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 高畑ハイジ・パイロットフィルム紹介

 現在、ジブリ作品などは、絵コンテや制作日記などが出版・公開されて、作品がどのように作られたかというのはそれなりに把握できます。

 「高畑ハイジ」は制作年代が古く、また当時は現在のようにアニメーションがどのように作られるのか関心が低かったようで、成立過程というか、具体的な制作資料は断片的なものが知られているだけのようです。

 すばる書房から発刊された映画特集本に、不鮮明な絵コンテが4頁にわたって紹介されたり、「映画・天空の城ラピュタGUIDE BOOK」に「未発表宮崎駿レイアウトコレクション」としてハイジのレイアウトが13枚収録されたりしています。いずれも参考にはなります。


 さて今回、「世界名作劇場大全」の著者であられる松本正司様より、かつて同人活動で作られた「赤毛同盟No.6 アルプスの少女 ハイジ」をお借りすることができました。
 ご本人の言葉によると「三日でつくったもの」とおっしゃられますが、その内容はこれまでの他の資料とはまったくレベルが違います。

 宮崎駿氏のレイアウトを各ページに二枚から五枚収録して37ページにわたって掲載されたり、小田部羊一氏のキャラクター設定もここで初めて見たものがあります。
 そしてなにより、シリーズ構成をした松木功氏によるパイロット版の台本と、森やすじ氏によるパイロットフィルム絵コンテが完全な形で収録されています。
 他にも興味深い資料が満載で、ANIMECの設定資料集さえ補足資料になるのがやっとぐらいなほど格差があります。

 パイロットフィルムについては、実際のものは見たことはないのですが、これでほぼ初期の高畑ハイジの構想を把握できると思いますので、紹介させていただきたいです。

「赤毛同盟 同人誌」についてはズイヨー映像様の正式許可をもらっていますが、ここはあくまで非公式の個人サイトです。
 ですから「全体量の半分以下の必要な部分のみ」で「画像は使用しない」という著作権法で認められている範囲の引用で紹介したいと思います。

 
  

 

シリーズ構成の松木功氏によるパイロット版の台本

『(同人誌)アルプスの少女 ハイジ 特集 赤毛同盟第6号』より

 掲載されていたのは手書きの文章のため、一部判読不能の文字がありましたが、内容の把握には問題ないと思われます。
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パイロット作制のための脚本

 カルピスまんが劇場
 アルプスの少女ハイジ

企画 株式会社 電通
   (株)瑞鷹エンタープライズ
制作 ズイヨー映像(株)

(スーパーは、メイン・タイトル以外は不要です)

   はじめに
 脚本は独立した作品である場合もあれば、また撮影のためのテキストで、準備や狙いをくみとるための,ほんの手懸りに過ぎない場合もあります。
 ドキュメント用や、膨大な作品世界の試作品としてのパイロット用などは後者と云えましょう。
 その意味で、このパイロットの制作にタッチされるメイン・スタッフの方々は、是非この原作を一読されることを望みます。
 そのうえで、企画意図を十分に把握されて脚本の説明不足の点を補っていただきたいと思います。
 僅か十分足らずのものであり、準備期間の少い状況下ではありますが、決勝戦出場の資格を問う大事な予選であります。

   ね ら い

 ○ 美しい色彩で――。
 ○ 四季の変化を鮮やかに――。
 ○ 物語を追わず、興味があるように――。
 ○ 本番の映像の予告であるように――。
 ○ 音楽を最大に生かしましょう。
 ○ キャラクターを明確に――。
 ○ 「カルピスまんが劇場」宛です。

   登場人物
 (企画書を参考にして下さい)

 ハイジ

 アルムおじさん
 ヨーゼフ(セントバーナード種の犬)
 メンデル(ヨーロッパ原産の五色ヒワ)
 白鳥(山羊)
 熊(山羊)

