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イタリア。この日はオルビエートの街を出て71号線を北に向かい、ホテルを探して走っていた。丘陵地帯を道はうねうね続き、小さな村を通り過ぎるだけで、いっこうにホテルは見つからない。

やがて、道路脇にイタリアではよく見かけるベッドとナイフ・フォークの表示版があったので、助かったと思いながら、それにしたがって脇道に入った。舗装していない道路を丘陵の奥へと入り込むと、人家もまばらな里山のような風景になった。ホテルなどありそうもなく、引き返そうといったん農家へ続く道に入り、元の道へバックして方向転換をした。その際、ガリッという音と軽い衝撃を感じた。「やったな」ととっさに思った。

Mに車を降りて見てもらうと、道路にあった少し大きめな石の上にマフラーの部分が乗り上げているとのこと。何かに衝突したのではなかったのでひと安心したものの、車が動かない。車から降りて途方にくれていると、少し遠くで農作業をしているおじさんが僕ら
の普通ではない挙動に気づいたようで、こちらを見ていた。駆け寄って車が動かなくなったと身振り手振りで伝えると、そのおじさんはぐるりと回って畑から下りてきた。

近くの農家の小犬が、わんわん吠え出した。農家からおじさんと青年が出てきて、トラブルに気づいた様子で僕らのところにやってきた。小犬もわんわん吠えながらやってきた。これで男が3人になった。かがんで見ただけで全員すぐ事情を理解し、車を押してくれることになった。こうして、2度、3度エンストを繰り返したが、やっと脱出できたのだった。

近くに人がいたからよかった。誰もいないところだったらどうなったろう。イタリアのみなさん、ありがとう。なにかお礼をしたいと思ったが、適当なものは何も持ってなかった。ただ「グラッツェ、グラッツェ」と繰り返すしかなかった。

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