ジャズって、何?

ジャズには、ちょっと分り難い部分があります。そもそも何を聴けばいいのか、分り難いのです。
普通、音楽を聴く時には、リズムに乗って、メロディや歌詞を聴くものです。ですよね?
(クラシックだと、和音や各声部の重なりや、曲の展開を聞くこともあります。)
でも、ジャズの場合、たいてい歌詞もなく、メロディの輪郭もはっきりしません。
音楽で何を聴こうと個人の自由です。
でも、ジャズの場合、演奏者が即興的に演じるソロを聴くのが、聞き方の王道です。
「メロディがはっきりしない」と書きましたが、実ははっきりしています。
ただ、古いアメリカの流行歌がテーマになることが多いので、普通の日本人は、それを知らないだけなのです。
「All the Things You are」とか、「Easy Living」とか、ジャズのスタンダードといわれる曲の多くは、半世紀以上前のアメリカの流行歌です。
アメリカ人ならどこかで聞いて知っていると思います。
また、名前が違っても、コード進行が同じで、実は(例えば「All the Things You are」や「I Got Rhythm」と)同じ曲ということも、よくあります。
そうした曲を元に、演奏者がそのバリエーションを聴かせるのが、ジャズの演奏です。
元の曲をいかに展開し、いかに素晴らしいソロを聴かせるかという点に、音楽家の腕の見せ所があります。
優れた音楽家は、聞き手の予想を超えた、素晴らしいソロを取ります。
だから、テーマとして選ばれた曲が、即興的にどのように変奏されていくのかを聴くのが、ジャズを聴く醍醐味です。

ジャズのよい演奏は、スウィング(swing)します。
スウイングとは、本来は、揺れる(=swing)ようなジャズの四拍子のリズムを意味し、ベニー・グッドマンなど、30年代のジャズは「スウィング・ジャズ」と呼ばれました。
でもジャズのリズムは四拍子である必要はありません。八拍子でも16拍子でも、スウィングします。
だから、総合的に考えると、スウィングとは、ジャズの、<身体が揺れるような効果をもつ、心地よい演奏の疾走感>だと言えるでしょう。
それは、ジャズ特有のリズムと、それに乗って行われる演奏の自然発生的な成長感が重なり合って生まれるものです。
「乗ってる」と昔は言いました。
「スピードが点を線に変える」(@ドゥルーズ/ガタリ)のです。
だから、こういう曲を聞きたいとか、メロディに捕われ過ぎると、ジャズは分り難くなります。
そういうことを踏まえた上で、評論家の寺島靖国氏は「ジャズはメロディだ」と言いました。一種の逆説です。
確かに、好きなメロディがテーマだと、ソロの内容もよく分り、演奏をより楽しめるのも事実です。
でも、やっぱり、ジャズはソロなのです。
(ソロの演奏の仕方には、いくつかのパターンがありますから、それに慣れることは必要でしょう。)

注;ソロ=アドリブ=即興演奏(インプロビゼーション)


→音楽喫茶に戻る
→村の広場に帰る