 ペーテル
 おばあさん
 村の母親と子供

 クララ
 ロッテンマイエル
 ドクトル
 ゼーゼマン氏
 セバスチャン
 チネッテ
 ヨハン
 先生

 おばあさま
 


 コメント

 登場人物表では、すでに高畑ハイジオリジナルの「ヨーゼフ」が登場します。
 またピッチーの原型の「五色ヒワ・メンデル」が興味深いです。

 ペーテル・ロッテンマイエルの名称についても不思議です。

 初期の代表の野上弥生子訳は
「ペーテル、フロイライン・ロッテンマイア」であり、
 セリフなどから高畑ハイジの底本となったと思われる竹山道雄訳では
「ペーター、ロッテンマイア」です。

 「ロッテンマイエル」を使用しているのは有名な訳では新潮文庫版か偕成社文庫版ですが、この二つとも「ペーター」を使用しています。
 複数の訳を参照したといえば、それですんでしまいますが、何か理由があるのかもしれません。
 ヤギの白鳥と熊とは、「シロ・クマ」のことですね。


(脚本開始)
○ アルプス山麓
下方に、山の斜面がゆるやかに裾をひき、木立の多い緑の牧場がひらけている。その向うに村らしいものがあり、更に彼方にオーベルランドの起伏が幾重にも波のように連なり、遠くの空と雲につながっている。
のどかな山羊たちの鳴き声。
牛の声――。
遠くから乾いた鐘の音が響いてくる。
その音の方に視野を転じたかたちで、ゆるやかに横に移動すると、情景の情報へのびていく登山路に至る。その一本の山道は,山の木立の彼方へ通じている。


(中略 情景描写などがある)

○緑の草地から山小屋
丸太でくんだ風雅な山小屋。
その背後を守るように聳える樅の木々。
その彼方、アルプスの山々。

(T) アルプスの少女
     ハイジ

○花園
上高地の牧草地にある自然のせせらぎ。
その辺り一面、アルプスの山をバックに美しく咲き乱れる色とりどりの花々。

(T) スイスの国民的作家
   ヨハンナ・スピリの原作
   ハイジ
   ――と、流しタイトル。

ヨーデルが終わったところに、ピーッと鋭い口笛に続いて、「ハイージ!」と呼ぶペーテルの声。

○ハイジ
牧草地で、アルプスをバックに、あどけないハイジの顔。
白鳥、熊、二頭の山羊が近よってくる。
ハイジ、首を抱いてほお擦りをしてやる。

(中略 牧場での夕日の場面、星空)


コメント

 アニメ制作の内部資料ですので、省略語が使用されています。
(T)(丸にT)とは「タイトル表示」の意味でしょう。
 絵コンテになるとさらにアニメ専門用語が略称ででてきて、一般的には意味がわからなくなりますが簡単に説明を加えたいです。
 私はアニメ制作については、門外漢なので不適切な説明でしたらご指摘いただけるとありがたいです。



○ハイジの部屋
屋根裏にしつらえた乾草でつくったベッドの中にハイジが眠っている。
朝の陽光が窓から斜にさしこんでいる。
一羽の小鳥(ヨーロッパ原産の五色ヒワ)が,下から飛んできてハイジの上を囀りながら飛び廻る。
ハイジ、目覚める。
ハイジ「ああ,メンデル… ああ、朝ね… お早よう」
起上がって窓の外を見る。
谷間を越えて、朝のアルプスが見える。メンデル、ハイジの肩にとまる。
ハイジ「いいお天気ね……そうだわ、今日はペーテルのおばあさんに会いに行かなくちゃ……メンデル、ヨーゼフはどこ? 呼んできてちょうだい」
ピ、ピ、ピ、ピッ……とメンデル。ハイジの頭上を二、三回転するとさっと身をひるがえす。」
○その下の部屋
アルムおじさんが、暖炉の前で朝食の仕度をしている。
飛んできたメンデル,アルムおじさんの頭上で一回転、囀りながら、窓からさっと外へ。

 

(中略 ヨーゼフとメンデルがペーテルを迎えるかのようにする)

 

