8月1〜5日 Traquair Fair in Scotland
1日(水)うす曇り
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ジャンバーを着ても… |
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打ち合わせ |
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おかめ・ひょっとこ |
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10人が座れるテーブルで |
流石に、と言うか、8月1日なのに、寒い。Scotland は間違い無く秋だ。私は昨日のワインで二日酔い気味、体が少し火照ってさえいると言うのに…。
早朝、彼女が参考にした文献コピーにざっと当たった。正確に書かれているものもあるが(研究資料の様で読みにくい)、子供向けに、あるいは西洋人に判りやすいように、大分変えてあるものもある(僕にも、読みやすい)。端的に間違っているものもある。例えば今回の芝居のチラシは題名が「Amateratsu」になってしまっている。"tsu"
では無く当然"su"でなけらばならない。そう言う間違った資料を参考にしてしまったからだ。 で、つまり僕にとって”日本文化を英国に紹介する”と言う事は、”西洋人にとって理解し難いことをどの様に表現するか?”と言うことに他ならない。西洋人に理解されるために、西洋的解釈に当てはめたようなものはやりたく無い。しかし、この状態では…。しかもそれをScotish
の子供達と一緒に…。考えれば考えるほど、頭が痛くなる、肩こりも酷い、ストレスに押しつぶされそうだ。まあ”困難な道”を選んでしまうのは性分なのでしょうね、きっと…。
朝の体操をしていると「無限響」メンバーやってくる。彼らも忙しいようで、眠そうだ。「大丈夫か?」と聞かれたので素直に「とっても難しい」と答えてしまった。
今日からは、太鼓グループやダンスグループに分かれて稽古だ。僕らも自分たちの演技パートの他に、ヒョットコ踊りをまかされてしまった。早速、曲を覚えなければならない。
クス、タツヤ、カキはスサノオ一派(ヤクザの子分かプロレスのT2000 のような存在)、テツはタジカラオ(全く陰が薄いのだが…。)アオイも天照のお付きで…(此方が要するに天照派)。
衣装合わせ、小道具等も揃わないものが多い。
ほとんどダンスと太鼓の稽古に費やされる。それでも、随分変って来た。生徒22人に指導者が12人もいれば、それはまあ当然か…?
Anne から天照とスサノオの対決を具体的に作って欲しいと…。解釈が根本的に違うところなので困るのだが、バカバカしく相撲対決のシーンを作る。
夜、Anne の旦那さんを交え「古事記」の解釈を含めて、台本のことを話す。つたない英語で必死で説明すると、大意は理解してくれたようだ。ただ、今からでは時間が無さ過ぎる。今回は台本はいじらずに、何とか盛り上げる以外に無い。8月後半は、最初から我々が関わるので、全面的に台本を変えさせてもらうことに。
8月2日(木)曇り、晴れ、大雨、曇り
Anne も相当疲れている。ピリピリしてきた、でもそれはそれで子供達にも影響し、緊張感が出てきたのはいいことだ。無限響メンバーもかなりきつく叱ったりしている。
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アオイの扇子指導 |
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カッキーのヒョットコ指導 |
アオイは無限響のミユキを手伝って”扇子のダンス”を指導。カキは教会の小さな踊り場で”ヒョットコ踊り”を…。二人とも言葉が通じなくとも、具体的に見せられるので、楽しそうだ。基本的に”人に何かを教える”と言うことは、自分を活性化させなければ成立しない。だから”教え、教わる”と言う関係が集団の中で固定化してしまうと、その集団は活性化しにくくなる。U-Stage
が抱えた大きな問題の一つはここにある。そのことが良く見える瞬間だった。
子供達も真剣になりだした。小人数になって緊張感が出るのは何処の国も同じ。緊張感さえでれば、稽古も順調に進み、どんどん良くなる。昨日とは見違えるようだ。
ミユキが嘆く”太鼓グループ”、確かに 9才から17才まで最も年齢幅も大きいし、バラバラで集中力が無い。でも流石は「無限響」彼らと一緒に演奏する曲に上手く構成して、立派な”太鼓”になってしまった。所々で入れる効果音もなかなかだ。まあ、私には中国風に聞こえてしまい「それは日本じゃ無い」と言いたくなるようなところもあるが(B級のアメリカ映画などに良くある銅鑼がジャーンと鳴るやつなど…)、ぐっと我慢。
