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道に迷った!---ベネチアの路地は迷路だ
サンマルコ広場に近いホテルにチェックインし,2泊目の夜のことだった。いつものように食事をするために街へ出かけた。初めての街では店の前に出ているメニューを見たりしながらレストランを探して歩くのも楽しみのひとつだが,そのときの気分にあった理想的なレストランはなかなかないのがふつうだ。1日ベネツィアを歩き回ったので,この島のだいたいの地理は頭に入っていた。

なかなか入ってみようと思うレストランがないので,少し足を延ばして大運河のリアルト橋のほうまで行ってみた。それでも適当なレストランはない。仕方なくサンマルコ広場の昨日のレストランにしようということにし,なるべく短いルートでサンマルコ広場まで戻ろうと歩き出した。土地勘はいい方なので,この方向に間違いない。しかし,入り組んだ路地を右へ左へと近道を選んでいるつもりで歩いても,いっこうにサンマルコ広場のにぎわいに近づいている気配はない。星のない暗闇で磁石もなく,そのとき初めて全く方向感覚を失っていることに気づいた。

戻ろうとしたが,似たような狭い路地ばかりで,全くわからない。気がつくと人影もなくなっていて,どうやらとんでもない方角へ踏み込んでしまったらしいと気づいた。物騒な感じがしてきて,不安な気持ちが次第に大きくなってきていた。タクシーでも拾えればいいのだが,ベネツィアには車などない。

後で考えると,たぶんベネツィアの島の北東部あたりをさまよっていたのではないかと思う。歩き回っていると,街灯がぼんやりと明るい路地の家の前で数人の若者たちに出会った。一日の仕事が終わって,これから夜遊びに出かける様子らしかった。早速,わけを説明して道を教えてもらおうとしたが,入り組んだ路地が続いていて,僕らに理解できるように

ベネツィアのサンマルコ広場付近で


説明することなど,とても無理らしい様子だった。彼らのイタリア語を理解することはできなかったが,どうやら途中までついて来たらサンマルコ広場に戻れるという感じだった。

助かった! 若い男女5人のグループの後について行く。途中で彼らは相談し,一人だけが僕らをサンマルコ広場の近くまで案内することにして,ほかの全員はリド島へ先に行っているということにしたらしかった。

この若い男の子のおかげでその後僕らは無事サンマルコ広場へとたどり着いた。彼にとってはリドへの道はかなり遠回りになったはずで,どんなにお礼をしてもしたりない感じがした。しかし,イタリア語は「グラッツィエ」しか知らず,ほかにお礼の言葉は言えなかった。このときほど人の親切のありがたさを感じたことはない。

ベネツィアの夜の道は,くれぐれもご用心。

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