オクターブ奏法
 
 定番のように使用し始めたのをはっきり確認できるのは、1973年ライブYou Fool No Oneのソロからで、Machine Head Live1972のLazy導入部でも演っているが、当時はまだ定番ではなく異質感(スケール的な要素が濃いだけかも・・・)を感じさせるフレーズのためか、ギランとグローバーが驚嘆してブラックモアの方を見ながらはやし立てている様子が見れる。
    
 スタジオではBring On The Nightが典型例。LiveではCatch The Rainbow、I SurrenderLove's No FriendTearin' Out My Heartなどのロングソロ中に組み込まれることが多い。人差し指で低音弦、小指で高音弦をオクターブで押弦する。'77年10月Munich のCatch The Rainbow 後半ロングソロやバッキング使用時等、スローテンポ時には親指、薬指で押弦しているのも確認できるが、機動性が悪いためI Surrenderクラスのテンポで演奏する際には人・小指の運指方法である。右手は低音弦を親指、高音弦を中指によりフィンガーピッキングでメロディアスなフレーズをスライドさせながら爪弾く。


 

             

 バッキングにもStill I'm SadMistreated などに登場し、省略コード代わりに使用することもある。1980年〜1984年ころのPop Rainbow 時代のゆったりしたマイナーメロディを表現するのによく使用されていた。その後あからさまなに実施せず影を潜めていたけれど、1995年10月10日Berlin公演のTemple of the King中間部ギターソロにおいてCatch The Rainbow張に展開しているのが聴ける。古くはPurple3枚目のアルバム中、バラード曲Lalenaでも全編を通してオクターブをプレイしている。
 

 ここまでのオクターブ奏法の解説を理解してもらったうえで新たな考察を! 1弦音活用のオクターブ下の押弦音について、今まで下音は3弦人指とし中2フレット空けて小指で1弦音と推測して演奏してきたが、間違いだった。小指で中2フレは弾きずらく、目測誤り音程も外しやすい苦手意識の高いプレイ(Wring That Neck 1969 Essenのコピー録画では間違いポジションでやってもうた。)だったのだが、遂に2018年4月8日モスクワ公演のI Surrenderソロ中に答えが映っていた。こんなポジション使ってたんだ。1・4弦に跨るとはいえ、中1フレの人・薬なので弾き易く今後重宝することとなろう。
   

フィンガーピッキング

 ブラックモアは複数弦を同時に鳴らす場合、フィンガーピッキングをよく用いる。↑上記のオクターブ奏法しかり、Difficult To CureCatch The Rainbowの前奏や曲間に小品を和音を分散させつつメロディーを弾く場合、ハードなソロ中でも6度のタブルノートを特に連打する場合なんかは、スルっと人差し指と中指の間にピックを滑り込ませ、基本的に親指と中指のツーフィンガーでフィンガーピッキングを行い、足りない場合には薬指を使用する。←このことは後述するが非常に重要なポイント!とにかく神業のように素早く、気が付いたらフラットピッキングにパッと戻したり、また、スルっと持ち替えてフィンガーピッキングになってたり、混ぜこぜでポンポンフレーズが進んでいく。張りのあるピックトーンと比較し、柔らかい音質を表現したいときにも重宝される必要不可欠のテクであり、更にスイッチ奏法をやるときも、同様にピックを持ち替えて右手親指と中指でスイッチをつまんでガバババハーってやっているようだ。
 ちなみにチキンピッキングについては親指・中指の完全フィンガーで実施していると思われ(A Twist In The Taleのメインリフは典型例)、フラットピッキング+中指or薬指フィンガーの類は基本的に封印しても構わないと判断したいが、実際のところはどうだろう・・・・・・あのピック持ち替え連発映像を観る限り、完全な癖と化しており、ピックを正規に親・人で握ったまま残りの指でチキンピッキングというのはブラックモア奏法として挙げるには強烈な違和感を覚える。

 
 親・中ツーフィンガーについて最初に気がついたのは16歳の頃、Album-Deep Purple In Concertのジャケット裏側にブラックモアがブラッキーのストラトをフィンガーピッキングで爪弾いてる写真があり、しっかりとべっ甲を右手人差し指と中指で挟んでいるのが写っていたからだ。これが本当に最初は難しい。私も最初はよくピックを落としたものだが、クセまでに到達すると無意識にできてしまうから不思議だ。(ちなみにyou tubeでジムサリバンのフラットからフィンガーピッキングへの映像を何気に観たことがあるが、ピックを挟み込む様子がRBそっくり。また左手小指がピンと伸びてるフィンガリングスタイルもそっくり。RBの師匠は間違いなくジムサリバンだ。)また、長時間に及ぶ場合はピックを口に咥えたりもしているようだ。

         
            
            
                 
