チョーキング
 
 スキャロプトにした一番の理由がこの技のためと思われる。ちなみにステージ用ギター(現在のステージ用メインのエレアコはスキャロプト使用で、2005.10.14のオランダ公演Fires At Midnight中盤ソロで2回ほと半音チョークを実施している。)を除き、ALVAREZ、Taylor、Lakewoodあたりの指板はフラットのままである。つまりアコギはチョーキングしないのでスキャロプトにする必然性がない。意外にフラット指板を嫌っているわけではなさそうだ。
 初期Deep Purple の頃はスケールアウトすれすれの微妙なチョークが多かったが、1969年サードアルバム頃にはストレートなチョークに落ち着き、パフォーマンス的に大チョーキングを行う程度となる。
 A Light In The Blackのソロ中、3弦16フレの2音半チョーキング(B音をE音まで上げる)は辛い。薬指に中指を添えたチョーキングが一番多く、中指に人差し指を添えるパターン、人差し指1本の引き下げチョーク等がある。更に極稀に小指の引き下げチョークを行うケースもある。

      
 
 上記のArielのフレーズは、通常薬指に中指を添えたチョークアップ(かなりの頻度で人指し指に中指添え)をして小指(薬指というパターンも多い)で2弦6フレといったパターンで弾く3フレから6フレのドリアン型ポジション(使用スケールはDマイナー)が一般的だが、ブラックモアは使用頻度の高い5フレから8フレのフリージアン型ポジションで、このフレーズの直前まで展開してきたため、そのままポジションチェンジしないで、強引に上記のフレーズを弾いておりちょっとびっくり。力がいるためブラックモアもチョークの瞬間はネックを下へ振るようにしてまで力を入れている。(スキャロプトだと比較的楽にできるが、ノーマル指板だと苦しい。)映像で確認できなければ永遠にドリアンポジションで弾いてただろう。
            

小技では、あらかじめチョークアップしておき、ピッキングと同時にチョークダウンする技やいっぺんに弦2本をチョーク(Never Beforeなど・・)する技も見られ、特に70年代前半から中頃にかけて目立って使用している。
 
 80's年代
あたりからは、低音弦での引き下げチョークも多用するようになり、野太いチョークサウンドを聴かせてくれる。また、3弦あたりで普通のチョーキングを引き下げてかけているのがかなり伺え、正しくスキャロプト効果が絶大に作用しており、手首の回転が使えない指力のみの引き下げチョークも手軽に使用することができる。引き下げチョーキングを多用するのがブラックモア風フィンガリングの特徴だ。
 上述A Light In The Blackを25年ぶりに再コピーしてみた。全部で中間ソロ中14回のチョーキングを行っており、内5回が引下げチョーキングである。しかも中間ソロ開始から4回目のチョークまで連続して引下げチョークだ。ソロ冒頭の1・2回目は3弦2Fを人差し指1本で引下げて1音上げる。そして続く3回目の中間ソロ開始10秒後4弦4F薬指1音チョークや、4回目13秒後の3弦4F薬指1音半チョークあたりはかなり力技だ。3弦4F1音半引下げチョークは、1・2弦を押しのけて1弦と2弦の定位置の間まで3弦を下方向へ引っ張り、5秒ほど引下げたままD音でトレモロを実施したあと、3弦を2弦の定位置まで引下げを半音弱めD♭音にして素早くチョーキングビブラートをかける。そして、中間ソロ開始48秒後にもう一度3弦4F1音半引下げチョークが登場する。正に力技である。
                  

 Difficult to cure冒頭のベートーベンフレーズは次のように弦を引き下げて1音上げている。引き上げていた人は、是非引き下げてチョークしてみたい。
            

 同じくDifficult to cure独演より最後にレアケースを紹介。下の画像は小指1本で1音(D音→E音)引き下げチョークを実施している。スキャロプト指板の効果は絶大である。
                         