夜、Anne の家で”ハギス”(スコットランドの伝統的料理)をご馳走になる。
8月3日(金)曇り、晴れ、風強し Dress Rehearsal at Traquair House
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Traouair House |
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屋敷前から遠く入り口を |
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リフトに乗った天照一向 |
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稽古後の打ち合わせ |
Dress Reheasal つまり衣装を着けて本番と同じように行う舞台稽古だ。Arts
Center を10時半に出発。Traquair House に向う。思ったより遠い。しかしこれがまた凄い屋敷と庭園。裏庭には庭木で迷路さえ作られている。最初にここが公演場所かなと思った広場は屋敷外の空き地(?)で全て駐車場だった。
トラキュア・ハウスは旅行ガイドによれば”悲劇の女王メアリー”も住んだことで有名らしい。館の半分ほどは博物館のようになっていて、後にイングランド王になったジェームス1世が使用したと言う”揺り篭”等も展示してある。要するに日本で言えば”御所”のような所。その一室を控え室として与えられ、この館の中ではありふれた部屋なのだろうが、カーテン付きのベッドやら、家具やらまるで映画のロケセットにでも入り込んだよう。
稽古は5時まで使える予定だったのが、この館で結婚式があるらしく急遽3時半までに。と言うわけで今日のスケジュールは全て変更。まあ、その程度のことでは驚かなくなっているけど…。登・退場の確認さえできないままいきなり通しで。しかも天照役のトモコが乗らねばならない”リフト”(工事現場用の油圧昇降機)は、動かないとか利用できないとか言っている…結局リフトは来たのだが、飾りつけも、階段も無い。つまりは全てぶっつけ本番でやらねばならない、危険でさえある。演出のAnne
に質問したいことは沢山あるけど、彼女は子供達の世話で手一杯。子供達は衣装とマスクを着けてはしゃいでいる。
わけの判らないまま舞台稽古終了。直ぐに片付け。クジャクのいるガーデンで打ち合わせ。
この芝居は天照が岩宿に隠れるまでを昼にやり、その後夕方まで時間を空けて、4時から天照が現われる場面の2部構成になっている。つまりアメノウズメが踊った宴会をこのフェスティバル全体になぞらえ、皆で楽しく騒ぐことで天照が現われると言う狙いらしい。で、その空き時間の間にU-Stage も「無限響」も自分たちの演奏をしなければならない…。当然、衣装の着替えから太鼓の移動、セッティングまでを…。しかも太鼓は大音量だから、他の出し物との時間的兼ね合いもある。と言うわけで僕らの打ち合わせは芝居のことだけで出なく多義に渡り、実に複雑…。
稽古中にちょっと足を痛めてしまったようだ。
8月4日(土) 曇り後雨、時々大雨、たまに晴れ
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会場はピクニック気分 |
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大道芸人も沢山 |
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小雨の中、太鼓を |
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Pub で無限響と |
夜中に足がつってしまい眠れ無い。やはり疲労は溜まっている。10時現場到着。いや凄い、出店やテントの数が半端じゃない。僕らが”太鼓”を演奏する場所に車を入れるのに、実に苦労する。
11:00 チンドンで敷地を流す。客はまだ少ないようだが、出店者や出演者が集って見に来てくれる。ノリが良くて楽しい。
芝居のため衣装を着替えていると雨が降り出す。それもかなりの量だ。開演が危ぶまれる。Anne
の顔がどんどん曇っていく。
