7月21〜25 Gloucester
21日(土)小雨、曇り Gloucester Children's Festival
日本は猛暑だと聞く。ちょっと申し訳無いような気もするが、此方は肌寒い…、もう秋だ。街を行き交う人々の服装も、マチマチではあるが長袖やジャンパーが多くなった。テツなどはLondon で安い皮ジャンを既に2枚も購入し、とっかえひっかえ着ている。
今日は公園のテントでやるので天気が心配だ。
10時過ぎに公園に到着。僕らのためのテントや柵などが用意されている。隣りの人達は韓国との交流団体らしい…、日本を背負わされたような感じになる。今日は一日中このU-Stage 専用テントで”何か”をするのだ。僕は何だか妙に楽しい。車をテント前に横付けしU-Stage の看板を目立たせる。早速、搬入・し込み。舞台も無いからちょっと湿った芝生の上に直接太鼓足を置くしか無い。これが本当の”草の根の交流”だ。
隣りの公園は移動遊園地。僕らのテントの直ぐ前にはカラオケの大きなトラックやサーカス・ワークショップのためのテント、その向こうに何か芝居のようなことをやるらしい広場…「アンパンマンショー」ってなもんかな、大きなエアーチューブを使った迷路や滑り台なんかもある。子供も大人も一緒になって一日中楽しめる公園ということなのだろう。天気さえ良ければ人出も多いのだろうが…。
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12時からWorkshop を始めると言うことだったが、人手は疎ら、結局テントに入って来た人達に勝手に太鼓を叩かせることに…。急遽、テーブルを出し、クスが参加者の名前を筆で漢字に書いてあげることに…。これが大人気!太鼓には全く興味を示さず、テーブルに長蛇の列。中には妹がいて親戚がいてと、一人で何人もの名前をせがむ人も…。無料ではやはり収拾がつかない。参加者に限ると言っても、なかなか判断がつかないし…。
2時からのWorkshop は先ずチンドンパレードから始めた。ところが集っていた客はテントではやらないと思ったのか、散ってしまう。しかしテントに戻り太鼓を再開すると、漢字名前が欲しいせいなのか、どんどん人が集り、太鼓も盛況になり交代に苦労するほど。ただし其々がただ勝手に叩くだけだから、とにかく煩い。メンバーの一人でも入ってリズムキープだけでもすれば、少しはましになるのだが…、結局私がチンドンで基本リズムを叩き続けることに…。
4時からはテントを完全にステージに見立て、通常の公演を。勿論大拍手。お客が少ないのと観客層が子連に限定されてしまうのが、ちょっと辛い。
22日(日)晴れ
天気は良い、今日は人出も多いだろう。主催者の意図が判ってきたので、基本的にテントをオープンにし、常時お客さんが入れるようにする。必然的に展示販売のスペースを中心にし、と言ってもTシャツ(この旅のために作った「遊舞台」ロゴ入り)・手毬(座付き作家鳴沢君の母上作)・和風カード(斎藤ゆきこ氏作)・オリガミくらい。つまりは漢字名前が中心。50p
と値段も付けてみた。太鼓Workshop は自分から積極的にやりたいと来た人に、叩き方など多少説明を入れて。つまりは僕らの休憩時間は無し。其々が勝手に疲れたら休む…、でも休む奴はいない。こんなことができるのもU-Stage
ならでは…。
丁度日英タイムスの加藤さんが別の用事でGloucester にいらして、様子を見に来てくださる。テントや僕らの奮闘を見ながら「本物のドサ廻りですね」と呆れている。
チンドンを2回。4:30 からは通常の公演。獅子舞にコインが沢山集り、重たくて動きにくい程…。
期待したほど人手は多くなかったけれど、僕らのテントは何時もお客で埋まっていた。クスはいったい何人の名前を考えたのだろう。自分の子供や恋人の名前を背中に入れ墨するために訪ねてくる人も結構いた…。チンドンの仕度をする為
Workshop を打ち切った時に、小さな女ノ子につぶらな瞳でじっと見つめられたのには参った。獅子を怖がって鳴き出した子…。タバコをプカプカやりながら何度も太鼓に来た、12歳くらいの太った子。子供そっちのけで自分が楽しんだお母さん、お父さん。遠慮がちな人、ニコニコ楽しんだ人、沢山の人に出会い、色々な人がいた…。疲れたけど、僕らは十分楽しんだ。それは僕が唱えた草の根の交流が、お題目では無くなったと実感できたせいかもしれない。