 1995年以降のステージあたりでは、使用率はかなり高く(この頃のステージリストで、フィンガーピッキングしていない曲は多分ない)、通常のディストーションのシングルノートでもフィンガーピッキング↓下記画像(Temple Of The King solo1996 Rondo, Gothenburg, Sweden)しまくっている。おそらくダブルノートプレイが多く、ピックを持ち帰るのが面倒なため、そのままフィンガーで弾き去っているものと思われる。
 

 1995年の舞浜では、演奏中にピックを落としたため、Too Late For Tearsのメインリフとサビのコードカッティングをフィンガーピッキングで弾き続けている。
  
 
1995年イタリア公演のAriel前奏からフィンガーとフラット(ピック)の弾き分けを映像で確認したので、リンク先を参照してほしい。
 1 フラット 
(29秒)冒頭はずーとピックでピッキング
 2 フィンガー(14秒)同時重音を弾くためついにフィンガーピッキングにチェンジ
 3 フラット (12秒)3度のチョーク同時重音からチョッピングはピックにチェンジ、ピックを握り直す時間は1秒(0.8秒程)もない!
 4 フィンガー(4秒)たった4秒の同時重音のために再びフィンガーピッキングだ。P3で最後にピッキングした3弦7フレE音後、ピックを滑り込ませ、ピックアップチェンジ(フロントへ入れる)を済まして親指で6弦開放を鳴らすまでの時間は1秒強(1.2秒程)しかない。
 5 フラット (6秒)チョッピングを実施するため、極めて短時間にまたもピックを掴み直す。
 6 フィンガー(10秒)最後は同時重音は実施しないが、Eコードのトーンを生かしたフレーズをフィンガーで実施して締めくくる。
 
 リンク先は娘のキーボードでバッキング奏でようとしたけど、アコギでアルペジオした方が手っ取り早いので諦めました。リンク先39秒〜42秒の下図B♭の重音拡幅フィンガーフレーズ、前もって「出そう」と策略立てておかないと私には出せないわ。この拡幅ポジションが即興で出るか(感服)・・・・・・・。

         

 Blackmore's Nightに至っては、ハイスピードフィンガーピッキングをマスターしており、Spnish NightsThe Storm などのフィンガートレモロアルベジオ(FTA)ピッキングはかなり難しい。Live独演アドリブイントロ中、数曲においてライトハンドトレモロフィンガリングを披露しており、定番的なテクニックになりつつあるようだ。才能をもともと持ち合わせているとはいえ、アコースティックは苦手だと言明していることから、ブラックモアもかなり練習したのではと思われる。DVD-Paris Moon(Fires At Midnightの独演)によると、FTAの大半は親・人・薬の3フィンガーによるものと思われ右手中指は伸ばし気味にして使用しない。

 
 
 単に速いだけではなく、スイングした独特のニュアンス(完全な均等譜割りとならない音符のズレ、初音にアクセント!を。譜割り上は均等に表現せざるを得ないほど微妙な時間の相違)を左右のフィンガリングで奏でなければならない。(親指の連発をスムースに行えるかがスイング感を出すためのキモ。)
  ↑のFTAは3フィンガー上昇パターンで右指は親-親-人-薬の4音1サイクルの順番で弾き、ダンダララ、ダンダララ、ダン(親)ダ(親)ラ(人)ラ(薬)、・・・・・←(親指連発のほか、中指を使用していないことにも注目)といった強烈なウネリを伴うノリで速弾く。
    

          

 こちらの↑右指は親-人-薬の3音1サイクルの順番でダララ、ダララ、ダ(親)ラ(人)ラ(薬)・・・・・といったノリ(スイング感)で弾く。こちらの方は先程の4音1サイクルパターンより高速な雰囲気に聴こえる。ダーン、ダーンとベース音を伸ばしたまま残りの5音をトレモロで被せるわけだが、スイングが若干混じるためダラララララ、ダラララララ・・・ではなくダララ、ダララ・・・・と聴こえるわけだ。ちなみに本人はトレモロ奏法の認識で指を素早く動かして弾いてるだけで、結果音がそう聴こえてしまう!という正に人間味溢れる微妙な不正確さゆえの世界である。スイングは雰囲気をつかむことが重要で、視覚に頼り音符とか、数字を持ち出し頭で思考してタイミングを認識しようとしても混同することとなる。(ほとんどセンスの問題である。) ストラトでピック弾きばかりしていた身にとってFTAは、右手の試練!ギターを弾くなど人間業とは思えなかった弾き始めの頃の記憶が蘇る。
 再びFires At Midnight Live独奏による定番FTAフレーズを・・・基本型を録画してみたが、当然、ライブごとにご本人は様々に崩して、インプロしまくってます。
          

 更にベース音なしの高速パターン↓はダララララララララ・・・・とスイング感は無視してトレモロ的にただ素早く弾くこととなる。


      
               ↑未使用の左手小指は絶対に曲げないこと!
 
