クラシックの私的名盤

モーツァルト
ピアノ協奏曲―グルダ
(全集ということになると、ペライア)
ヴァイオリン協奏曲―クレーメル&アーノンクール
最初に、FM放送か何かで曲の途中から聴いた時には、現代音楽の演奏かと思いました。考えてみれば、同時代の人たちにとってモーツァルトは「現代音楽」だったのでしょう。そういうことを気づかせてくれる演奏。
最近、Brilliant Classics から廉価版で出たカルミニョーラ(Giuliano Carmignola) の古楽器による演奏も素晴らしい。―というようなことを書くと、他にもいろいろ出てきそうですが、頻繁に聴くような曲でもないし、今のところ、この二種類で満足しています。

ピアノ独奏曲―ピリス
今、選んでいます。よく聴くもの以外は処分しようと思って、クリーン、シフ、ヘブラーの新盤とかは売りました。左手が重いのが好ましくありません。ギーゼキングもいいのですが、若干潤いに欠けます。
今のところ、ドイツ・グラモフォンから出ているピリスの新録音が一番文句のつけ所が少ない―と言うか、これがベスト―という印象を持っています。同じピリスの旧録音(Denon)は、残響の少ない録音のせいもあって、初々しいですが、ちょっと線が細い感じがします。
モーツァルト弾きとして有名なヘブラーは、フィリプスに録音した旧盤の方がいいと思います。とりわけ初期のソナタなど、絶品。
最近出たグルダの三枚組み(The Golda Mozart Tapes)も、モーツァルトを真剣に、しかも楽しんで弾いていることが分かる、素晴らしい演奏です。マスター・テープが紛失してしまい、残ったカセット・テープから取られているため、音がイマイチなのが本当に残念。

ヴァイオリン・ソナタ―ピリス&デュメイ
ついでに、ヴァイオリン・ソナタも、ピリスとデュメイのものが私的には一番よさそうなのですが、なぜかCDは一枚しか出ていません。なぜなんでしょうか。
次点として、ツィンマーマンとロンキッヒ、及び、(LP時代によく聴いた)シェリングとヘブラー。
ちょっと変わったものとして、Naxosから出ている西崎崇子とハーデン(何枚も出ている西崎&Jando の方ではない)。ヴァイオリンが蚊の鳴くような音色で、最初聴いたときには録音のミスかと思いましたが、後で聴き直してみると、いつの間にかピアノの音を中心にして、ヴァイオリン伴奏つきのピアノ・ソナタを聴いている気分になります。モーツァルトの時代のヴァイオリン・ソナタというのは、そういうものだったと言われていますし、これはこれで面白い。

交響曲―去年、10枚1500円という、余りの安さに釣られて、アリゴーニの交響曲全集を買ってしまいました。比較的ゆっくりしたテンポの室内楽風の演奏で、さすがに後期の曲は、「そこの所、もっときびきび出来んか」などと言いたくなって、少し物足りない気がしますが、全体として十分楽しめます。
モーツァルトの音楽は、素晴らしい演奏で聴けば、魂を揺さぶる、本当に天才の作品だと思いますし、普通の演奏(あるいは子どもの下手な演奏)であっても、それなりに楽しめます。これはバッハも同じで、曲そのものがしっかりしているので、演奏を選ばないのでしょう。―と書くと、アリゴーニ盤が下手だと言っているように聞こえますが、そんなに下手だという訳ではありません。よく歌う、素朴な味わいを持った演奏だと思います。
学生時代は、セルのレコードを愛聴していました。今持っているCDでは、スイトナーでしょうか。オケはシュータツカペレ・ドレースデン(→10枚組これでもいいのか?→6枚組)。やはりアリゴーニ盤とは格が違います。
ホグウッド=シュレーダーの全集も持ってますが、余り聴きません。全集ということなら、下の「全集」中のリンデンの方が、より好ましいと思います。

魔笛―CDは10セットくらい持っていますが、どれがいいのか、考慮中です。一番よく聴いたのは、ベームですが。

レクイエム―ニコール・マット指揮・南ドイツ室内オーケストラ
下記全集のものです。モーツァルトのレクイエムは、<ある日、黒ずくめの陰気な男がモーツァルトの家の戸を叩いて、名前は言えないが、ある有名な方のためのレクイエムを作曲してほしい、と依頼してきた。それをモーツァルトは自分のことだと思い込んで作曲を始めた>という有名なエピソードが示すように、死の予感の中でモーツァルトが自分のために作曲した、曰くつきの曲ですし、また一部に弟子の手が入っている未完成の遺作ですから、あまり気軽に聞こうという気分にはならない曲です。全集を買ったので―もしかしたら20年ぶりくらいに―聞き直してみました。一曲目から普通ではない悲愴な雰囲気が漂っていますし、三曲目の短くて激しい「怒りの日(dies irae)」(雷にでも撃たれたような気分)を経て、八曲目の悲しみに満ちた「ラクリモサ」に行く辺りでは、完全に心を奪われてしまいました。ここには何か激烈な感情が表現されています。しかし、どんなに悲愴な激しい感情であっても、清明な美しさのうちで描かれていくところが、モーツァルトです。そんな天才の最後の作品。演奏も名演です。

モーツァルト全集」(Brilliant Classics)買いました(全170枚。フランスのAmazonから、送料込みで\13000程度)。値段が値段なので、過大な期待はしていなかったのですが、聴いてみると、演奏は意外と高レベルで、名演と言っていいものが多いのは、嬉しい誤算でした。難点を言えば、自社で録音した古楽器による演奏と、他社の音源を買い取って出している現代楽器による演奏がいかにもちゃんぽんという感じに混在していて、それが「全集」としては中途半端な印象になっている―という点でしょう。全てが古楽器による演奏だったら、本当に素晴らしい「全集」になったと思われます。それくらい、古楽器による演奏がいいのです。古楽器の本場オランダの底力でしょうか。交響曲とかオペラとか「レクイエム」とか、演奏の質の高さは感動ものです。


→音楽の聞こえる喫茶店
→村の広場に帰る