＜出席者紹介＞
Hiro師匠
セガのFM音源サウンド黄金期を築き上げた名コンポーザー。代表作は「スペースハリアー」「アウトラン」「アフターバーナー」「ファンタジーゾーン」等多数。現在は第三AM研究開発部のサウンドセクションチーフ。 |
光吉猛修
歌って踊れるセガの名コンポーザー。代表作は「R-360」「デイトナUSA」「セガラリー」「シェンムー」等多数。作曲以外では「バーチャファイター」の影丸などの声も担当している。また、アニメ版「バーチャファイター」では主題歌「愛が足りないぜ」で歌手としても有名。現在は第三AM研究開発部所属。 |
| ※インタビュー後に部署統合があり、お二人とも2009年4月よりAMR&D1に異動されました。 |
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| ●Hiro師匠のPSG音源作品 |
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| 原： |
前回はセガ入社までのお話を伺いましたが、Hiroさんが最初にサウンドとして参加したのは「ハングオン」ということでいいでしょうか？ |
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| Hiro： |
たぶん「ハングオン」が最初ですね。曲で参加したのは。その前まではプログラマをやってて。あと、コンシューマもやったけど、一番最初は「ハングオン」だったはずです。 |
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| 原： |
コンシューマの曲ということは、SG-1000とかマークIIIだと思うんですが、PSG音源でも曲を作られたことがあるんですか？ |
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| Hiro： |
やってますね。いくつか。 |
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| 原： |
覚えているのありますか？ |
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| Hiro： |
えー、穴掘って敵キャラ埋めるのなんだっけ？ |
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| 光吉： |
「平安京エイリアン」？ |
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| Hiro： |
違う違う。 |
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| 原： |
それ、他社ですよね（笑）。 |
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| Hiro： |
階段があって……。あ、「ロードランナー」のエンディングとか。あと、移植で、ピ……、ピなんとか……。 |
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| 原： |
「ピットフォールII」？ |
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| Hiro： |
そう、「ピットフォール」。でも、全部じゃなかったような気がする。あと、いくつかやってて、ドラゴン……、ドラゴンなんとか……。 |
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| 原： |
「ドラゴン・ワン」ですか？ |
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| Hiro： |
「ドラゴン・ワン」か。二階建てみたいな画面 の奴。これも一部分手伝ったぐらい。 |
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| 原： |
Hiroさんというと、アーケードとFM音源のイメージがあるんですが、家庭用のPSG音源の曲もやられてたんですね。 |
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| Hiro： |
昔は開発が一緒だったんで。好きな方をやってましたね。 |
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| 原： |
今、開発がアーケードとコンシューマで分かれていなかったというお話がありましたが、ファンキーK.Hさんが作られた「カルテット」なんかは、家庭用のマークIIIに移植される時には、FM音源で作った曲を自分でPSG音源に移植していたみたいなんですが、Hiroさんの場合はそういうのはないですよね？ |
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| Hiro： |
ないですね。なんか、知らないうちに出来てる。 |
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| 原： |
そうなんですか（笑）。自分で作った曲を他の人が移植するということについては、気分的に悪いとか何かありませんでしたか？ |
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| Hiro： |
いや、まったくないです。 |
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| 原： |
ダメ出しとかもしなかったんですか？ |
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| Hiro： |
製品版になってから聞いたとか。20年経った今頃聴いて、こんなのあったんだとか。 |
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| 原： |
「アウトラン」や「アフターバーナー」のボックスCDで出る時に初めて聴いた曲もあるんですよね。 |
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セガ・ゲームミュージック VOL.3
1987年に発売されたCDで、「アフターバーナー」「エイリアンシンドローム」「スーパーハングオン」「SDI」「ダンクショット」を収録している。 |
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Out Run 20th
Anniversary Box
「アウトラン」生誕20周年を記念して発売されたボックスCD。11枚組でオリジナル版の他に各種移植版や続編の曲を収録している。 |
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AFTER BURNER
20th Anniversary Box
「アフターバーナー」生誕20周年を記念して発売されたボックスCD。6枚組で オリジナル版の他に各種移植版や続編の曲を収録している。 |
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| Hiro： |
そうそう。当時はまったく聴いた記憶が無いですね。頼まれればやったかもしれないけど、その頃は新しいものを作ってました。 |
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| 原： |
今だったら、移植する時にデータを提供してほしいという話があったりすると思うんですが、当時はどうでしたか？ |
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| Hiro： |
たぶん、ないかな。その頃は譜面なんで、譜面をコピーして渡したことはあったと思いますけど。たぶん、コピーを渡してなくて、移植されたのはすごいことになってます。「アウトラン」とか、曲が違うだろって奴。 |
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（一同爆笑） |
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| 原： |
ボックスCDでは移植担当者が分からないようなことがライナーノーツに書いてあったので、今日はその答えを持ってきたんですが……。（持参した当時の雑誌記事を見せる） |
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| Hiro： |
あ、すげぇ、俺のコメントで「マークIIIのアウトランの曲サイテーだぜ」って書いてある。俺あれを聴いてたんだ（笑）。 |
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| 光吉： |
内部批判、内部批判（笑）。 |
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| 原： |
移植担当はBo（＝上保徳彦）さんだったようですね。 |
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| Hiro： |
やっぱ、上保さんが作ってたんだ。 |
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| ●FM音源初期の頃のサウンド開発秘話 |
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| 原： |
FM音源の頃の話をお聞きしたいのですが、まず、「ハングオン」「スペースハリアー」にはどのような感じで参加されたんですか？ |