(浅いF・O)(注・ハイジの讃美歌朗読がかぶさる)
アルムおじさんの声
○降るような木の葉 秋の山道。
その木立の中を、服装の変ったハイジが、ヨーゼフとメンデルを連れていく。
(O・L)
○冬のデルフリ村 
雪で化粧している村の通り。
ソリにヨーゼフを乗せ、一生懸命に引っ張っているハイジ。
通りかかったペーテルが眼をまるくする。
ペーテル、ヨーゼフにウインク。
ヨーゼフ、ぽんと飛びおりる。
すると勢いよく前に出て、雪中に顔を突込むハイジ。
ペーテル、やれやれと首を横にする。雪が降りはじめる。
○アルプスの雪景色陽光に輝いている。
○ペーテルの家
ランプの光で、ハイジがペーテルのおばあさんに讃美歌の本を読んでやっている。
盲目のおばあさんの顔に一筋の涙が伝う。
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(注・ハイジの讃美歌朗読内容)
ハイジの声が流れる。

暖かく 光かがやき
今ははや 夜はあけたり
黄金なす 光の中に
天地は 静かなり
夜のまの 雲は散り果て
たたえなん 神の御技は
とことわに 四方にあまねし
ももくずの ももの すがたは
おしなべて 愛のみしろし

もろもろの ものは 過ぎゆき
神のみぞ とわに変らじ
限りなき 力をもちて
みこころの 成らぬことなし
とこしえに かたき みこころ

 

(流暢に読む必要はありません。幼い子が一生懸命読んでいる感じ。場合によってはハイジが歌う感じで、歌におきかえてもよいと思う。それでもムズカシイ感じであれば、音楽処理)

 

(中略 デーテがハイジをつれていこうとする)

 
デーテ「な、なんだよ,この犬!……」
愕き、恐れて立竦んでいるデーテ。
ヨーゼフ、ワンとデーテのスカートをくわえ、引張る。
ハイジ「お止め、ヨーゼフ! デーテ叔母さんよ… お止め!」
ハイジの命令に、仕方なく威嚇をやめてクンクンと鳴くヨーゼフ。
デーテ「なんて犬なんだろうねえ…スカートが破れちまったじゃないか…さ,ハイジ、おいで!」
と、手をとる。
ワン!! ワンワン! と、ヨーゼフ、悲しく吠えて、ハイジの体を押し戻すかのように体をすりよせてくる。
ハイジ「ヨーゼフ…あたし、すぐ戻ってくるのよ…すぐよ、待っててね」
首を抱いて愛撫してやる。
カンカン、カンカン…デルフリ村の教会の鐘が遠く谷間から聞こえてくる。
○その教会の鐘
乾いた響き――。
(O・L)
○大きな塔の大きな鐘
音色が変って――都会のフランクフルト市の教会の鐘である。
塔のアーチ越しに、眼下に街の屋根の整然とした景色が望見される。

○ゼーゼマン家・表
堂々たる印象の構え。
 

(中略 ロッテンマイエルに名前を聞かれるハイジ、クララとおばあさん(クマの毛皮はかぶっていない)、猫を抱いたハイジが教会の塔を登る)

 

ハイジの声「見えないわ…山は見えないわ…(悲しく猫を抱きしめる)」
猫、ハイジの*をなめてなぐさめる。

○画面を四つに切って――。
一面にゼーゼマン氏。
一拍おいて、対向にドクトル。
チネッテ。
セバッチャン。

 *物投入
○前シーンの四つの駒の絵が次々に変る
冬――頭巾をかぶったデルフリのハイジ。
秋――山道のハイジ。
夏――樅の木陰で、風の音に耳をすますハイジ。
春――花園のハイジ。

○春――花園のハイジに拡大して
 咲き乱れる花々――。

(T)ヨハンナ・スビリ原作

○アルプス
(T)アルプスの少女ハイジ

「終」


 コメント

OL はオーバーラップの意味で、画面全体がゆっくりと切り替わること。



絵コンテ 文字部分 森やすじ演出

アルプスの山なみ
斜面を 山羊の群がのぼって来る
ペーテルがつづいてFrOすると
少女が いきせき きって 登ってくる
 丸々と着ぶくれている ハイジである。
止まって
ハアハア
来たほうをふりかえって
しゃがみ込み
(ac)
靴をぬぎ くつしたをぬぎすて
ショールをポイ
上衣をぬぎすてる 上衣の下はまた上衣である
素足でかけあがっていく
FrOutして 間
又、もどって来て ぬぎすてた くつや上衣を 一つところに まとめると
やおら もう一枚の 上衣をぬいで
下に重ね
(ac)ニッコリ
はねながら登って行く
斜面を かけて行く ハイジ
(Follow)
ペーテル 一歩ニ歩 歩いて 気配に ふりかえり ニコッとする
ハイジ かけ登って来る 喜々とした 顔 (あおり)

