秋吉敏子

指揮者のピアノ
秋吉敏子ジャズオーケストラよりも、ピアノトリオの演奏が好きです。そもそもオーケストラ自体、余り聞きたい気分にはなりません。自宅のオーディ装置や、ましてやパソコンのスピーカーでは、手に余ります。大音量で聞いたりすると、近所迷惑でもあります。
ピアノは小さなオーケストラだと言われます。クラシックでも、指揮者がピアノを弾くことがありますが、そういう時、指揮者は、専門のピアニストのような華麗なテクニックはなくても、音楽性が豊かで、いい演奏を聞かせてくれます。やはり自分のパートとか目先のフレーズとかに囚われず、音楽全体の構造をしっかり掴んで演奏するからでしょう。秋吉さんのピアノにも、そういう雰囲気があります。

若い頃の秋吉さんは、バリバリのパウエル派のピアニストでした。海外に出るというのが、まだ大変な時代に、単独、海をわたり、以来本場のアメリカでジャズプレイヤーとして活動してきたというのは、それだけでも凄いことです。
岩波新書『ジャズを生きる』に書かれていますが、アメリカでは大変な苦労もあったようです。
70年代後半に、自分のジャズ・オーケストラを結成し、作曲し、指揮し、素晴らしい作品をいくつも発表しています。
個人的に好きなのは、「私もやっとピアノで言いたいことを言えるようになった」と御本人が書いている70年代後半のトリオ録音。
「Dedications1」とか、「Finesse」とか、曲も演奏もよく、誰にでも勧められる作品です。
最近の、ブラジル音楽を演奏した「Yes, I have no 4 beat today!」も私は好きです。

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