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| Hiro： |
「ハングオン」の頃はまだプログラマだったので、（鈴木）裕さんにバンドやってるんだからバンドっぽい曲を作ってよって言われて、たしかカセットか何かに曲を録音して、打ち込みの人に渡したんですよ。だから、打ち込みは自分でやってないです。 |
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| 原： |
「スペースハリアー」はどうですか？ |
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| Hiro： |
「ハリアー」も確か自分では打ち込んでないですね。音色は作った気がするけど。 |
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| 原： |
打ち込みっていうのは、ベーシックのPLAY文みたいな感じで入力していくんですか？ |
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| Hiro： |
そうですね。アセンブラのマクロを使うんです が、 C5って書いて次にL4って書くとC5の四分音符になるっていう。 |
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| 原： |
当時は、基板で音が出るまでには、遠い過程が必要だったと思うのですが、どうでしたか？ |
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| Hiro： |
たぶん遠い過程があった思うんですが、最初は 打ち込みまではやっていないのでそれ程大変じゃな かったです 「ハリアー」をやった頃は、裕さんを寮に呼んで、林（克洋）君のDX-7を弾いて、こんな感じでどう？
って。それでOKって言われて譜面を書いて……。 |
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| 原： |
その頃は必ず譜面を書いていたんですか？ |
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| Hiro： |
ですね。シーケンサー自体がなかったから。あの頃は譜面を書くのが今の100倍早かったような気がする。今は書ける気がしない（笑）。 |
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| 原： |
光吉さんが入社された頃になると、機材がしっかりしてて、シーケンサーで手弾きしたものがそのままデータになる感じだったんですか？ |
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| 光吉： |
そうですね。師匠達が培ってきた技術を基に、ある程度ツールも揃っていて、僕の時代はもうPC-98を使ってシーケンサーで曲を作っていましたね。MIDIを基板で鳴らすデータに変換するコンバーターがあって、アセンブルしてリンクしてっいう感じで、1個1個の作業は手作業なんですけど、師匠の頃に比べたら簡単に作れる時代になってましたね。 |
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| Hiro： |
ちなみに、そのMIDIからコンバートするコンバーターを最初に作ったのは林君。 |
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| 光吉： |
林さんなんですかぁ。 |
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| Hiro： |
最初にMIDIっていうものを取り入れたのは彼。その頃、俺はMIDI大っ嫌いで、やっぱ譜面だろって（笑）。 |
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| ●師匠と呼ばれるようになった理由 |
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| 原： |
当時はサウンド担当でもプログラマの素質みたいなものが必要だったと思うんですが、光吉さんはどうでしたか？ キツかったんでしょうか？ |
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| 光吉： |
そりゃもう、スパルタですよ（笑）。 |
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| 原： |
社内教育的というかノウハウの伝授みたいな感じで、教えてもらえることはあったんですか？ |
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| 光吉： |
基本的に聞かないと教えてもらえないんですよ（笑）。でも、聞いても専門用語とか分かんないんですよね。他の新入社員の中には最初から分かっていて、どんどんプログラムを書ける奴もいたので、みんながみんな僕みたいということじゃなかったですけど。特に僕が理解するのに苦労したというのはありますね。結局ゼロからプログラムを組めるようにはなれなくて、サブルーチンを作るぐらいでしたね。その後は、完成したツールがやってくれる時代に移っていったんです。 |
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| 原： |
もしかして、Hiroさんが師匠と呼ばれるようになったのは、その頃からなんでしょうか？ |
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| Hiro： |
88年ぐらいかな？ 高木（保浩）が入ってくるまでは、裕さんの下で1人でやってたんですよ。スタジオ128の頃まで。 |
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| 原： |
「アフターバーナー」の頃ですよね。 |
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| Hiro： |
開発の分室のような感じで少人数でやってて。その時にサウンドで1人入ってくるというんで、どうしようかという話になって、じゃあ弟子だろうと。で、弟子なんで、俺は師匠だろう！ |
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| 原： |
（笑）。 |
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| Hiro： |
光吉が次の年に入ってきて、孫弟子。 |
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| 原： |
S.S.T.BANDのCDのライナーノーツにそんなことが書いてありましたね。 |
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| Hiro： |
そうそう。 |
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| 光吉： |
僕は高木さんのことを「兄ぃ」と呼べとみたいな（笑）。 |
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| 原： |
兄弟子ですか（笑）。 |
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| Hiro： |
それからですね。 |
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| 原： |
それでいつのまにか、他の人も師匠と呼ぶようになっちゃったんですか？サウンドじゃない人まで（笑）。 |
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| Hiro： |
ですね。 |
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| 原： |
会社が大きくなって若い人がどんどん入って来たのも、師匠という呼ばれ方が広まった原因だったかもしれないですね。 |
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| Hiro： |
上も下も関係なく。 |
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| 原： |
え、上の人からも師匠と呼ばれてるんですか（笑）。 |
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| Hiro： |
まぁ、楽でいいですけど。 |
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| 光吉： |
もうニックネーム化して、外部の人も師匠って呼んでますからね。 |
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| Hiro： |
社内だと全然問題ないんだけど、電車の中で呼ばれると、一瞬周りがパッと見るんだよね（笑）。 |
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（一同爆笑） |
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| Hiro： |
不思議なことなんだぁって、最近気がつくようになった（笑）。 |
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