7月23日(月)晴れ
今日は一日休みだ。ホテルを取ってもらって休めるのだからこんないい条件は無い。
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川沿いにあるDocks |
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演劇図書館の隣りの廃墟 |
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街の中心、大聖堂 |
Gloucester は大聖堂や古い歴史的建造物と現代が共存する、英国らしい街だ。同じ港街のせいなのか私にはExeter
と似た印象を受ける。ただしExeter がヒンの良い老人の街であるのに対し、ここは圧倒的に労働者の街と言う感じだ。腕や背中に彫り物をした人達が多いせいかも知れない。先週のOld
Spital と比較しても客層は全然違う。近代的な駅の傍らにある古い市場、そこに集るちょっとスノービッシュなビジネスマンと近辺に暮す移民…、新しいものと古いもの、民族と文化がギシギシと音を立てながら複雑に入り組んだLondon
の下町と、歴史を重んじる英国そのもの、落ちついたジェントルマンの町Exeter, 冗談じゃない英国魂は労働者階級にある、とでも言いたげなGloucester…、街にも明確な自己主張があるように思える。西洋によって守られた京都などの特殊な地域を除けば、日本の地方は基本的に東京を、東京的なものを志向している、その意味で東京はまさに日本そのものだ。同質を求める日本人的感性そのもの。しかし英国…、London
は首都ではある、英国を象徴はしている、しかしながら英国そのものでは無い。英国人は誰もLondon
など志向していない。それどころか其々の地方が勝手に「自分の街こそが英国だ」と主張しているようだ。いやそもそも国家意識そのものが、日本人とは随分違っているだろう。少なくとも国家意識より階級意識の方がづっと強いのではないだろうか?しかもこの階級意識が日本人が考えるような押しつけられた制度と言うよりは、自らが選び取る”棲み分け”的要素が強いように思える。美意識や価値観の違いを階級として棲み分けている、つまり個人主義が階級制度を支えている…。そんなことを考えていた一日。
24日(火)曇り時々晴れ。 Glouxester Festival Street Activities
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銀行前のステージ |
Jon が11時前に迎えに来るという約束だったが、11時を過ぎてしまい、慌てて現場に行き打ち合わせ。街の中心にある銀行とArts Cener前にあるちょっとした石畳のステージでやることに、ここは歩行者専用道路なのだが、そこまで車を乗り入れ駐車して構わないと…。早速車を廻し、搬入、先ずは七福神チンドンから。窓から手をふってくれる人、踊り出す人、ついてくる人…、基本的に反応は温かい。勿論嫌がっているだろう人もいるが、特に携帯電話をしている人など…。メイン道路をゆっくり往復して30分。15分の休憩の後、ステージ付近で2時からのパフォーマンスの告知を兼ねて。終了後直ぐに着替えて、太鼓の準備。客は四方八方にいるから空間に方向性を作るのが難しい。カキの寄せ太鼓から…、長くやらせるつもりだったが、リズムが不安定、慌てて木を入れ口上に移る。獅子舞で客の間を廻ると、5-6ポンドも入れてくれるご婦人も…。後はフルで…、演奏は間違いだらけで最悪だが、大拍手。「Thank you!」を連発しているオバさんやら凄い反応だ。勿論Jon は大喜び。しかし、体力が…。直ぐに片付けて荷積み、昼も食べていないことを告げると、スープを用意してくれた。4時、遅い昼飯。一旦ホテルへ。
