2009.04.08
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「アウトラン」の曲名入れ替わり事件
   
原: 「アウトラン」で曲を自分で選べるっていうのは画期的だったと思うんですが、あれは誰のアイディアだったんでしょうか?
   
Hiro: 裕さんは自分が考えたって言ってたよね(笑)。
   
光吉: まぁ、一般的にはそういう風に言われてますよね。
   
原: 一般的にはですか(笑)。
   
Hiro: でも、デザイナーがラジオの画面を作ってて、「ラジオなら曲を選べるようにすればいいじゃん」って言ったような気もするんだけど(笑)。
   
光吉: あはは(笑)。
   
Hiro: よく覚えてないので、ぼやかしておいて(笑)。でも、最初は画面に手は無かったんですよ。車のダッシュボードとしてのデザインだった気がする。で、曲が選べるようになって、選べるよっていう矢印を画面に出すか出さないかを裕さんに聞かれて、最終的に出さなくていいというのは、俺が決めた。
   
原: (笑)
   
Hiro: 分かる人だけ選んでくれという。
   
原: あと、よく言われる話だと思うんですが、「アウトラン」で“Splash Wave”と“Passing Breeze”の曲名が実は逆じゃないかという話なんですが、あれは忘れたってことでいいでしょうか?(笑)
   
Hiro: いや、忘れてはないけど(笑)。
   
光吉: 一生言われる(笑)。
   
Hiro: ゲームで曲名を出した時に本来の曲名と逆になってると思うんですよ。でも、世の中に出てるもの、CDとかが逆になってるから、どっちがどっちだか分かんない。
   
原: “Passing Breeze”が“Passing Wind”や“Passing Time”だったという話もあるんですよね。そうすると今の“Splash Wave”が“Passing Wind”や“Passing Time”だったんですかね? どの段階で曲名が入れ替わったによりますが、現在世の中に出ている曲名が正しい可能性もありますよね。
   
Hiro: もうどっちでもいいです(笑)。
   
  (一同爆笑)
   

 
●「アフターバーナー」のメロディの有無
   
原: 「アフターバーナー」についてお聞きしたいんですが、当時の雑誌記事によると、ギターについて「サンプリングを使ってるのでチューニングが微妙に狂っちゃうんで、実はちょっとおかしいんですよ。あまりゲームセンターで録音しないでください。今度レコードでちゃんとしたのが出ますから」みたいなコメントをHiroさんがしてるんですが、ということは、CDに収録された「アフターバーナー」は基板から録音したものではなかったのでしょうか?
   
Hiro: 基板は基板ですよ。開発ボードですけど。
   
原: CDにはメロディも入ってますが、メロディ入れたヴァージョンのROM(ロム)を作ったんですか?
   
Hiro: 開発ボードなんで、実機とほとんど同じなんですけど、ロムじゃなくてICE (アイス=In-Circuit Emulatorの略)っていう、エミュレータだったんです。データは焼かないといけないけど、プログラムの部分はICE (アイス)の中のRAM(ラム)の部分にロードすれば音が鳴らせたんです。CPUの代わりをするっていう。
   
原: なるほど。
   
Hiro: その機材一式をスタジオに持ち込んで収録したんです。
   
原: メロディが入ってることについては賛否があった思うんですが、CDにするなら曲としての完成したものをCDにしたいという考えだったのでしょうか?
   
Hiro: あの時は、たしか大野(善寛)さんに好きな方を入れればいいじゃんって言われて、作曲者としては、もともとメロ有りで作ったんで、じゃあメロ有りでと。
   
大野: (当日同席していたユーブック大野)
え、俺まだいなかったでしょ。最初の頃はまだ制作にいなかったもん。
   
Hiro: いたいた(笑)。
   
大野: そうだっけ。
   
原: 「アフターバーナー」はアルファレコードから出た3枚目のCDで、アルファレコードとしては最後のセガのCDでしたね。
   
Hiro: 今考えると、メロ無しを入れるのが正しかったんだろうと。もしくは両方。
   
大野: 当時はアナログだからLPとカセットで、CDが後から「CDになりました」って出る時代だった。
   
原: CD版は「ダンクショット」が追加で収録されてましたね。
   
Hiro: じゃあ、収録時間的にどっちかしか入られなかったのかも。しかも、あの頃って作曲者の立場からすると、良く聴かせたいじゃないですか。なんでエフェクト処理を入れてあったり。
   
原: あ、よくその話でますよね。
   
Hiro: 今だったら、なんでって感じだけど、その頃は、より自分の中での完成体にしたいイメージで、アーケードよりも良いものを出したいっていう。だからリバーブとかも付けてますね。
   
原: 「アフターバーナー」の“Final take Off”なんかはフェードアウトして終わるんじゃなくて、最後にギターで、ジャジャジャ……って終わったりしますね。
   
大野: 今のゲームのCDはデータアーカイブ的だけど、当時はいかに音楽作品として見せるかみたいな、背伸びをしていたから。
   
Hiro: そうそう。
   
大野: 当時はそれで文句を言う人がいなかったからね。
   
Hiro: まぁ、一部の人は言ってたかもしれないけど。これ違うよぉって(笑)。
   
  (一同爆笑)
   
原: 少し開発時のお話もお聞きしたいんですが、「アフターバーナー」ではギターでサンプリングを使っていて画期的でしたが、かなり苦労されたんじゃないですか?
   