スラー(スライド)・グリッサンド 

 スキャロプトフィンガーボードによるグリス・スラーはあまり使い勝手がよいとはいえない。両方の指板をほぼ平等に弾いている者としての感覚は、やりづらいとまでは思わないが、フラット指板よりやり易いとも当然に思える代物ではない。
 チョーキングが難しいアコースティックでは重要な表現要素となってくることから自然なスラーをBNでは多様することとなる。視覚的に大胆なスラーを見分してみよう。画像はFires At Midnightを独演アドリブ中のワンフレーズだ。Eコードフレーズの頭音を1弦12フレで発動させ、次に1弦7フレを小指で開始する得意の4−7フレ分散コード位置にもってくアプローチを描いたのなら、当然小指でそのまま12フレから7フレまで滑らせ音を引き継ぐのが常套手段だ。一瞬の判断でスラーを大胆にキメてやろうとしたことが容易に感じ取れるフレーズだ。このフレーズ前の素早いFTA(フィンガートレモロアルペ)などは目を瞑って弾いてきたのに、本スラーの瞬間は間違わないよう、さりげなくポジションを確認していることからも、アプローチ程度を模索していく手癖アドリブとは一線を画す、意識を集中した正にキメ的なフレーズであるといえるだろう。
 少し評論じみてしまうが、インプロヴィゼーションが卓越してくると無意識下・意識下でのプレイ、または重意識下・軽意識下でのプレイが混在して演奏が組み立てられていくことに気がつくはずだ。
      
 更に見分していこう。フニャフニャしたヴァンヘイレン等のプレイと比較すると歯切れよいフレーズが多いのがブラックモアの特徴である。しかしコピーした音符を決してゲイリームーアのようにごり押しピッキングにて再現してはならない。例えば80年代後半以降のプレイでは、薬指で素早い半音のスラーアップ&ダウンを多様し、1音下の人差し指へプリングさせる小気味なフレーズをよく聴かせてくれる。完全に指癖となっており、この時期のフレーズを再現するには避けて通れないテクだ。あまりの小気味良さにスラーが盛り込まれていることを感じさせられないが、チョーキングがしずらいアコギなどでは重宝する。(ビデオ等で気がつくまではよくチョークにて実施していたもんだ。チョーキングとは微妙にニュアンスが異なるが、そういう指癖まで耳コピだけではなかなか判別できなかった。映像は偉大な教科書だ。ブラックモアがLazyをアコギで爪弾く様子がVTRにあったので管理人が再現してみた。途中3弦で4th-♭5thとスラーU&Dを実施してるので参考まで)下記はThe Spanish ArcherのDmによる冒頭フレーズを採譜してみた。更にB♭キーのSmoke On The Waterスタジオsoloでも2回ほど実施していたので同様にコピー録画してみた。
          

    

 上記D以降は薬指をそのまま2弦5FへスラーさせH&Pのヒネリを1回0.7秒ほど音符を伸ばし、次のフレーズは2弦・3弦の3フレから6フレ位置にて冒頭同様のパターンでスラーアップ&ダウンフレーズを連発させている。ポジションチェンジに伴うスラーについては、様々なギタリストが使用しているところであるが、ブラックモアについても当然必然的なプレイとして挙げられよう。
 このスラーU&DはWring That Neck のメインフレーズでも使用されているようであるが、そのメインフレーズを追っていくと唐突な指使いとして小指のスラーダウンを実施しているので下記に紹介しておこう。

                 

 スラーさせなくともコピー後の結果音に格別な異質性を感じないため、こうなってくると耳コピでは絶対にスラー使用の実態はわからない。ちなみにメインフレーズ以外でも同曲アドリブにおけるキメの定番フレーズ中のメジャーアプローチで同様の小指スラーダウンを下記のとおり使用している。

                        

 そしてこの小指スラーダウンを活用したリフの典型的な例として、Love's No Friendが挙げられよう。小指でスラーダウンし、そのままプリングオフにより減5度-完4度-短3度と処理する。出音のF音だけダウンで、残りはすべてアップピッキングでフレージング。

  

 もうひとつ、管理人にとって前項の人差し指のみの引き下げチョーク並の衝撃初見のRB風フィンガリングを発見。70年代後半以降、音符そのものは数々登場するブラックモア節の1フレーズの末尾に持ってくることが多い定番で、何度も耳にしているものである。今回は1995.11.11のOver The Rainbow←ボトルネックを放り投げた後のアドリブ中、Dペンタに2th、♭5thを混ぜつつ1弦からH&Pを伴いつつ下降させ、フレーズの締めに下図の3音を持ってくる部分を検証してみた。5弦を人差し指で1音スラーアップして、4弦の同フレへそのまま人差し指を使用する指使いだったとは・・・・管理人は過去の様々な同様フレーズコピー場面で、ハンマリングで薬指、そして異弦同フレへも素早く薬指対応としていた。実際、1993年のオフィシャル映像中、Dificult to cure中間部のF#mアドリブソロで薬指対応で演奏する手元を確認できる。しかしRB的には異弦同フレそのものは手癖となっているようだが、使用指については、事案ごとに臨機応変に対応していると見るべきであろう。あるいは、この日は人指をスラーさせポジションチェンジ後にアドリブを継続しようとしたものの、ロングサスティーンを咄嗟に選択したためフレーズの終いの3音がすべて人差し指との結末になったに過ぎないのかもしれない。
 ちなみにリアP.Uでフレージングしてきたのを↓「B人」部分でフロントP.Uに叩き込んだ後、ブレイクまで人差し指でサスティーン&ヴィブラートを続け、ブレイクと同時に再びリアへ切り替えSpotlight Kidへと進む。完璧とは言えないまでもYou Tubeでの耳コピは目コピも加わり、ピックアップチェンシのタイミングまでコピーすることが出来るので大いに重宝する。
   

