雑記帳


ひさびさにクロスカントリースキー
11、2年ぶりにクロスカントリースキーをした。 連れと一緒に奥日光に行って、二人してよく滑り、よく転んできた。
いまでこそあまり珍しがられないクロカンだが(とはいえ情報はゲレンデスキーに比べて格段に少ない)、10年以上前になると名称すら不安定で、昔ながらの「ユングフラウスキー」という言い方をする人もいれば、「XCスキー」と略して呼ぶ人もいて、混乱に拍車をかけていたような案配だった。
最近では雪の上を滑るにしてもボードありテレマークありファンスキーあり、と多様化している。滑るだけでなく歩くのすら、クロカンだけでなくスノーシューとかも徐々に知られてきているようだ。奥日光でもすでにスノーシューをレンタルする店も出てきていた。


もう雪がないのではないか、と思った3月の春分の日の光徳牧場周辺だったが、心配はまったくの杞憂で十分すぎるほどの雪があった。11,2年前に1月ごろに来たときはところどころ地面が見えたり、戦場ヶ原では木道が雪の上に出ていてその上をスキーで歩いたりしたものだが、来るなら2月下旬から3月中頃までがよさそうだと思えた。そろそろ春の不安定な気候になるため、これ以降は雨が降ったりする場合がありそうなので電車とバスを乗り継いで行くにはリスクがあるような気がするのだった。
クロカンをやるのは久しぶりと言ったが、実は過去に2回のみ、しかもここ奥日光でしか滑ったことがない。でもその2回で、このあたりに設定されているほとんどのコースをまわっていたので、平坦路をのんびり滑走するぶんには昔の感覚がわりと早くよみがえってきたものだった。当時に比べて脚力も少々向上しているのでうまくなった気にさえなる。いっしょに行って初めてクロカンをやる連れが「うまいねぇ、見なおしたわ」とか言っていた。そりゃまったくの初心者に比べれば少しはうまくないとね。


コースは林道や遊歩道の上を通るようになっているのだが、そのコースからあまり離れない範囲でコースアウトして冬枯れの林間を歩いたりした。クロカンで歩くのだから、ひとのトレースばかり追っていたのではおもしろくない、というわけだ。つぼ足で歩けば膝下までもぐりそうな深さのところでも、さすがに沈まない。自由を獲得したような気になる。
とくに木道が雪の下に消えた戦場ヶ原では、滑りやすいところを選んで新しいトレースを付けながら歩いた。しかしあまりめちゃくちゃにトレースを付けると、あとから来る人が混乱して道に迷いそうだから、おおぜいの人が通った跡からはあまり離れないようにする。見上げれば雪煙にかすんで男体山がきれいに見える。振り返り見る日光白根山は雪雲の中だ。
狭い地域なのに、場所によって軽い雪と重い雪とあって、滑走しやすく気分良く滑れるところもあれば、登り坂でもないのにスキー板がなかなか前に出ず、ただすり足で歩くだけのところもある。しかも、右足は軽いが左足は重いなんてところもあって、そういうところでは右足だけで滑走してみるのだった。雪が重いのは気温が上がってきているせいだろうか、それとも雪質のせいだろうか。雪にも岩登りで言う「順層」と「逆層」とあるのだろうか、などと思いつつ、かかとの上がる板をなんとか滑らそうとする。


初めてクロカンスキーを履いた連れは何度も転んだことだしかなり疲れたようだったが、それでも粉雪の舞う清浄な雪原を歩き回ったのには感激していた。黒と灰色の木立が続く林床は真っ白で踏み跡もなく、自分たちがスキー板で立てるさっ、さっ、さっという音しか聞こえない世界はまさに別世界、あとから思えば夢のようにも思える世界だったようだ。「来年も来よう!」と、帰りのバスのなかで約束を迫るのだった。
2000/3/20 

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