Hiro: PCMはもともと声を出す目的で作られたものなんです。でもサウンドからするとサンプラーと同じじゃないですか。だったら、いい音を出そうということで、「ハリアー」や「アウトラン」ではドラムに使いましたね。で、「アフターバーナー」の時に音階を出そうと。ただ、音階のパラメータが0から7Fまでしかなくて、低い方は段階が細かいんだけど、そのうち1変えると半音以上変わったりして、高い方になると出したい音を出せないっていう。サンプリングレートも低いんで、高音は音が割れちゃうし。
   
原: なるほど。
   
Hiro: 「アフターバーナー」の頃はサンプラーなんて世の中に無くて。いや、あったけど物凄く高かったの で、ボードの開発の人が作ったでかい手作りサンプラーを使ってました。ジャンパー線がむき出しになってて、入力がモノラルで1つだけで。LEDが電源と、入力あったよってのと、クリップしたよ、っていう3つしかない。そのクリップのLEDが点かないように、音源のレベルを入れて……。
   
原: なるべく大きく録るんですか?
   
Hiro: そうそう。それにもさっき言ったICE (アイス)が刺さってて、録音した音をICE (アイス)で吸い出してデータ化してっていう。すごく大変でしたよ。
   

 
●ドライバから作り直したメガドライブ
   
原: Hiroさんは、メガドラの曲を作っていた時のことについて、CDのライナーノーツなどで「楽しかった」とコメントされていますが、その頃のお話をお聞きしたいのですが。
   
Hiro: メガドラは、最初のドライバがよくなかったので自分で作り直しました。アセンブラで。
   
原: ドライバを開発する時に、アーケード用に作った自分の曲をコンバートしてメガドラで鳴らしてみたなんていう裏話があったりしないでしょうか?
   
Hiro: ないです。「レンタ」のゲーセンでのアレンジしか無いですね。短い中で集約するのが楽しかった。それなりにアレンジして。
   
原: 「スペースハリアー」は、S.S.T.BANDのアレンジ版がベースになってたりしますね。
   
Hiro: そうそう。
   
原: メガドラは、PCMが使えるのにドラム等で使ってるゲームがあまり無かったんですが、そんな中で「ヴァーミリオン」と「レンタヒーロー」は、PCMを効果的に使っていたと思います。意図的にそういった曲作りをされたんですか?
   
Hiro: それまでアーケードでPCMやってて、メガドラもハード的にはほぼ同じなんですよ。メインの68000を使えばサンプリングも使えるだろうということで作りこみましたね。
   
原: メガドラとアーケードとで大きな違いはありましたか? 例えば容量の制限なんかがあったと思うんですが。
   
Hiro: それは宿命でしたね。1バイトを削るという世界でしたね。
   
原: 「ヴァーミリオン」や「レンタヒーロー」の後に、他の人からHiroさんが作ったドライバを使わせてほしいみたいな話はなかったんでしょうか?
   
Hiro: なかったですね。まったく隔離された部署だったんで。それと、昔はみんな音を出す人は自分で作るという文化だったんですね。
   
原: じゃあ、ノウハウの共有みたいなのはなかったんでしょうか?
   
Hiro: まったく無かったですね。
   
原: (笑)
   
Hiro: 唯一あるのは、FM音源のパラメータですね。人が作ったのを「これいいから頂戴」というのはあったけど。
   
原: 「ファンタジーゾーン」のホイッスルとかですか?
   
Hiro: あれは、林君ですね。
   
原: 話は変わりますが、「レンタヒーロー」ではドラム以外に曲中に声なんかも入ってますが、あれは光吉さんですよね?
   
光吉: そうですね(笑)。
   
原: 光吉さんと言うと「バーチャファイター」の影丸の声などでも有名ですが、もしかして声のデビュー作は「レンタヒーロー」なんですかね?
   
光吉: 「レンタヒーロー」ですね。あれはどこで録音したんだろう。会社の中でしたよね?
   
Hiro: たぶんそうだと思う。その頃、声優を使うっていうのは無かったですね。声出したいんだけど、どうしよう、「じゃあ、光吉でいいじゃん」って。
   
光吉: で、「ハァッ!」って(笑)。
   
原: 光吉さんがメガドラで担当されたのは、「レンタヒーロー」のゲームの中に出てくるゲームセンターで流れる「GPライダー」だけですか?
   
光吉: そうですね。あとは「バーチャレーシング」の移植をちょっとやったぐらいですね。
   
原: Hiroさんが「ヴァーミリオン」と「レンタヒーロー」以外にメガドラで担当したゲームはありますか? 例えば「忍者武雷伝説」という和風シミュレーションで、スタッフロールが全部漢字のゲームがあるんですが、それに比呂っていう名前が出てくるんです。そのゲームもサンプリングがうまく使われているんで、あれはHiroさんじゃないかという説があるんですが、どうなんでしょうか?
   
Hiro: では、そのまま謎にしておきましょう!(笑)
  
  次回は、S.S.T.BANDのエピソードについてお伝えします。お楽しみに!


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