 
同種の運指について、1995.11.16大阪でのTemple Of The Kingソロ中においてもyou tube映像にて垣間見ることができる。こちらは5フレ〜7フレで実施だ。
  

 同曲ソロ1995.11.3London公演では更に異弦同フレ3音に跨り、3弦5フレのC音ビブラートまで5音連続人差し指だ。

 

 

 音程を気にしないグリッサンドについてはMachine Head Live1972 のBlack Night 後半ソロで、大胆なグリスを連発しているのを映像で見ることができる。感情が高ぶったときに一過性として飛び出す程度のものだろう。Stargazer、A Light In The Black等ではタイミング的に効果音として使用している。
 ちなみに前述の1995Dusseldorf、Ariel 前奏人差し指のみチョークの直後、6弦5フレから1フレにグリスダウンした後、即オクターブ上の13フレまでノンピッキングでグリスアップしている。この日のライブは他にも、Too Late For Tears のソロでも6弦のグリスアップをフルボリュームのブースト音交じりに派手にぶちかましている。

          


スタッカート 

 リッチー節の根幹をなす非常に重要な技である。彼のプレイは全体がスタッカート気味であり、かなり速いプレイも引っ掛るようなフレーズで、ピッキングハーモニクス音を少し伴いつつスタッカートが存分に散りばめられている。本人は意識してやっているのではなく、自然と滲み出てくる個性そのものなのであろう。76年時におけるMistreated liveの中間部ソロパート、ボリューム下げたペンペンサウンドにミュートがかったアドリブフレーズ群のかっこいいこと・・・・
 バッキングプレイにも当然に反映されまくってて、これが足りないとダラダラ〜とだだ流れるだけのプレイになってしまう。プロ・アマ問わずこれが足りないため、コピーバンドの多くは見かけは似てるんだけど、ギターフレーズがちょっと・・・てのが多い。(一番似てないと感じる理由は、コピバンの多くはきれいに、かつ、きっちり弾きすぎ・・てとこかな。管理人はいい加減なアバウトプレイをマネるのが一番得意です・・・ミスプレイなんかは天然で超得意!) 意外とマルムスティーンのような超速弾きのほうが、手さえ動けば完全に模倣できたりする。
 
 さて、無意識スタッカートについて講釈たれたが、当然に意識してのスタッカートもプレイしている。「気味」ではなく、明らかに狙ったスタッカートピッキングが第2期Deep Purpleの頃に特に目立つ。Lazyはスタジオ、ライブとも区切りよいフレーズが聴ける。No No Noのスライドギター後のフィンガリング部分も典型的だ。
 Album、The Green Bullfrog Sessionsは全般を通してスタッカートフレーズの塊である。サスティーンはどこかに忘れてしまったようで、音符は区切られまくっている。Tarot Womanのソロ冒頭及び最後あたりのキメフレーズにおいても、小気味よい意識したスタッカートを聴かせてくれる。
       
 方法はほとんどがピッキングした後、すぐにピックでその弦を押さえて音を殺すといったやり方のため、自然とピッキングは上方向気味に弾いてすぐ弦にまたピックを戻して音を殺す方法が中心となろう。ちなみにSpotlight Kid のメインリフも ズンチャァ、ズチャズ、チャーズ、チャッズ、チャー・・・とスタッカート気味に弾く(この場合「ズ」の6弦根音B部分は後述のミュートを使用し、3・4弦部分の重音「チャ」部分は左手を素早く弾いたあとに指板から離す方法でないと無理)ことが重要です。よくあるのがズンチャー、ズチャー、ズチャー、ズチャー、ズチャーってパターン。ダラダラーって投げやりに聞こえる。表現むずかしい・・・。