 FTA以外のピックを持たないアコギによるフィンガーでの速弾きピッキングを観察してみると、ピックを持たないことから親・人指あたりをメインとしているようだ。従来のストラト2フィンガーは長年使用し続けてきた癖奏法のため、均等に役割分担を与えるように矯正していない。バッキングのアルペなど上昇時の巻弦6〜3弦は親指、2弦は人指あたり、1弦は薬指といった具合で、下降時は人指あたり1本で2弦〜4弦を弾いてしまい、親指は使用しないパターンが多い。かと思えばシングルのメロやダブルノートメロでは2弦あたりまで親指でピッキングしたりしている。親・人メイン、薬サブといったところか。下記はその一端を示してみたが、アップ映像においても複雑な指の動きを完全には追いきれなかった。

    ニュースステーションより→Spirit Of The Sea
        

 更に1968年のDeep Purpleデビュー時のプロモにおいても現在と同様の方法でフィンガーピッキングを実施していることから、この親・人・薬のスリーフィンガーはプライベートでも長年弾き続けている癖であるとともに、音楽性、フレーズなどは変遷しつつも比較的ギター歴の浅い初期に運指方法は確立され、基本的にその使用方法は引き継がれて(見直す必然性があるわけないが・・)現在に至っているといえよう。

      
    
 各指の使用頻度は親40%、人50%、中0.1%(実際には0%に近い)、薬9.9%の割合といったところが管理人の主観だ。ストラトプレイ時におけるピックを挟み込んだ親・中メインフィンガーピッキングにおける
中指の使用は、ピックを持たない純粋なアコギ等のフィンガーピッキングにおける人差し指の代替措置だったのだ。つまりピックを挟んだままのフィンガーピッキングでは、単に人差し指が使用できないため中指を使用していただけで、使用できるなら人差し指の方が使い勝手は上ということだ。
 Lazyをアコギで爪弾く様子をコピーしてみたので参考まで→2フィンガーLazy
 意識外の動きだろうから、本人もどう弾いているのか説明はできないだろうし、結論として模倣者側はなるべく見た目が似るようにプレイすることこそが最善策かと。
          
 この項で一番訴えたいことは、ストラト時等のピック挟みフィンガーピッキングは親・中メインの2フィンガーで!アコギ等の純粋フィンガーピッキングは親・人メインのサブ薬、中指は忘れろ!である。


チョッピング

 ブラックモアはフレーズの弾き出しにチョッピングを用いる頻度が高い。昔から随所にノイズ混じりのチョッピングが聴ける。特に1974年のライブから演奏し始めたBlues導入後は、使用頻度が高くなったと推察する。
 特にフレーズが1弦弾き出しの場合は、無造作にチョップしまくっている。また得意のアルペジオをミュート気味に押さえておき、コードトーンを盛り込んだチョッピングも大胆に行う。I SurrenderDanger ZoneGates Of Babylon あたりが思い当たる。 コードトーン利用型は狙ってチョップしていそうだが、無造作型については、おそらく大半が無意識下で弾いていると思われる。

        
 
 On Stage16th Century Greensleevesソロで、キーボードとのキメ直前に連発しているチョッピングフレーズ(人差し指及び小指で、すべての弦をミュートしつつ人差し指の腹で1弦を押さえておき、ダウンチョッピングと同時に4弦付近にあった小指をすかさず1弦にもってきて人差し指にプリングする。見かけはすんげぇ派手でかっこいいフィンガリングに見えるが、ノイズと1音半下へのプリングだけの単純なもの)は、彼の得意技であり、私もかなりアドリブに利用させてもらってる。このブラックモア節は、古くはAlbum-Deep Purple のApril ラストのソロWring That Neckのlive等で連発しているのが聴けるし、Mar.13th.1984年(武道館初日の録画取りのなかった日)のSpotlight Kid エンディング、1995Dusseldorfのライブ、Difficult To Cure のソロに入った途端あたりで連発しているのが聴ける。'98のギリシャでのライブにおいてもアンコールのストラトプレイ中に聴くことができ、現在も続いている最古級のフレーズで、単発についてはあちこちに登場し、30年以上も続けている指癖である。

   

 BNアコギのフィンガーピッキングにおいては、Fires At Midnight(A Knight In York中間ソロ)のような独演ソロを始め親指を大胆に6弦側より振り下ろして1弦を鳴らす方法で実施する。この1音チョップについては、2010年代のアドリブ中に散見されるようになり、Journeyman(A knight In Yorkソロ)やDancer Of The Moon後半ソロなどのストラト節でも頻繁に使用されいる。正に最近の必中手癖といえよう。