12:10 取り合えず、雨は止んでいる。お客さん注視の中、丸見えでスタンバイ。開演。「無限響」の太鼓演奏が始まるとお客はどんどん集ってくる。子供達の親が多いせいもあるのだろう、実に好意的な反応だ。聞き取りにくい子供達の演技を一生懸命見ていてくれる感じ…。つまり劇を支えてくれる。劇を作ることの原点はこの”観客との関係性”だ。積極的な客がいなければ、劇は成立しにくい。
私(スサノオ)の登退場シーンに子供達が太鼓で効果音を入れるのだが、その音量が足りないと言うことで、昨日の打ち合わせで、クスとタツヤが伏せ太鼓を持ちカキが叩きながら登場することに。さらにスサノオが暴れるシーンは無限響の太鼓演奏になっていたのだが、その曲に合わせて私が踊る(?)ことに…。つまりはぶっつけ本番。英語のセリフも不安だ。
芝居の途中から雨が降り出す。かなり濡れて、一部終了。”貴族の部屋”の控え室に濡れた衣装を吊るす。
雨の様子を見ながら太鼓の準備をするも、結局小雨が断続的に降り続き、大太鼓は出せない。集っていただいたお客さんのために、車の後ろのドアを屋根変りにカキの「マサル」一曲だけ披露。
Meadows Festival で僕らを見て、僕らの為にここまで来たなんて言ってくださるお客が3組みもいた…。申し訳ないような、嬉しい言葉。「無限響」は演奏を中止したようだ。
3:45 小雨に濡れながら、舞踏の女性が踊っている。客はいないに等しい、それでも踊っている。客との関係性についてまた考える。
4:15、雨はとりあえず止んだ。芝生も道もグチャグチャ。それでもお客は集ってくる。2部開演。何とか、無事終演。Anne
も喜んでいる、ように思える。衣装類を片付け、太鼓の撤収を手伝う。
明日の夜は大急ぎで南下しなければばらない。クス・タツヤ・アオイにとっては今夜が最後のScotland
の夜だ。
ミユキのお父さんからPub で夕飯をご馳走になる。
8月5日(日)晴れ、曇り、雨、風強し
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裏庭の迷路 |
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子供達とはしゃぐカッキー |
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精神年齢は一緒? |
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スサノオ…? |
相変わらずの天気だ。客の出も遅いようなので、朝のチンドンは中止する。空いた時間に迷路や博物館を見学。迷路でチンドンをやって見ようなどど思いつくが、誰が見ると言うのだ!? 博物館内で日本の「手毬」を展示されていたご婦人(英国人)と日本文化について熱く語る。
12:00 開演。直ぐに小雨が降り出す。急遽、太鼓をテントに入れる。私と一緒に出すはずだった太鼓も楽屋に引っ込める。時々パラツク霧雨、英国ではいつものことだ。無事一部終了。
Scotland 領事館のOさん、ご家族でいらしてくださる。
2:00 チンドンで練り歩く。途中、路上でフォークダンスのグループが踊っていたので、手前で止まる。客はどんどん集ってくる。いくら大道芸人が沢山いたって、チンドン屋は、そりゃー珍しいだろう。
車の前で直ぐに太鼓の用意。獅子舞から一応全部やる。客は何十にも僕らを取り巻いている。300,
400...いったい何人くらいいたのだろう?大拍手。気持ちが良い。ただ、テツがまた腰が痛くなってきたようで心配だ。今日も獅子舞で彼の膝の上にはほとんど乗っていられなかった。
太鼓を片付けて、劇の場へ戻ると、Anne が「凄いお客さんで、おめでとう」なんて言ってくれる。日本人と違うから裏は無いと思うが、ちょっと返答に困る。
4:00 この芝居が昼と夕方の 2部構成になっていることは書いたが、お客さんにもそのことが明確に伝わっていないらしく、夕方から来た人が沢山いるらしい、そこでAnne
から急遽 1-2部を通してやって欲しいと提案。私は痛めた足が心配だが、段取りさえつくならやら無いわけにはいかない。
が、やはり前半への集中力が途切れていた。英語のセリフがアップ、アップしてしまう。さらに風も酷く、大きな頭飾りが飛びそうだ。
17:00 何とか終了。急いで片付け、車に荷積みする。今夜中にMachster まで行かなければならない。
18:30 挨拶もそこそこに出発。南下にともないどんどん気温が上昇する。
23:00 Manchester のBackpakers Hotel に到着。辺りは閑散とし、いかにも犯罪が起きそうだ。しかし駐車場には屋根の箱が邪魔して入れられない。私が窓際のベッドに寝て、気をつけることに。しかし、ここの一番大きな部屋はまるで牢獄のようだ。