アルプスの山に
(T)アルプスの少女
   ハイジ

PANすると 遠く 山すそに デルフリ村 教会の塔 など見えている
FIX−*−止  ゆっくり(TU)しつつOL
 

(中略)



コメント 用語解説

(ac)アクションと思われる。動画で演技をつけること?
(Follow)移動する人物に焦点をあわせて背景を流して行くこと。

FrOut フォローアウト 動きながら画面から出る

PAN カメラをふって見渡すこと

FIX カメラを固定すること

TU  トラックアップ 画面の中で拡大ズームしていくこと 


朝 ねているハイジ 丸窓から 五色ヒワが入って来て チイチイ 飛びまわる

ハイジ 眼をあいて 「おはよう」
ac
のびをして ヒワ 窓から とび去る

ハイジ 窓から 顔を出す ヒワ チチ・・と とんで 頭に 止まる

「いいお天気ね」 ヒワ とび立つ

ハイジ それを見送って

じいさん なにやら 朝食の準備 窓からヒワ 入って来て じいさんの まわり とびまわる
じいさん 顔を上げて ニッコリ
 と OFF
「おはよう おじいちゃん」 ふりかえる
 

(中略 本編にないヨーゼフとハイジとペーターのほほえましいエピソード)

笑う ペーテル

怒る ハイジ

追う ハイジ 雪をぶつけながら …たわむれである

Fe.Outした街に 雪が降って来る

夜か ペーテルのおばあさんに 聖歌を 読んで やっている ハイジ
外は雪
ばあさんに T.Uしっばなしで (O.L)

吹雪

吹雪

ハッとふりかえるハイジ

立ち上り

手前にかけて来る フランクフルトの家 机をはさんで クララ 車椅子

ハイジ テーブルクロスを ひっかけて

バサバサとインクツボ 本

落ちてくる

それを見る クララ

ハイジ 廊下を かけて行く 
チネッテ(女中)立っている

大きな 階段を かけおり

ロビーを かけぬけ

ドアー をあけ

外へとび出して 来る

馬車が行く

一歩出る

行く 馬車
  OFF「いったい どうしたというのです」(注・ロッテンマイエルセリフ)

(中略)

塔を のぼって行く ハイジ 子猫を だいて

塔から 顔を出す

見る ハイジ

いらかの波

やさしく ねこを だきしめて 「見えないわ」 山は見えないわ」
悲しげなハイジ にゆっくりと(T.U)しっばなしで(O.L)

クララのおばあちゃん クララ ハイジ

止め絵
B  ドクター セバスチャン ハイジ → ゆうれいの所
(OL)
C  ロッテンマイヤー クララ ハイジ チネッテ → ねこの所
(OL)
D  お父さん クララ ハイジ → 水をもってくる
(OL)
E  ベーテル 車椅子 → ガケから 車椅子おちる

止め絵 ハイジに

(スーバー)
アルプスの少女
 ハイジ

あたまから 移しつつ ハイジ 花を わけて ニッコリ

(終)


 解説(あるいは蛇足のツッコミ・・)

 

 実に興味深いですね。
 文字で表現できない画像部分では、森やすじさんのハイジは三つ編みで丸顔で、本番の高畑ハイジとはまったく印象が違います。
 ペーターは長髪で、三千里のマルコを連想させる、丸いキャラクターで絵コンテにかかれています。

 

 脚本では、ヨーゼフ・メンデルがかなり擬人化されていること。デーテが否定的に登場すること。
 讃美歌朗読がまるまる挿入されて、その内容は初めてみるものであること。この讃美歌は原作のものでは(高畑ハイジは原作のもの)ありません。
 
