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飛行機が戻ってきた!
まだユーゴスラビアが分裂する前のベオグラードの空港でのことだった。

早朝7時の便に乗ろうと6時頃に空港に着いた。僕らはアドリア海に面したドブロブニクへ行こうとしていた。搭乗手続きをすると,まだ6時発のひとつ前の便に乗れるというので,ゲートへ走った。ゲートには係員が男女二人いて,すでにゲートの扉は閉まっていた。チェックインカウンターから連絡があったのかどうか分からないが,搭乗券をかざして走ってきた僕らを見つけて,二人は言い争いを始めた。

ユーゴの言葉は全く知らない。たぶん,こんな内容だろうと思う。
男「もう締め切ったのだから,間に合わないよ」
女「まだ何とかなるわよ,乗せてあげましょう」
男「無理だよ」
女「私が機長と話すわ」

どことつながっていたのかよく分からなかったが,飛行機または飛行機を牽引する自動車との連絡は無線ではなく,有線の電話で連絡をとるシステムのようで,飛行機はすでに動き出していたがまだ線が伸びてつながっていた。女性係員は連絡を取ると,そ

の電話線をたぐり寄せた。するとその線に引っ張られるようにしてB727がバックしてきた。

飛行機は再びゲートに着いて,あわただしくドアが開き,スチュワーデスに急かされるようにして僕らは乗り込んだ。スチュワーデスはカバンを座席の上の荷物入れに上げるように指示するだけで手伝おうとはしない。共産圏のサービスはこんなもんだと理解した。飛行機はすぐ動き出した。乗客は20人ぐらいしかなく,機内は空いていた。

まだ夜が明けない闇の中を離陸した飛行機はサラエボの上空を飛んで,1時間ほどでドブロブニクの空港へ着いた。やっと夜が明けてきた。予定よりもひとつ前の便に乗れたので,早く着いた。

まだ朝は早かったので,ターミナルの喫茶ルームでコーヒーを飲んで一息入れることにし,目と鼻の先にある誘導路や滑走路をぼんやり眺めていると,そろそろ次の便が到着する時刻になった。しかし,いっこうに到着することはない。僕らをひとつ前の便に乗せたらほかに客はないため,欠航になったのかもしれなかった。またこのような事情があって僕らはひとつ前の便に乗せられたのかもしれなかった。

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