届出制は今のところ、導入されていません。従って、軌道法に基づく営業区間を廃止する場合には、従来通り、廃止許可申請を出すことになります)。
 同条では、関係する地方自治体や利害関係人から意見を聴取した結果、「公衆の利便を阻害するおそれがない」と運輸相が認める場合は、1年を経過せずとも廃止できるとも規定しています。これに基づいて、廃止日を繰り上げる動きは各地で起きています。例えば、下北交通は当初、2001年5月1日の廃止を届け出ましたが、青森県と沿線自治体が廃止日繰り上げに異論を挟まなかったため、「公衆の利便阻害せず」と認める運輸相の通知書発行を受けたうえで、1カ月前倒しして廃止されることになりました。
 廃止規定との整合性を保つため、第二十八条第二項では、休止期間は「1年を超えてはならない」と定められました。ただ、何回も休止届出を更新すれば、従来と同様に、事実上は期限はありません。長期休止中の路線(休止・運休中の路線を参照)は、毎年、休止届けの更新を繰り返しています。

 なお、改正鉄道事業法は、「公布から1年以内の政令で定める日」に施行するとした附則第一条を受けた政令によって、2000年3月1日に施行されました。
 これを受けて、当サイトでも、例えば従来の「鉄道事業免許」を「鉄道事業許可」に改めるなど、用語を切り替えていきます。ただし、改正前の旧法に基づく免許は、改めて許可され直すわけではありません。改正法附則第二条の経過措置によって改正法による許可とみなされるだけです。このため旧法時代に行われた手続きについては、従来通りに「免許」などの用語が残りますので、ご注意下さい。

 ところで、1999年の改正では旅客鉄道事業だけを規制緩和することとし、貨物鉄道事業については附則第七条で、当分の間は従前通りの取り扱いとすることにしました。そこで、貨物運輸についてはさらに検討を重ねた結果、貨物鉄道だけでなく陸運全般の規制を緩和することとし、2002年6月19日、「鉄道事業法等の一部を改正する法律」が公布されました。
 ポイントは以下の通りです。
 (1)貨物鉄道事業の退出(廃止)について、現行の許可制を、原則6カ月前の事前届出制とする。利用者の利便を阻害しないと認められる場合は3カ月前の事前届出で良い。
 (2)貨物の運賃・料金については、上限認可制を適用しない(つまり、届出だけでよい)。
 (3)乗継円滑化等措置を、貨物の引き継ぎを円滑化する場合にも適用する。
 つまり、貨物については、旅客よりも一層、弾力的な運用がされることとなります。なお、改正法は2003年4月1日施行です。


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