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5:30 ホテルを出ておとといの公園へ。隣りの遊園地は賑やかだが、迷路しか無くなってしまった此方側は広さが強調されてガラーンとしている。石造りの舞台に太鼓を組むも、客が来るのか不安。メンバーも疲れ気味からか何となく元気が無い。しかも今夜は7時と9時と2ステージだ。Jon
は20分でいいと言うがいったいどうしたらいいのか途方にくれてしまう…。
7:00 客はチラホラ。どうも昼に街で見かけてわざわざ来てくれた人たちらしい。チンドンで公園を廻り、七福神の紹介を入れて、全員「マサル」だけで終わらせるはずだったが「馬鹿ばやし」「終宴」までやる。
9:00 薄暗くなってきてミステリアスな「獅子舞」には良いのかも知れないが、体力が持ちそうに無い。チンドンで舞台へ出て、東京メドレー。アオイのピアニカソロで「故郷」を一曲。後はいつもどうり「馬鹿囃し」「鬼囃し」「終宴」まで。持ちネタが少ないから、一日に何ステージもやるのは辛い。
僕達はやはり舞台の人間だ。構成を決め、開演時間に合わせて集中力を高めて行く、そしてその短い時間に燃焼する。一日に何度もというのはどうも余計な疲労が蓄積してしまう。疲労困憊の一日…。
25日(水)晴れ Japanese Delights
疲れが溜まっているので午前中一杯、部屋でゴロゴロする。Jon と3:45 に待ち合わせするも4時過ぎに彼は来る、大分忙しいようだ、彼も疲れが明らかだ。Hillfield Garden と言う所で英国の太鼓グループで友人の「無限響」をメインとした日本祭りをするらしい。
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大きな木の下に太鼓を組みたて、車を後ろに横付けして目隠しと荷物置き場にする。茂みから獅子や鬼が出てくるような感じを狙う。ただ、地面が坂になっているので動きが難しそうだ。
「無限響」のネイルとミユキに再開。彼らとは8月にScotland で芝居を一緒につくるので、真っ先にその話しをされる。どうも僕の理解不足でプロの劇団との共演では無く、子供達と一緒に我々が作るらしい…。彼らはもう既にWorkshop をやってきたのだが、主催者側に何も具体的なプランが無いとちょっと憤慨している。何はともあれ、今日はステージでぶっつけで共演をする約束もある。その打ち合せもしたいが、テレビ局が来て今日の6時からの放送用に5時から撮影をすると言う。慌てて衣装を着て、適当に動く。短いニュースの絵としては、それは完璧でしょう…!?まあ協力するのは構わないけど、あまり横柄だとちょっと頭にくる。そうこうする内にお客が集りだし、打ち合わせもそこそこにチンドンで廻らなければならない。最初は七福神で、2度目はカラス天狗などお面をつけて…。
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8:30 「無限響」一回目のステージ、ブレイクの前に僕らを呼び込んでくれる。トモコとアオイは直ぐ地打ちに、僕はチンドンで登場、クスは客席から篠笛で…、カキとテツは獅子、タツヤは天狗。無限響メンバーのソロを入れながら…。なかなか面白いし、客の反応もいい。
9:15 カキの「寄せ太鼓」から。「獅子舞」を始めると客はどんどん増えてくる。終了、凄い拍手、歓声。Tシャツも10マイ以上も売れる。お客はこのガーデンに入場料を払い、ピクニック・セットやワインを持ち込んで、日本祭りを楽しみに来ている。昨日までとは客層が明らかに違う。
10:15 「無限響」2度目のステージ。今度は僕らはアンコールで登場することに。ネイルもミユキも僕達に気を使ってくれている。最後の曲が「祭り」だったので、急遽カキとテツにオカメ・ヒョットコの面を着けさせ、舞台脇へ登場させる。僕らも舞台袖から声をかけ、盛り上げる。いよいよ、アンコール。ネイルのソロ、私がチンドンで登場、クスが篠笛、無限響のソロ二人、その間に獅子、天狗も登場、ミユキのソロ、リズムが早くなり、その間に僕らは早変り、U-Stage 全員でマサルを半分、ネイルがしめて、合図で全員一斉にポーズ! いやー、凄い反応。Jon も客も舞台へとんで来る。僕らもとっても楽しんだ。客の顔も輝いている。「無限響」に感謝!!
片付け、荷積み、舞台上で缶ビールで乾杯。ホテルには深夜1時着。