contents

トップページ
ヨーロッパ速度無制限
貿易風に吹かれて
アジアの優雅な日々
トラベルはトラブル
世界はうまい
ホテルいろいろ
やっぱりNY
思い出に残る街
今日も大空へ
旅のアラカルト

旅のおみやげ
スタッテン島へ
マンハッタンの沖合にスタッテン島がある。どんなところだろうと気になって、ニューヨークに滞在していたある日出かけた。地図で見ると、フェリーは自由の女神のそばを通って行くようなので、船に乗る楽しみのほかに、それも近くから見ることができるという楽しみもあった。

タクシーを拾い、「スタッテン島アイランドへのフェリー・ターミナルまで」と変な英語で頼んだが、運転手はきちんと理解してくれた。日本語の「島」は余計で、単に「スタッテン・アイランド」でよかったのだと、恥ずかしい思いだった。

フェリーは大型のボートで客室は広く、混んでいた。「シュー・シャイン、シュー・シャイン」と声を上げながら靴磨きの男が船内を歩き回っていた。後部デッキから左に自由の女神を見て、前方に遠ざかるマンハッタンを眺めていると、ヨーロッパからの移民がマンハッタンに到着したときの映像を逆に巻き戻して見ているような思いがした。

スタッテン島は特に見どころがある様子ではなかった。ぶらぶらと散歩しながら、途中で円をドルに両替しておこうと銀行に入った。若い女性の銀行員は爪を長く伸ばし、ネイルアートで派手に飾り立てていた。彼女の指先に「アメリカ」を見たような気がして、その小さな指先から日本の文化との大きな違いを感じたのだった。

遠ざかるにつれて、マンハッタンは蜃気楼のように見えた。

前ページへ>