(追記 上記は誤りであることが判明致しました。
 ここに使われている賛美歌の訳は角川文庫版のものの最後を省略したものと同一です。
 しかし、角川文庫版はもともと妙に短く短縮されています。
 これはグーテンベルグプロジェクトに収録されている英訳に類似しています。2003/6/4)

 

 絵コンテでは、ハイジが着物を脱ぎ捨てたあと一つにまとめたり、ペーターが車椅子を破壊することになっています。

 いずれも原作にそったもので、高畑ハイジ本番と違いますので、高畑勲監督の演出意図がますますはっきりします。

 また絵コンテではおじいさんが極端に優しく描かれているように思えます。

 

 生活風景を表現するのに、脚本・絵コンテとも模索している段階といえましょうか。ハイジの無邪気さ、動物との擬人的なかけあいに多く頼っています。

 脚本で讃美歌をまるごと使おうとするのも「敬虔さ・優しさ」を既成のイメージで表現しようとしているのかもしれません。
 本当はフランクフルトから帰った後の朗読のエピソードを、フランクフルトへ行く前にもってきているのも特徴でしょう。

 

「世界名作劇場大全」(松本正司著)によれば、スポンサーのカルピス社の創業者は元僧侶で、社会貢献を積極的に行う社風があり、この当時の土倉冨士雄社長はクリスチャンで、さらにその姿勢を強く打ち出していたといいます。(いい会社ですね)
 ですから讃美歌の使用は、スポンサーへの受け狙いといった側面もあったのかもしれません。そしてキリスト教色の排除傾向はパイロット絵コンテの段階ですでに始まっているようです。

 

 また、バイロット自体が、原作を自由に改変していますので、高畑ハイジの特徴となった「ペーターの車椅子破壊などのエピソード変更」は、もともとテレビアニメ化するうえで、問題とは考えられなかったような印象もうけます。

 

 総評として、脚本・絵コンテとも、一読してあまり魅力的な物語になるような印象はうけません。
 理想的な自然をアニメ風に描いた、ほのぼのとした「ちょっとかわいそうな」お話になりそうな感じといえます。

 まさか大ブレイクする作品になるとは、この時点では予測できなかったのではないでしょうか?

 

 この後、高畑ハイジ本番となるとき、どのような軌道修正がなされていったか、不充分でしょうが書き出してみます。(なにか重要な点が抜けているような気がしますので、お気づきの点があったらどなたかご指摘いただけるとうれしいです)

・具体的生活を表現すること(生活アニメという革新)

・リアリズム指向(背景・動物の描き方・演技の必然性)

・ハイジのキャラクターが、素直であどけないと同じにかなり強引なものとなってキャラクターとしてクセが強くされたこと。

・おじいさん・デーテなど各キャラクターの性格づけが、原作を読み込むことで、より深みあるものとなっている。

・原作から離れるところは確固とした理由によってなされている。キリスト教色の排除がすすむ点やエピソード創作・改変などである。

 

 いわばパイロット版段階では普通のアニメ作品になるところが、高畑監督とその他本番スタッフによって、どのように変化したかがわかります。

 そのいくつかは画期的な成果といえるでしょう。
 原作の不完全なコピー・付属物ではなく、まったく新しい創作としての価値を持ったわけです。

 もちろん、元々パイロットフィルムは叩き台です。
 ですから、この小文は、パイロットフィルムのスタッフを非難するものではけっしてありません。
 むしろ高畑監督の創造をひきだした、重要な口火として評価されるべきです。

 ありがとうございます。

 ついでの最後にお願いです。
 瑞鷹様、ハイジの絵コンテ全集を出版していただけませんか?m(_ _)m

2003/3/9



 蛇足の蛇足

 森やすじさんの絵コンテの文字打ちは楽しかったです。あの独特の「わかちがき」の文体は絵コンテ演出用だったのですね。

 森やすじさんの絵は、毒のまったくないほのぼのとした独特なもので、個人的に大好きなんです。